晴天の日曜日。西子の墓参りに出かけた。命日である2月1日を過ぎてもなかなか行けなくて、ずっと気にしていた。
墓地に着いてから、線香を買おうと受け付けに向かうと、入口にまん丸に太った猫がいた。白に帽子をかぶったようなキジ柄。手を伸ばすとスリスリしてきた。
受付を出ると、猫は僕を先導して歩いた。時折、僕が付いてきているかを確認するように後ろを振り向いた。
「ありがとう」
お礼を言って別れた。
墓地に到着すると、途中で買った花を手向け、線香をあげ、手を合わせた。
「…ったく遅かったじゃない。あたしにだってご近所の出前ってもんがあるんだからハジかかせるんじゃないわよ」
「ごめん、ごめん。どうにも忙しくて…」
「忙しいのはいいけど、気をつけなさいよ。あんたこの間も胃カメラ飲んだでしょう」
「おっ、さすが。よく知ってるね」
なんだか、西子を思うと勝手に会話が成立してしまう。
西子が逝ったのは東日本大震災があった年の2月1日。もう丸2年が経つ。つい、この間のことのようだ。
僕はこの間、どう変わっただろう。この先、どう変わっていくだろう。
変えることのできない過去を抱え、これからも、西子の墓参に来るんだろうなぁ。
帰りに小銭入れを落としました。中身は300円ほどで、吉野家の割引券と胃薬が入っています。拾われたら、罪悪感なく使われる金額だよなぁ…。厄払いしたと思って、あきらめようっと。