日本では空前のブームで、今や愛玩動物として世界各地で確固たる地位を築いたにゃんこ。しかし、この地位を得るまでには、まさに紆余曲折があったようです。
イエネコの祖先は中東の砂漠地帯に生息するリビアネコだと言われています。しかも「少なくとも5種類の母系から家畜化され、人の移動に伴って世界に広まったとみられる」とのこと。いわば、世界中のにゃんこの先祖を辿れば5匹のお母さんにゃんこのいずれかにたどり着くということになります。
要約すると、リビアの砂漠で獲物となる小動物を追って、人家の近くに住みついたリビアネコ。その姿を見て「かわいい~! うちで飼っちゃおう!」という人が5人いて、その人たちがにゃんこ連れで引越して世界中に広まった……ということのようです(要約しすぎ?)。しかし、世界に広がる過程で、特にアジアでは必ずしも好意的な印象ではなかったようです。
例えば、仏教では歓迎されない動物だったそうで、にゃんこのことを良く書いてある仏典はほとんどなく、それどころか悪いことをするとにゃんこに生まれ変わる、などと記されていることが多いそうです。
さらに、古来、中国では子どもを苦しめる「猫鬼」の存在も恐れられ、子どもの夜泣きはにゃんこの怪異によるものだといわれていたそうです。この「猫鬼」、日本には鎌倉時代に伝えられ「病気」を媒介するといわれていたといいます。「猫鬼」も読み方は「びょうき」。まったく根拠はありませんが、こんなところに語源があるのかも? という気もしました。
仏教で嫌われ者だったにゃんこですが、得意技によって立場が一転します。にゃんこの得意技、「ネズミ捕り」です。
なにしろ、仏教で大事な経典をネズミの被害から守るってくれたのは、他ならぬにゃんこだったのです。
僧侶「今までさんざん悪口言ってごめん! 経文をネズミから守ってください!」
にゃんこ「えーっ! 今更、都合よすぎじゃね? いやだよ!」
僧侶「だからさぁ~、今度、外国、日本ってところに連れていくからさ。いいところらしいよぉ~、日本」
にゃんこ「ホント? じゃあ、がんばっちゃおうかな?」
などというやり取りはなかったと思いますが、こうしてにゃんこは経文と一緒に遣唐使船に乗せられて日本に初上陸します。大事な経文を守って登場したのですから、にゃんこも「日本ではポジティブな印象を先行させるぞー!」と意気込んでいたでしょう。しかし、事態はそう簡単にはいきません。
もともと仏教では、好意的な印象が少なかったにゃんこ。そんなことも影響してか「化け猫」が登場します。なにしろ愛玩動物として双璧の犬には「化け犬」はなく、家畜として長い付き合いのある牛、馬、ヤギなどに「化け」が付くことはありませんから、ある意味とってもスペシャル。
そんな、化け猫の代表が「妖怪・猫又」です。「化け猫」と「猫又」厳密には異なりますが、ゲゲゲの鬼太郎に登場する猫娘に匹敵する知名度を誇っています。猫又は50歳まで生きたにゃんこは、尾が分かれ霊力を身に着けるとのお話しで、もちろん作り話ですが、どうにも印象がよくありません。
こうしたマイナスイメージを払拭して、日本での地位を確立できた要因も、やはりネズミ捕りでした。
蓄えていた穀物や養蚕のための蚕を食べるネズミの駆除をしてくれるにゃんこは、農家にとってめちゃくちゃありがたい存在。ネズミ捕りで、広島東洋カープの鈴木誠也選手を凌ぐ神ってる対応を繰り返したにゃんこは、そのまま神様待遇に。地域によっては、にゃんこを祭った神社もあります。
もちろん日本だけでなく、海外の農家でもにゃんこは大活躍。中世ヨーロッパや中国でも、にゃんこは「稲穂の精霊」とされているといいます。
精霊を超えて日本同様に神様として扱ったのが、古代エジプト。にゃんこを同じネコ科のライオンの変わりとして崇拝し「バステト女神」として神格化します。
しかし、そんな古代エジプト人のにゃんこ好きが裏目にでることもありました。戦争になると敵は盾ににゃんこの絵を描いて対抗したのです。それを見て「絵とはいえ、にゃんこは攻撃できませーん!」と退散するエジプト兵。衰退の原因は、こんなところにあったのかも?
忌み嫌われていたかと思えば、神様にもなるにゃんこ。これほど振れ幅の大きく、かつ、身近な動物はにゃんこ以外にありません。それも、にゃんこの魅力ゆえなのでしょう。
ちなみ、今回の写真は天然の猫じゃらしで遊ぶキジロウとわおん。こいつらを50歳まで生きさせて、猫又になるか確認してやろうと思ったのですが、確認する前に私が世を去ってしまいそうだということに気づきました。残念……。
なお、今回のお話はこちらとこちら、さらにこちらとこちらを参考にしています。
興味のある方または、夏休みでの時間つぶしをした方、ぜひ、ご覧ください。