愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

病院1

2006年02月28日 | 西子
 すさまじい鳴き声も、サカリのせいと考えれば納得できます。それに、地域猫を蝕んでいると噂されている猫エイズにでもかかっていたら大変です。
 早速、近所の動物病院を何件か調べ、そのうちの一軒に避妊手術と検査のため訪れることにしました。
 しかし、連れ出すのが一苦労。当時、住んでいた賃貸のマンションは実はペット禁止。なるべく、静か~に出ていきたかったのですが、そんな事情を西子が知る由もありません。カバンに入れた瞬間、「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」とすさまじい声で鳴き始めました。僕は、西子が鳴き疲れた頃合をみて、パッと外に飛び出して、逃げるように病院に連れて行きました。
 病院に着くまでの間も「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」は続きます。そんな西子をなだめつつ、何とか病院に到着。西子は僕のなだめは一切聞き入れず泣き続けています。訪れたのは当時僕が住んでいた横浜市内にある大きなペットショップの中の動物病院。この辺りは比較的高所得者が多く、連れてくるペットたちはみんな血統書付の犬や猫ばかり。待合室でも、みんなおとなしく、かつ、行儀よくしています。そんな中、雑種の西子は例の「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」を繰り返しています。
 この病院、診療室の一部がガラス張りになって、待合室から診療の様子を見ることができます。僕と西子の前は、若い夫婦が来院。カゴをパカッと開けると、しゃなりしゃなりとロシアンブルーが出てくる様子が見えました。そして、一通り診察が済むと、出てきたときと同じ様子でカゴに収まっています。しかも、この間、一鳴きも発していません。
 「この上品なロシアンブルーの後か…」
 妙なプレッシャーがかかります。呼ばれて診察室に入り、カゴを開けましたが、案の定、西子は出てきません。無理やりずるずるひきづり出して、やっと診察開始。この間も「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」は続きます。そして、獣医さんが、西子の口に指を入れた瞬間でした。
 「あれっ、歯がない」。
 「えっ! それどういうことですか?」
 「ええ、犬歯が下顎の2本しかないんですよ。気づきませんでしたか?」
 「拾ってから、まだ数日しかたっていないので、ぜんぜん気づきませんでした。病気でしょうか?」
 「調べてみないと何ともいえませんが…」
 このとき、歯がない理由は結局わかりませんでしたが、後日、有力な説が浮上することになります。
 というわけで、この日は避妊手術のためそのまま入院。「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」が遠ざかるとき、ちょっとほっとしたような、寂しいような気がしました。
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初日

2006年02月27日 | 西子
さっきまで、地域猫だったのですから、身体をきれいにしなければいけません。
西子が、なにがなんだかよくわからないうちに、とりあえずお風呂。その後、ご飯。
トイレも、事前に用意した猫トイレで済ませているところを見ると、猫おばさんの話にウソはなく、ごく最近まで飼い猫だったことがうかがえます。
しかし、いきなりカバンに詰められて、知らないところに連れてこられたのですから、やはり不安の様子。食べて、飲んで、出して、が一段落すると、部屋の隅で小さくなっています。
「風呂にも入れたし、ご飯も食べるし、ちゃんと猫トイレで用も済ますし、そのうち慣れるだろう」
 そう思って、僕も知らん顔してました。しかし、それも長くは続きませんでした。
 「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」
 なんともすさまじい鳴き声を延々と繰り返すのです。
「まあ、環境に慣れるまでは、鳴くこともあるだろう」
 そう思っていました。しかし、このすさまじい鳴き声は、その後も延々と夜中まで。眠れたもんではありません。
 2日もすると、すっかり馴染んで膝の上に乗ってくるようになったのですが、依然として「にゃおーん、みゃおーん、あおーん」のすさまじい鳴き声は夜中まで。
 「こいつ、駐車場にいたときは一鳴きもしなかったくせに…。もしかして騙された?」
 と思った瞬間、別の考えが浮かびました。
 「もしかしたら、サカリ? 避妊手術してないのかな? 地域猫の時期に、病気になっている可能性もあるしなぁ。年が明けたら早速病院に連れて行こう」
 こうして、西子を病院に連れて行くことにしました。
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出会い

2006年02月26日 | 西子
 一昨年の12月でした。所用で立ち寄った西新宿。途中にある地域猫が溜まり場にしている駐車場。
 この辺りの地域猫たちは警戒心が強く、興味本位や単なる猫好きには近寄ろうとしません。近づくのはご飯をくれる「猫おばさん」(もちろん若い方も男性もいますのでこの呼び方は俗称です)だけ。
 そんな中で、ある日、見慣れない小柄な猫が足元に近づいてきました。茶と黒のシマ模様で、長いシッポがちょっとセクシーです。「えっ!」と驚いて、しゃがみこむと前足を人の膝に乗せ、緩慢な動きで膝に乗っかってきました。そして、ずーっと昔から僕の膝の上にいたかのように、丸くなっていつまでも動こうとしません。
 僕はしばらく足の痺れを我慢しつつ、そのまま背中をなでると「ゴロゴロ…」っと喜んでいる様子。
 しばらくして、抱き上げて膝から降ろしたら、降ろした場所で丸くなっています。
 「じゃあね。もう行くからな」
 こう別れを告げたときの、ちょっと人の顔を見上げた悲しそうな顔が、印象に残ってしまいました。
 数日後、また駐車場へ。どうにも、あの猫のことが忘れられなくなっていました。
 すると、先客に猫おばさんがひとり。僕が気にかけている例の猫を膝に乗せると、猫おばさんがいろいと話をしてくれました。
 「この猫、女の子でね。最近まで飼われていたんだけど、飼い主が亡くなっちゃたんですって…。それでこの駐車場にいるんだけど、ここも再開発で近々整備されるって言うし、この猫たちはどうなっちゃうのかしらね」
 この話を聴いた数日後、東京に大雪が降ります。「この雪の中、あの猫はどうしてるだろう…」なんて考えたら、翌日にはいてもたってもいられません。すでに年末休みに突入していたため、自宅からカバンを持って西新宿の駐車場へ。ついに、連れてきてしまいました。連れてカバンに入れて帰る瞬間、目に入った電柱の住所を示す「西新宿×‐×」の文字。
 「西新宿で拾った女の子だから、名前は西子だ。よろしくな西子、これから仲良くやっていこうね」
 カバンに入れた瞬間は驚いて鳴いていましたが、その後は電車の中でもおとなしく一声も発しません。それが余計に哀愁を誘います。
 しかし、こうした一連の仕草は西子の「猫カブリ」だったことを、家についた瞬間に思い知らされるのでした。
 
コメント (4)
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