作新学院の優勝で幕を閉じた今年の夏の甲子園だが、今年の高校
野球で話題をさらったのが熊本代表の秀岳館。
NHK高校野球解説者だった鍛治舎巧監督が率いていた枚方ヤング
ボーイズのメンバーをごっそり‘移植’して春夏連続出場し共にベス
ト4に入るという快挙を演じた反面、選抜の初戦でサイン盗み疑惑も
あって一部の高校野球ファンを敵に回した形だ。
秀岳館のやり方には賛否両論あるだろうが個人的には現在の熊本の
高校野球事情を考えれば少なくとも必要悪だと考える。
75年まで熊本は大分県代表と甲子園を争う中九州地区を勝ち抜く
必要があったのだが昭和40年代など大分は津久見が春夏優勝1回
づつベスト8が1回、大分商もベスト8春夏3回と全盛で熊本から
夏の甲子園に出場したのは記念大会のみという状況。
それでも75年に九州学院が春の九州大会を制し夏も津久見に勝っ
て甲子園出場を決めると77年に熊本工が2勝してベスト8入りした
のをきっかけに70年代は5勝を上げ、80年代は17勝してベスト4が
2回とベスト8が1回という活躍をし90年代も決勝で奇跡のバック
ホームで敗れたとはいえ熊本工が準優勝する。
ところが00年代に入ると成績は急降下しベスト8も10年に九州
学院の1度のみで他は1勝するのがやっとだし、何よりプレースタ
イルが伝統堅持といえば聞こえはいいが古過ぎるチームが多い。
特に「エースは故障しなければ絶対に交代なし」「基本的にレギュ
ラー9人固定」「対戦相手の研究をする必要はなく、自分達の力を出し
切ればいい」というスタイルで戦う甲子園常連校が県内の有望な選手
を取っているようでは甲子園で勝てるわけがない。
鍛治舎巧も外部から以前‘熊本県の球児は甲子園で勝ちたい者が
県外に流出する'と語っていたように常連校は甲子園出場で満足して
しまう傾向が強いし、甲子園に出場するだけなら先述したようなス
タイルでもいいわけだから熊本県勢が甲子園で勝てないのも当然だ
ろう。
ちなみに今年の秀岳館が甲子園で披露した複数投手制を含め18人
で戦うというスタイルは今時のもので、先述した常連校のスタイル
とは対極のものがある。
今年の秀岳館が上げた6勝のうち花咲徳栄、木更津総合、常葉菊川、
常総学院といった強豪相手の4勝を含めて結果を残しているのを見れ
ば甲子園で勝てる野球をやっているのが分かる。
甲子園で結果を残す事で常連校や県外に流れていた有望な人材が
秀岳館に集まるだろうし、そうすれば関西組の助けを借りずに勝て
るようになるのが理想で常連校も秀岳館の非難をする前に甲子園で
勝てるスタイルにモデルチェンジするべきだろう。
もっとも秀岳館が春は高松商、夏は北海という伝統校の前に苦杯
を舐めたのは‘関西組を移植してそのまま勝てるほど甲子園は甘く
ない'と野球の神様の思し召しではないだろうか。