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2013-02-13 18:04:26 | 「パラダイムシフト」


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 実は、いま私は郵便事業を独占して営む「民間」会社で働いてい

ます。数年前に民営化の是非が国を挙げての政治対立を生んだあの

会社です。もっとも、その議論の中心は金融部門の民営化でありま

したが、分社化された何れの会社も減収減益に苦しんでいます。更

に、ネット社会の発達によって郵便の利用そのものが激減し、その

流れは止まることはないでしょう。しかし一方では、ネット通販な

どの拡大でこんご宅配荷物の増加が予想されますが、それも民間大

手のサービスに引けを取って大きく水をあけられています。多分、

百何十年間も親方日の丸の下で何の心配もなく決められたことだけ

を決められたことしか行おうとしなかった公務員体質は、民営化さ

れたからといってそう簡単に変えられるものでないことは、国鉄や

日航の例を見れば明らかです。つまり、「大きくなり過ぎて改める

ことができない」。だから、末端での是非よりも組織の論理が優先

される。

 働いてみてまず始めに労働組合の影響力の強さに驚きました。私

に仕事を教えてくれる高齢の先輩と、彼は一応組合員ですが正規社

員ではありません、休憩中に休憩室で仕事の打ち合わせをしている

と、組合活動の職場委員を務めるような人物から再三に注意を受け

ました。つまり、休憩時間に休憩室で仕事の話をするなと言うので

す。こっちは出来るだけ早く仕事を覚えようとしていたので寝耳に

水の思いでした。しかし、いくら休憩室といっても職場内に在るわ

けですから仕事を忘れて休憩することなどできません。更に、時間

外勤務にことのほか厳しく、勤務時間の3分前に作業準備のために

端末機の操作をしていると叱られて時間外手当が付けられました。

担当者曰く、機械上に記録が残されるからだと言うのです。「3分で

すよ、3分!」。今や組合は無給労働、いわゆるサービス残業に対し

て神経質なほどに拘り、それは働く者にとってはもちろん有難い事な

のですが、宅配業はサービス業であり、顧客満足を優先すれば製造

業のライン作業のように時間通りに終わらないこともまゝあり、終業

時間に追われて焦って何度か運搬車をぶつけて、始末書を書かされ

ました。ことほど左様に、すべてのことが建前ばかりに縛られていて

融通が利かない事この上なく、そのため、僅かな荷物を届けるため

に多くの配達員が時間調整をしながら屯して、配達を終えた後は退

出時間までを有給不労で待機する。こんな不効率なことをしていては

いくら稼いでも人件費に消えてしまうことは素人でも理解できる。一方

では、月に百時間を越える時間外勤務を強いられて遂にはうつ病か

ら自殺する従業員を生むブラック企業が増加しているというが、それ

とは反対に労働者の権利ばかりが認められる組織の行く末にも明る

い光が射しているいるとは思えない。そもそも、企業は労働者に先行

するのだから、会社が潰れても従業員だけは残るなんてことは起こり

得ない。何れにせよブラックであれレッドであれ、会社の「ため」に働

くか、会社を「ダメ」にして働くかの差は紙一重で、経営者も従業員も

何か肝心なことを忘れてしまったのではないかと思えてならない。本

来は、個人的な或いは社会的な手段であったはずの組織が目的に

すり替わったり、或いは目的そのものを見失ってしまったりしていな

いだろうか。全国展開する会社組織の幹部や従業員たちは建前ば

かりに拘って、人に対する思い遣りを接客マニュアルでしか覚えなか

ったような頓珍漢な応対にも気付かず、主体性を隠した「マック・ジョ

ブ」のような無感情な対応こそがサービス業だと勘違いして「ヤリガイ」

を失い、目の前に居る顧客の顔すら見えなくなってしまっているので

はないだろうか。労働とはすべてサービス業である。




                                   (おわり)