「二元論」
(15)のつづき
ハイデガーは、「存在と時間」の上巻の発刊後に思想転回(ケ―
レ)を余儀なくされて下巻の刊行を断念せざるを得なくなった。し
かし、ソクラテスを師と仰ぐプラトン・アリストテレスによって始
まった〈存在〉を「本質存在」と「事実存在」に二元化して思考す
る形而上学的思考から自然を制作のための単なる材料・質料と見る
存在概念によって構成された人間中心主義(ヒューマニズム)的文化
の限界をよみ取り、〈存在=生成〉という存在概念による自然観を
復権させようという企ては、折しも国民の支持を得た人種主義者ヒ
ットラー率いるナチス・ドイツに加担することによって文化革命を
具現化させようとしたが、間もなくしてナチス・ドイツは敗北のの
ち残虐なホロコースト政策が断罪されて、ハイデガーもまた批判の
矢面に立たされた。これら度重なる挫折を味わったのち、しかし、
〈現存在(人間)が存在を規定する〉という存在概念によって構成さ
れた人間中心主義(ヒューマニズム)的文化が限界に達することを確
信していたが、ハイデガー哲学の第一人者木田元は、「では、この
形而上学の時代、存在忘却の時代に、われわれに何がなしうるのか
。失われた存在を追想しつつ待つことだけ、と後期のハイデガーは
考えていたようである。」(木田元「ハイデガーの思想」)
実は大雨洪水警報の警戒レベル5相当が出ていてこんなことをしている 場合じゃないのですが、かと言っても何もすることがないので(つづく)