この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「デザート・フラワー」-もっとも貧しい国から咲いたスーパー・スター誕生の物語

2011-03-21 20:36:33 | 最近見た映画
   【2011年3月20日】  京都シネマ

 ソマリア出身の少女が、世界にはばたくスーパー・モデルになったおとぎ話のような、現代のシンデレラのような話ではあるが、その背後にあるもっと過酷な現実。アフリカを中心に今も残る悪しき風習に苦しめられてきた経過があった。


 現在アフリカで最も貧しい国といわれているソマリア。最近ではその近海に海賊が出回りスエズ運河を航行する商船を襲ったりして国際問題になったのは記憶に新しい。


 映画はそのソマリアの草原で山羊の赤ちゃんを取り上げるシーンから始まる。山羊を追う遊牧民の背景にはのどかな広い大地が広がり、その地でその後何十年も内線がつづいて、無政府状態になっている国には思えないのんびりした光景が映る。

 内線が激しくなる前に少女=ワリスは親戚を頼りにイギリスに渡り働き口を見つける。場面は昔の回想シーンと現代とが交互に行き交い進む。ある日、仕事場の店で有名な写真家の目にとまり、モデルの道に歩み出すかと思ったが、パスポートの期限切れによる不法滞在・不法移民の疑いで強制送還されそうになる。ボスの計らいや、偽装結婚で難を逃れ、スパー・スターの道を華々しくきったと思っても、消えない過去のつらい体験。


    ○     ○     ○
 

 ずっと以前に見た映画で「母たちの村」(セネガル=フランス映画、ウスマン・センベーヌ監督)というのを思い出す。こちらは、女子割礼=女性性器切除(FGM)に真正面から取り組んだ作品だった。原題が『モーラーデ』といって、それは日本における『駆け込み寺』のような役割をする風習というか掟であり《そこに保護を求めきた者を守る義務があり、また追ってきた周囲の者も手出しができない》というものがあって、それを盾に《女子割礼》の強制から逃れてきたものを匿い、その悪習をやめさせようとする映画だった。最初観たときは、こんなことが世の中では当たり前のこととして通用している国・地域があるんだとびっくりしたものだ。

 その後、今回の映画の主人公・ワニスらの運動によって、法律でFGMを禁止する国が出てきたということだが、実態はまだまだ改善されていないという。

 本当の美しさとは、外見でなく、真摯に生きようとする意欲=《親切、敬意、ユーモア、知性》であるというワリス・ディリー自身の言葉がよくわかる映画だった。

 映画が終わり明かりが点り席を立とうとしたとき、一つ間を開け座っていた若い女性の、何かに打たれたようでいてスクリーンの一点をいつまでも見続けていた凛々しい横顔が印象的だった。




 「デザート・フラワー」公式サイト


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北イタリア個人旅行-フィレ... | トップ | 「君を想って海をゆく」-も... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

最近見た映画」カテゴリの最新記事