【2011年4月3日】 TOHOシネマズ二条
太平洋戦争末期、サイパン島であった実際にあった話をもとにつくられた映画で、その原作者はアメリカ人という。数年前サイパンに観光で訪れた際、現地の観光ガイドから、『万歳クリフ』から日本の民間人が何人も断崖を海にむかって飛び降りて《自決》していったが、ある部隊の一人の将校は連れ添っていた民間人に米軍への《投降》を進め、九死に一生を得た人もいた、という話を耳にしたことがあった。映画はその話である。
似たような話、題材で最近観た-といってももう2年前になるが-映画にクリント・イーストウッド監督の日米双方の観点から描いた2部作「父たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」がある。これもなかなか味のある映画だった。
戦場に『いい者』も『悪者』もない。すべて狂気である。その中でおのれの信念を貫くこと、人間としての感情を失わないことが如何に厳しいものであるかを知らされる。
この映画の最大の魅力は、お互い価値観や信条・世界観も異なる中で、相手の立場を尊重しつつ、安易に妥協せず、迎合せず、自分の信念を貫きつつ、最善の道を探る努力の後を丹念に描いているところである。
どちらが正義でどちらが悪者という関係でなく事実を背後にある感情を含め、味方同士でも意見や感情の違いはあってそれを含め個性もつぶさず、丁寧に描くことによって、観るものの判断に委ねようとする姿勢がいい。平山監督に拍手である。
それにしても、いずれも映画も戦闘シーンの《リアリティーさ》は最近のCG技術もあってすごいものがある。迷彩模様の服を着て街を闊歩している若者やゲーセンで「戦争ゲーム」に熱中している学生に、「この映像を見ても、それでも戦争をしたいですか?」と問いたくなる。
「太平洋の奇跡」-公式サイト