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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「ルポ 貧困大国アメリカ」-日本の近未来を見るような悪夢

2008-03-17 23:54:21 | お薦めの本

                    目次

       


 目次にあるとおり問題は多岐にわたるが、内容は抽象的論議でなく、具体的な内容に沿っての話なのでわかりやすい。 

 まず、第一章の、肥満と貧困がどうして関係あるのかと疑問に思うが、
「貧しい国民ほど安価で手に入るジャンク・フードや加工食品に依存してゆく」からだという。
 以前私も見たが、30日間マクドナルドのメニューだけを食べ続けるというドキュメンタリー映画「スーパーサイズ・ミー」によれば、「その30日で体重12kg、脂肪が10%増加し、内蔵機能が著しく低下した」という。

 第2章では、ハリケーン・カトリーナが襲ったニューオリンズの街を舞台に、国民の安全にかかわり部分が「民営化」され市場経済に支配されたら、どんな恐ろしいことになるのか。また、学校や教育が外見の成果だけに左右される「自由競争」さらされたら、どんな結果を生むか述べられている。

 第3章は、映画「シッコ」の世界の再現である。患者が高い医療費で医療格差を強いられるだけではなく、医者も競争による効率主義に追い立てられ、一方では医療過誤により賠償に備えるために損害賠償保険の負担が異常に高まっているという。儲かるのは保険会社だけだ。
 それに「シッコ」を見てもわかるが、アメリカの保険会社の運用というのはめちゃくちゃだ。
 
 で、第4章では、こうした環境のもとで、若者の将来はどうなっていくのか。学校からはじき出され、まともな職に就けず、カード・ローン地獄にはまりこみ、出口のない泥沼から抜け出せない。
 犯罪に走らざるを得ない環境がそこにはある。

 こうした若者を、すくい上げるのが軍隊である。

 第5章では、アメリカが徴兵制をやめても困らない内情が明らかにされる。戦争で儲ける人たちがいて、戦場に出て生活を「維持」しようとする人がいる。それを究極まで推し進めたのが戦争の「民営化」だ。軍隊なら保障費も嵩むが、民間の社員、ましてや派遣社員なら法律の縛りもないし、戦死者にも上がってこないし、第一安上がりだ。


 今、日本の政府はアメリカのような、こういう仕組みを作ることを目指している。

   ○   ○   ○

 話は変わるが、4月1日から実施されようとしている「後期高齢者医療制度」はむちゃくちゃな制度である。皆保険制度というのは、そもそも様々なリスクを背負っている者が、等しく制度の恩恵に授かれるようにすることなのに、お金が掛かるからといって、一番医療を必要としている世代を切り離して別制度にするなんて、いろいろ厚労省の役人が言い訳しても、やろうとしていることは見えている。

 今までたいした病気にもかからず、それでも保険料を払い続けているのは、いざという時に保険に保護してもらうためだ。

 政府も資料で示しているとおり、後期高齢者は「複数の疾患への罹患が認められ」しかも「治療は長期化する」と。だから、治療費も当然かさむことになるが、それを切り離して保険として独立させるとどういうことになるか、誰でもわかることだ。

 保険というからには、採算ということを考慮するワケなのだから、満足な医療を提供しようと思えば保険料を上げるしかない。

 別のところで政府は医療費を削減したいと、はばからず公言しているのだから、多くの人たち-金を持たらざる人々は、医療を受けるなというこになる。

 よくもまあ、「きめ細かい適性に応じた医療を提供していくためだ。」などと答弁できるものだ。そんなことはその気さえあれば、今の保険制度の枠内で出来ることだ。

 
 医療を(介護も教育もそうだ!)コストや効率ではかるのは間違いだ。アメリカのような、様々な用途に合わせたぶつ切りの個別契約の保険でなく、公平な税金でまかなうべきだ。

 国民健康保険料を集めるときは、保険料を税金ですと宣伝しているのに、実行しようとしている内容は一営利企業と同じことをしようとしている。

 長生きを邪魔者扱いにする国に明るい将来はない。


  ○   ○   ○

 当面の自分の利益に影響を与えない事柄には無関心でいられる、という風潮は自分も社会をも後退させる。


                        

               「岩波書店・ルポ貧困大国アメリカ」-サイト



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