この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「息もできない」-息もつけない緊張の連続

2010-05-23 20:29:06 | 最近見た映画
  【2010年5月15日」 京都シネマ

 今、韓国の映画を作るエネルギーにはすごいものを感じる。『冬ソナ』あたりから始まった、いわゆる『韓流』は「自分の趣味ではない。」と言いきっていたが、無視できないというか、韓国映画抜きでは映画を語れない状況がある。(それでも個人的には、歴史物や韓流のラブロマンスにはまだ近づきたくない気がするのだが。自分が観るのは、「おばあちゃんの家」や「西便制」などのどちらかというと地味な部類のものである。)

 そういう底知れないエネルギーが、今回の映画をっつくったヤン・イクチュンのような才能を生んだと思える。

 
 さて今回の「息もつけない」であるが、「血と骨」を観たときと同じように、見終わったらぐったり疲れてしまったが、多くの暴力シーンにもかかわらず、後味は悪くなく、説得力があり、こちらの方がずっと良かった。

 予告編で見たときの印象は、「猟奇的な彼女」の様な、軽いタッチの痛快ストーリーかと思っていたが、とんでもなかった。



 話は、のっけから暴力シーンと悪罵の応酬である。全編にわたって繰り返し出てくる『シーバロマ』(『このくそ野郎』くらいの意味?)という言葉を覚えてしまうくらいである。


 時代背景はいつ頃なのだろうか。大学の改革運動を暴力団を雇い力で押しつぶそうというのは学生時代に経験している。しかし、公衆の面前で屋台までも乱暴にたたき壊すというのは、自分の経験の記憶の中にはない。暴力的な借金の取り立ては、日本でも古い話ではない。

 そんな暴力団のような取り立て屋の仕事をするサンフン(ヤン・イクチュン)。

 一方、高校生のヨニ(キム・コッピ)は、家に認知症(痴呆)が進んで、妄想にとらわれ手が離せない父親と、いつも金をせびる弟がいる。毎日の家事と手のつけられない父親の世話に追われ、学校どころではない。


  

 最も底辺の社会を生きるふたりが、ひょんなことから出会う。


                                 


 暴力一辺倒だと思っていたサンフンにも優しい一面があった。
実は、彼にもつらい経験があった。『無知の涙』の永山則夫を連想する。





 「愛を知らない男と、
  愛を夢見た女子高生。
  傷ついた二つの魂の邂逅]

 今回はこのキャッチコピーを信じて、ストーリーは実際に映画を見てもらった方が良いだろう。

 息もつけない展開である。

 それにしてもどの俳優も自然で素晴らしかった。

                                   
    
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「教えてくれよ、女子高生。どう生きりゃいい?」


 現在の韓国の抱える矛盾と現実を正面に据えた、ともかく、すごい映画を作ったものである。安っぽい宣伝文句の引き写しではないが、『正真正銘の最高傑作!』という言葉に同感できる。


 『東京タワー』のリリー・フランキーが、第一作に自分の全てをさらけ出し、精魂全てを使い果たし、二度とあのような感動作を作り得ないのではないかと感じるように、ヤン・イクチュンもこの作品に全力であたり、自分の全てをはき出したような気がする。それだけ、素晴らしい感動作だと思う。
 
 今後の彼に注目するが、違う題材でふたたび感動作を世に送り出したら、チャップリンやイーストウッドのような、正真正銘の大監督・大製作者の誕生である。



「息もできない」-公式サイト



   
 

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