【2013年9月23日】
【第3日目】
4:50起床-5:00朝食-6:10五郎小舎出発-8:14黒部乗越(分岐点)着
-9:05三俣蓮華岳着-9:43三俣峠着-10:40三俣山荘着-11:00同出発
-13:00鷲羽岳着-13:30鷲羽出発-(13:34オコジョ現れる!)-
15:20ワリモ北分岐点着-16:25水晶小屋着-20:00就寝
山行も3日目となってくると疲れもたまってくる。昨日の『黒部五郎』からの下りが膝にきている。2階の自分らの寝床に上がり折りする階段の急傾斜がきつい。
昨晩は早めに寝たつもりだが、やはり起きるのに《決断》がいる。4時50分に起床し、何もせずにすぐ朝食にかかる。運良く1巡目の朝食の席が2つ空いていて、滑り込んだのだ。これを逃していたら、出発が30分以上後にずれ込むことになるのだ。
【 黒部五郎小舎の朝食 】
朝の用事-《トイレ》に《歯磨き》、《着替とパッキング》-をすませ、玄関に降りる。小屋の前からは黒部五郎岳の全容は見えない。裏手に回ると笠ヶ岳とその尾根の末端が朝日の影になって荒々しく見える。ここから見る笠ヶ岳は頂上がツンと聳え、穂高から見る様子とまったく違う。
6時10分出発-今日は優秀な方だ。まず目指すは、『三俣蓮華岳』。木立の中をすすむと、早々の登りである。木々の間から『黒部五郎』のカールが徐々にその姿を現してくる。
『黒部五郎岳』は独特の山容をしているので一度見たらその姿は忘れない。17年前の焼き付いた印象が、そうと思われず2,3年前のことのように、まったく同じように美しい姿でそこにいる。
高度を上げていく。振り向けば、『黒部五郎小舎』の赤い屋根が見える。刻々と変わる形を写真で追うから登りも気にならない。
一つの尾根を越えて、森林限界に出ると、手前の深い谷を挟んで『三俣蓮華岳』から『丸山』を経て『双六岳』に至る尾根が正面に横たわっている。縦走路は左手を大きく回って『三俣蓮華岳』に向かっている。快晴の空に雄大な山容が映える。緩やかな登り進むと、三俣蓮華岳の手前で一旦下り、暗部の『黒部乗越』に8時15分到着。
【祖父岳の向こうに水晶・ワリモ・鷲羽岳】
【黒部乗越からの祖父岳】
ここから蓮華岳の頂上を通らず、裾を巻いて『三俣山荘』に直行する道があるが、せっかくだから『三俣蓮華岳』の頂上を目指す。
進行方向左手には、黒部源流をはさんで『祖父岳』がそのずんぐりとした山容で鎮座しており、その向こうに、これから午後に訪れる『鷲羽岳』から『ワリモ岳』を通り『水晶岳』までに稜線が連なっている。
巻き道を下に見ながら、大きな岩と草付きの斜面をジグザクに登っていく。
昨日の晩、私らより遅く小屋に到着した若いカップルが、新穂高から鏡平を経て双六を通り、一気に『黒部五郎小舎』まで来たと話していたが、その話の中で、「三俣蓮華岳の頂上まで踏ませるのは酷だ」と言っていたのを思い出した。なるほど地図を見れば、双六から丸山を経て黒部五郎に行くには三俣蓮華の頂上を通るのが最も近い。自分らの足だと、新穂高温泉からだと双六あたりで泊まるのが普通と思われるが、若い彼らにとっても夕闇迫る時刻に三俣の頂上を通過されられるのは酷だったに違いない。
【 三俣蓮華岳への登りから黒部五郎岳を振り返る】
後に見る『黒部五郎』があんなにも小さくなった。右に『笠ヶ岳』、左に『祖父岳』と『水晶岳』を見ながら頂上まで最後の登りである。
午前9時5分、『三俣蓮華岳』山頂に到着。快晴の『三俣蓮華岳』頂上からの眺めも素晴らしかった。最近の山行でこれだけすっきり晴れ渡った景色を見るのも久しぶりである。昨年の『穂高』もその前年の南アの『北岳・塩見岳』もその前の『裏銀座』も雨にたたられ、満足いく景色が眺められたのは極一部だけだった。
今回は、《山の景色の見放題》で、3年分の《貸し》を全て返してもらった感じである。
【 三俣蓮華岳頂上標識 】
遠くに、昨日登った『黒部五郎岳』が改めてその存在感を示している。視界を左に移せば、『丸山』(三俣蓮華岳より標高が高い!)の向こうに均整のとれた『笠ヶ岳』が顔を覗かす。
【 三俣蓮華岳から丸山と笠ヶ岳(右奥)】
【 三俣蓮華岳からの笠ヶ岳(望遠)】
ここから見る『笠ヶ岳』は特にきれいだ。『槍ヶ岳』では?と見間違える均整のとれた峻峰が空を突いている。視界をさらに移せば『双六岳』のどこが頂上か分からないゆったりとした山容が流れ、その向こうに『穂高連峰』のガスに巻かれた影が見え隠れする。手前の双六の稜線は、『樅沢岳』から『槍の西釜尾根』につながり、ガスの中に消えていく。
【 穂高連峰の峰々】
残念だが、『槍』はガスの中に隠れ、見ることができない。
【ガスが晴れれば見えていただろう『槍と北釜尾根』】
(これは鷲羽から見た『槍ヶ岳』)
しばらく、山の景色に見とれた後、山頂を後にする。山頂からの下りは、ゴツゴツとした岩だらけの急斜面である。急斜面を下りると『双六岳』方面』からの縦走路の合流点である『三俣峠』に9時半すぎに着き、そのまま左に折れてほぼ水平な道を『三俣山荘』に向かう。
『三俣山荘』、10時35分着。小屋の前のハイ松の上には布団が広げられ、寝具がひなたぼっこをしている。貴重な天然資源である。
【 三俣山荘のメニュー 】
昼には少し早い時間だが、朝も早かったのと、この先『水晶』まで小屋もないので、ここで昼食タイムとする。昼の山小屋はがらんとしている。厨房の奥にいるスタッフに声をかけ、私はビールとラーメンを注文する。Yさんはカレーライス。
【三俣山荘で働くアルバイト-翌日、まさか『雲ノ平』で再会するなんて!】
11時に小屋を出発し、いよいよ『鷲羽岳』である。アップダウンのない、ひたすらまっすぐ頂上目指す《登り》だけが待っている。今日最大の関門である。
【小屋近くから見る『鷲羽岳』への登り】
その登りの感じは《富士登山》に似ている。起伏がなく長大な傾斜が続いているだけだから、常に周囲が見渡せ、その景色は、エレベーターに乗って外を見る時のような高度の変化を感じる。見下ろす角度が徐々に変わり、高度を上げるにつれて遠くの景色が徐々に視界に入ってくる。
【鷲羽岳の登りから蓮華岳と三俣山荘を振り返る】
【 さらに高度を上げて頂上近くから振り返る】
『三俣山荘』の赤い屋根がだんだん小さくなる。その分『三俣蓮華岳』からの斜面が視界に大きく広がる。
頂上近くになると大きな岩が目立つようになってきた。周囲の視界も岩陰に遮られる。それまで《転落》するような場所は見あたらなかったが、この付近に来て初めて《岩山》の雰囲気が出てきた。
頂上に人が見える。長い登りもそろそろ終着駅だ。
【鷲羽岳頂上直下から薬師方面を見る】
先ほどまでずっと雲の中だった『槍の穂』が姿を現しそうだ。登りの途中、何度も立ち止まり、シャッターチャンスを窺っていたが、意地の悪い雲がそのたびに邪魔をしていた。
『鷲羽岳』頂上直下、ほんの一瞬現れたところをねらう。
【姿を見せた槍ヶ岳】
ようやく《槍の勇姿》がカメラに収められ、気持ちも納得して頂上に向かう。13:00、『鷲羽岳』頂上に到着。この時間に鷲羽の頂上に着いたのなら、『水晶岳』の往復を今日に回せるかもしれないと淡い期待を抱く。それができたら、明日以降の日程が楽になる。
【 百名山『鷲羽岳』頂上標識】
しかし、ここも360度パノラマの絶景だ。景色を楽しまない手はない。
進行方向にはこれから越えていく『ワリモ岳』と『水晶岳』に至る縦走路が続く。東方向には眼下に『鷲羽池』が青い水面を鈍く光らせ、その向こうに『硫黄岳』の荒々しい尾根が這い、さらにその向こうに『槍の北釜尾根』が横たわる。西には『祖父岳』が手前にどっかりと控え、その向こうに昨日歩いた『黒部五郎』から『北俣岳』、『太郎平』に至稜線が続き、その右の正面に『薬師岳』が大きく構えている。『黒部五郎岳』からとも『三俣蓮華岳』からとも微妙に違った山々が見渡せ、飽きることはない。
【鷲羽岳頂上よりワリモ岳(奥左)、水晶岳を望む】
【鷲羽岳頂上からの鷲羽池と槍方面】
いつまでもそこにいるわけにもいかず、カメラを収めザックを背負い出発しようと10mほど歩んだ時である。目の前に岩陰から出てきた小動物が横切る。Yさんがカメラを構える。私はビデオカメラを取り出す。よく見ると『オコジョ』だ。雷鳥は今回も含め、何度となく目にしているが、『オコジョ』には初めて遭遇する。オコジョはその場から逃げようとしない。《人を恐れていない》ばかりか《人間をからかっている》ように見える。こちらの穴から出てきたと思ったら向こうの岩陰に隠れ、また別の岩陰から出てきて、何度も僕らの目の前を横切る。その身のこなしのの早いこと。ファインダーでその後を追っていると、その早さについて行けず視界から消え、見失う。そんなことを5分も繰り返していただろうか。すっかり『オコジョ』に遊ばれてしまった。
【目の前に「オコジョ」が現れる】
『ワリモ岳』の登りは最後の難関である。遠くからその急斜面を見ていたときは《どこに道がついているのだろうか》、《いったい上れるのだろうか》と思ったが、近くに行ってみれば、どうということはなかった。
【『ワリモ岳』の登りから『祖父岳』と遠くに『雲ノ平山荘』が】
尖ったピークに発てば、また新たな視界が広がった。『水晶岳』がぐっと近づき、その右方向には『裏銀座』の縦走路がはっきり見える。
【『ワリモ岳』より『水晶岳』と裏銀座方面を望む】
【『ワリモ岳』より『鷲羽岳』を振り返り見る】
『祖父岳』を左に分ける、荒涼とした『ワリモ北分岐』に15:20到着。『ワリモ岳』を越えてしまえば、後は『水晶小屋』の手前まで平坦な道が続く。しかし、ここまで時間を食ってしまった。多少それまでより、足の運びが早くなったが、やはり今日の『水晶岳』往復は無理かと思う。
【『ワリモ岳』とその向こうに『鷲羽岳』】
小屋はもうすぐのはずなのに意外に遠い。登りの傾斜が少しきつくなり、速度が鈍る。小屋はあの岩陰だと思って近づいていくと、また違う。『水晶岳』に至る尾根道と同じ高さくらいになって、ようやく小屋で使うの発動機の音が聞こえてきた。着いたみたいだ。安心感から周囲の景色を見回す。
ここからの眺めも格別だ。
【「水晶小屋」近くから、裏銀座縦走路-中央は南真砂岳】
【遠くに『大天井岳』と『常念岳』-手前に槍北釜尾根の『独標』】
最後の砂地の斜面を回り込むとそこに『水晶小屋』あった。16:25、着。
【水晶小屋と『水晶岳』(左奥)】
『2013年秋の山行』【第3日目】-黒部五郎小舎から三俣蓮華岳・鷲羽岳をへて水晶小屋まで