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『信用金庫の力』(吉原穀著-岩波ブックレット)-脱原発宣言をした信用金庫理事長の理念

2012-10-14 21:19:54 | 最近読んだ本・感想
                        【 信用金庫の力 】 吉原 毅 著 『岩波ブックレット』 2012年9月刊

 著者は『城南信用金庫』の理事長で、以前から金融機関の《理事長らしからぬ》発言に注目していたが、『脱原発宣言』までする理事長とはいったいどんな人物か興味を持っていた。しかし、まとまった文章を読んだのは初めてである。

 こんな《変わった》理事長がいるとその存在を意識し始めのは、いつ頃からだったろうか。やはり、『東日本大震災』の後からか。『やるなー』と思った最初の出来事は、【『城南信用金庫』の電力会社の契約を『東電』から他の『原発に頼らないPPS(特定規模電気事業者)』に切り替える】というニュースに接した時だったと思う。その時は、ずいぶん思い切ったことをするなと感じたが、中途半端な考えではないことが、この本で分かった。

 それ以前にも『節電プレミアム預金』とか『節電プレミアムローン』等の《節電金融商品》を売り出したり、職場内部で節電運動に積極的に取り組んだりしたそうであるが、東京の一企業の出来事が関西に伝わるわけもなく、知らなかったが、『脱原発宣言』の具体化であるこの取り組みはインパクトがあった。


 そもそも、一信用金庫の理事長が、どうしてこのような『革新的』な考えになるに至ったかであるが、就職した先が『信用金庫』という《銀行とは違う》金融機関であったことと、その時の『城南信用金庫』の会長であった『小原鐵五郎』という人物が気骨ある人物であり、その人の影響をうけたことが自身の言葉で語られている。

 私自身もこれまでそう思っていたが、『信用金庫は、・・・銀行より小さい金融機関だと考えている・・』という認識であったが、著者は『小原鐵学』を学ぶ中で、『信用金庫は・・・株式会社に対抗してできた、理想を高く掲げた協同組織運動の金融部門であり、「お金の弊害」を是正するために生まれた社会貢献企業だった』(P-5)ことを知るに至る。

 そのような刺激の中で、問題意識を持ち、『アメリカのグロバリぜーション戦略』が如何なるものか悟り、『市場のカジノ化と金融の国際化』が世の中にどのような害悪をもたらすかを認識し、『グローバリゼーションと格差』の関連を把握し、『加速するデフレ』、『暴走するお金』がいかに庶民を貧困に追い込むのかを、【お金を扱う事業者としてよそ事の問題ではあり得ない】という強い信念の元に、真摯に考えを深めていく。

 2010年11月に理事長に就任してからの実行力、行動力がすごい。翌2011年の3月に『東日本大震災』が起きるが、信用金庫の長として何ができるか真剣に考え、実行に移していく。

 1995年の『阪神・淡路大震災』と時も、『城南信用金庫』独自に神戸市などに1億円の寄付をしたそうだが、『東日本大震災』では、経費を節減し、それを遙かに上回る3億円の寄付を拠出し、また1億4000万を超える募金を集めたという。
 また、『津波で大きな被害に遭った信用金庫に入社予定だった「内定を取り消された新入社員」を『城南信用金庫』が代わりに全員採用する』ということまでしている。

 その上での、最初に述べた『脱原発宣言』である。どこかの誰かのように《選挙目当ての》無責任な発言とは重みが違う。


 今年は、国連の『国際協同組合年』だそうである。農協や生協なども同じ仲間だそうである。この本で知ったことも多いが、このような人がいるというのも、大きな励ましになる。

 この元気をもらわなくてはいけない。

 

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