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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『日本人は人を殺しに行くのか-戦場からの集団的自衛権入門』-その3

2015-08-19 22:31:18 | お薦めの本


  【 2015年8月16日 】 記

 この本を読んだ直後、内容に圧倒されて、すぐにでも読後感を書かねばと思っていたが、次から次へ課題が新たにでてきて後に後にとなってしまう。

 順次、重要箇所をピックアップして解説しようと思ったが、これもあれもといくらでも引用したい箇所があって、切りがない。こんなことをしていたら本の大半を抜き書きしないとおわらなくなってしまいそうだ。

 方針を変えよう。この本の読み解くのではなく、読んで新た知見で、〝なるほど”と思ったことや、“そうだったのか!”とあらためて確認しておきたい点だけを挙げてみようと思う。

 その前に基本事項の確認。

 1.【個別的自衛権】と【集団的自衛権】の違い。

  【個別的自衛権】が、自分の国が直接、暴力的に襲われた際に、自分を守るために行う《正当防衛》みたいなものに対し、
  【集団的自衛権】は《同盟国》が襲われた場合、共同して武力で反撃するというもので、権利としてはあるかもしれないが、
  日本では『憲法第9条』で明確に禁止されている。


 2.【集団的自衛権】と【集団的安全保障】が全く別の概念であるということ。


  【集団的安全保障】は『国連』に関わる範疇であり、NATOや国連軍に加盟していない(できない)自衛隊が出る幕
   ではないこと。



   分かりや例として、【イラク戦争】での《でたらめぶり》とあわせ、次の例が挙げられている

  【アフガニスタン戦争時のインド洋での給油活動
   「自衛隊の給油活動は、NATOによる『集団的自衛権』を根拠とした軍事作戦の下部作戦だった。」のに、
   「後方支援》という言い訳をして、加盟もしていないNATOの『集団的自衛権』の行使に参加した。」(P-59)
   しかもそれは、
   「・・日本に急迫不正の侵害の脅威がない・・」にもかかわらずだ。(同)

   その後の『アフガニスタン戦争』は出口の見えない戦いが続き、『アルカイダ』や『タリバン』などのテロリストを生み出す温床となっていて、アメリカも実際のところ手を焼いているのが現状だが、日本はこれに積極的にかかわろうとしている
   

   安倍首相は、その他にも【集団的自衛権】の必要な根拠として『15の事例』を挙げているが、意図的にか無理解からか、
  【集団的安全保障】の範疇に入る事例や【個別的自衛権】ですむ事例を混ぜ込んでいる。
  

                         



 そういった基礎知識を踏まえたうえで、改めてびっくりしたことや、新たな知見や啓発された内容を列挙すると、

 まず、この著者のしてきた仕事を知って、まず驚いた。日本で現地に入り、『国連平和維持軍』や『NATO』も手におえない、『タリバン』と争った後の主導権をめぐり内戦中の『軍閥』を相手に、実際にアフガニスタンで【武装解除】を行なった人物がいただなんて、想像もしていなかった。

  『武装解除が終わった後、ノルウェイにも、ドイツにも、「あの武装解除は、地上部隊を出していなかった日本にしかできない役割だった。」』と言わしめたものだ。(P-130)
  また、イラクで自衛隊が、銃撃戦を1度も銃撃戦を経験することなしに“任務を終了”したことについても、
  『・・地元のイスラム教指導者が、「自衛隊を攻撃することは反イスラムである」というお触れをだしたから。』と書いている。(P-131)

  『今回の集団的自衛権の容認を契機に、このイメージがリセットされてしまったら?・・・』っと筆者は危惧するが、ISに殺害された後藤さんの事件を見ても、すでにそのイメージが変わりかけているような気もするのだが。


 もう少しだけ、挙げておこう。

  『軍法を持たない軍が海外に派遣されるというのは大変な問題です。

 《軍法会議》というと、全く民主的手続きを経ないで行われる《非人道的な》裁判というイメージを持っていたが、そうでもないらしい。

  『軍事作戦では、かならず民間人を巻き込む過失が起こります。
  『自衛隊法には、自衛隊が海外で犯した過失を裁く規程すらありません。・・・日本の刑法には
   国外犯規定というものがあり、日本人が海外で犯す業務上過失致死傷を裁けないのです。

  『日本では、この大事な論議がされないまま、自衛隊が海外に派遣され続けてきたのです。

 軍法を持たない軍隊が、イラクでどんな乱暴なことをして、そのことでごうごうの非難を浴びた例として、「ブラックウォーター事件」のことが紹介されている。それはアメリカの『民間軍事会社』の傭兵が、住民に銃を乱射して、イラク市民を死亡させたという事件で、

  『イラク国内における民間の軍事会社は、イラク国内法から訴追されないばかりか、アメリカの
   軍法でも裁けない-つまり、アメリカの民間軍事会社はイラクで何をやっても法に問われない立場

 にあったということだ。

  ちなみに、『貧困大国アメリカ』に書かれていたことだが、民間軍事会社の傭兵は、《正規の兵士》でもないので、イラク(その他の国においても)、戦死者の統計の数には入れられない、ということだった。(戦死者の数が過小評価さえている。

 こんな状況で

  『慣れない若い隊員が、迫り来る(民兵が混じっている)群衆を前に恐怖でパニックを起こし、銃を乱射してしまう

 という事態は、当然起こりうる。そうなったとき、上の様な問題をどう処理するのだろうか?

 また、自衛隊がイラクの「サマワ」に派遣されたとき、《戦死者》は確かに出なかったが、任務を終えて日本に戻った隊員に《自殺者》が多数出たという。《比較的安全》と言われた「サマワ」でこれである。

 実際の《戦場》では、前線も後方支援もなく、攻撃の対象になる。戦いを継続する上で、《補給》を確保するというのは重要である。かつて、日本軍の戦死者で、実際に戦闘で亡くなった人より《餓死者》の方が圧倒的に多かったことからも充分わかることだし、そのその補給なしでは《玉》もなくなる。




         
                           
                                                                                     



 「アメリカはグローバル経済の旗手で、(その)財産は世界中に散らばっていて、アメリカが守るべき〝本土”とは、世界経済そのものなのです。その覇権維持のための海外拠点として最大の・・・在日米軍基地の運用で主権さえ放棄してくれる日本は・・「集団的自衛権」の同盟国ではなく・・・アメリカ自身の「個別的自衛権」の道具の1つでしかない。」(P-120)

 そして、そのアメリカは《日本を積極的に守ってやろう》などという気は毛頭ない。そんなアメリカに《媚を売って》、安倍首相は何をやろうと考えているのだろうか。

 著者は、実際に戦場へ行って修羅場を何度もくぐっているから、1つ1つの発言に説得力がある。もっともっと紹介したい記事があるが、直接この本を読んでもらった方が、ずっとわかりやすい気もする。

 筆者の『武装解除』という、次の本を読みかけたので、この辺で切り上げるとしよう。



    『日本人は人を殺しに行くのか-戦場からの集団的自衛権入門』-その2 へ

    『日本人は人を殺しに行くのか-戦場からの集団的自衛権入門』-その1 へ




 

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