この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『あん』ーどら焼き屋の永瀬正敏に「あん」づくりを指南する樹木希林の存在感-ハンセン病とは何だったのか

2015-10-25 23:43:07 | 最近見た映画


   【 2015年10月25日 】   京都シネマ

 過去に何回も見る機会があったのだが、つい見逃してしまっていた。

 どうしてかと振り返ると、どうも『あん』というタイトルに《あてられていた》のかもしれない。『羊羹』にも『みつまめ』にも『大福』にも、もちろん『どら焼き』にも全く縁もゆかりも興味もない《食生活》をしてきたから、映画の初めの方で、樹木希林演じる「徳江さん」が、永瀬こと「千太郎」のつくる『どら焼き』を評し、〝「〝かわ"はまずまずとして〝あん゛の方はもう一つね。」というセリフに実感が持てないし、どの〝あん"も《甘いだけ》で《美味しい》も《まずい》もないだろうと思うから、徳江さんに食べてみて」と渡された『あん』を、「おいしい!」という千太郎の言葉も理解不能だった。

                                        

 映画の終りの方で、実は千太郎も《甘党》ではなく、れっきとした《左党》というから、本当に美味しいあんに出会ったらそう言えるのかもしれないが、それを試してみようという積極性は生じないし、機会も持たない。

 で、映画は、甘い話ではなく、「ハンセン病」が絡んだ人間ドラマである。

 「どら焼き屋」に採用された徳江の作る『あん』で、たちまちこの「美味しいどら焼き」が話題となり店は繁盛する。

 『あん』ごときで《そんな》と思うが、映画の中で『あん』を作る過程を見ていると、最近ネットなどで話題になる《職人魂》というか「美味しいもの」にこだわり手間と時間をかけ【1日限定何個しか販売しません】という商品に行列ができる、そんな現象を思い浮かべる。

              
                     


 ここで話が終われば、単なる成功話だがそうではない。徳江さんは「ハンセン病」患者だったのである。その《うわさ》が広まると客の足が急に遠のく。
 『世間は怖い』のである。


          ○            ○           ○


 『ハンセン病』が絡んだ過去の映画に『砂の器』があった。松本清張原作小説を、野村芳太郎が監督したもので、「ライ病」の父親(加藤嘉)と全国を放浪した子供(加藤剛)がその後、有名な音楽家なり世の中に大きく羽ばたこうとしていた時、自分の過去が明らかになることを恐れ、罪を犯してしまう、悲しい映画だ。

 『愛する』-こちらは熊井啓監督の映画で、原作は遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』。家に当時の大判のポスターが今でも張ってあるが、酒井美紀と渡辺篤郎の二人が演じる初々しさが印象に残っている。

 最も最近に見た映画で『ふたたび』が、ハンセン病を扱った映画の中で、前向きで一番印象に残っている。長い間、隔離生活を強いられていた元トランぺッターが孫と元メンバーとの再会のための旅に出る話だ。主題歌の「ジャズ」の流れるようなメロディーがいい。


 病気の原因も治療の方法も解ってきたにもかかわらず、明治40年(1908年)に制定された強制隔離政策が、日本では世界的な動向と逆行するかのように、平成8年(1996年)にようやく廃止された-それを知ったとき、どうしてこんな前近代的な法律が、このごく最近まで放置されてきたのかと驚いたものだ。



         ○            ○           ○


 それにしても、ドリアン助川という人、映画『じんじん』も、そこに出てくる絵本『クロッコダイルとイルカ』もよかった。名前の印象からくるイメージとは違って、あたたかい話を書く人だなあ。






   『あん』-公式サイト

   映画『砂の器』-に関するサイト

   映画『愛する』-に関するサイト(Wikipedia)

   映画『ふたたび』-に関するサイト





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