この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

「隠し剣・鬼の爪」

2007-02-25 11:36:05 | 最近見た映画
2007年2月23日「金曜ロードショー」

 幕末の東北、海坂藩という設定は3部作とも同じで、主人公の侍は下級武士で現代風にいえば平の公務員といったところか。とはいっても、下僕・使用人を使っているからやはり今のサラリーマンとはちょっと事情が違う。

 今回の主人公・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、以前、女中として使っていた「きえ(松たか子)が嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、その家に乗り込み、やつれ果てたきえを背負い連れ帰る。その頃、藩に大事件が起きた。かつて、宗蔵と同じ剣の師範に学んだ狭間弥市郎が、謀反を起こしたのだ。宗蔵は、山奥の牢から逃亡した弥市郎を切るように命じられる…」(goo映画より)。

 主人公の周りに不幸を背負った女性がおり、その女性に心を寄せるとともに背後事件が起こり、謀反人を討つように藩から命令されるという筋は共通である。

 「藩命には背けない」という封建社会での主従関係での桎梏と個人の良心の間で悩む宗蔵の姿は、現代ではどう映るのだろうか。

 権力を握るものが、もっと手っ取り早い方法をとるのかと思うと、意外とそうでないのに拍子抜けする場面がある。
 前作でもそうだが、謀反人を討つのに、どうして1対1の手合いで討たなければならないのか、いっそ鉄砲があるならそれでかたずけるとか、一軒家に立て籠もっているなら、家に火を放てば話は簡単ではないかと思ったりする。あるいは、討っても謀反人も一網打尽とか。
 
 また、極悪家老にモノを申して怒りを買えば、即刻その場で処分をもらったり、その場で切り捨てられてもおかしくないと思ったりするのだが、これは現代の容赦ない過酷な現実からくる、貧しい想像力の産物かとも思ったりする。
 武士の世界にはそれなりの価値観、独自の美学があったのかなと思ったり。


 主従関係でおもしろいのは、いやがるきえを里に帰すとき、「それは御主人様の命令ですかと?」と問い、そうだと聞きそれにきっぱりと従ったのが、今度は最後の場面で、「一緒になってくれ。」と焦がれるのに対し、同じ質問で返すのがある。もちろん後者は、武士の身分を捨てもはや身分の違いなど問題にしない宗蔵に対しては、きえあるいは山田洋次のユーモアである。

 いい映画である。この映画と併せて思い起こすのは、3部作のほか「蝉しぐれ」で、自分の中ではそれをあわせ4部作と感じている。(もちろん監督は別だが。)今回見るまで、記憶の中では「蝉しぐれ」のシーンがいり混ざってしまっていた。

 でもやっぱり、「たそがれ清兵衛」の印象が強烈である。2番煎じとはいわないまでも、話の骨格がにているのと、あの「隠し剣」が、何か「必殺仕置人」を連想してしまい好かない。前作の方がよく感じてしまう。いや、順番が逆でもやっぱり「たそがれ~」の方が僕は好きだ。

    「たそがれ清兵衛」-公式サイト


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2 コメント

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はじめまして (さかな)
2007-02-28 23:57:18
私もこの作品、『たそがれ清兵衛』とともに観ました。
隠し剣はほんとに一瞬で、
なんのきらびやかさも、かっこよさもなく、
ただ闇討ちするためだけの剣…
それを
「なぜお前だけに教えたのだ~!」
と苦悩する侍の苦しさが虚しくさえ思えました。

藤沢周平の作品は脚本によって
だいぶ様相が変わるものですね。
DVDを見た後、原作を読んで
唖然としたこともあります。
やはり、映像化するにあたっては
いろいろな脚色は必要とすべきものなのでしょうね。
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コメントありがとうございます (y-inosan66)
2007-03-01 23:24:08
 さかなさん、コメントありがとうございす。
「武士の一分」も見ましたが、やっぱり「たそがれ~」が一番印象深い。武士はやっぱり真剣に向かい合った力と力、技と技の一本勝負でないと。(特に侍モノが好きなわけじゃないんだけど。)
 山田洋次のものは全般的に好きです。「息子」や「学校」「同胞(はらから)」なんかが。ついでに言うと「寅さん」シリーズも大好きです。
 侍モノでは黒沢明の「七人の侍」が絶品。「椿三十朗」もおすすめです。黒沢の方は山本周五郎のものが多いですが。
 また、コメントください。
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