2年前に亡くなった山崎豊子の絶筆、未完の作品である。しかし、書き終えていた第一部「潜水艦くにしお編」自体が読み応えあると同時に、収められている第二・第三部の構想を読むことで、他の作品同様そのスケールの大きさと今の日本社会への問題提起を感じ取ることができる。著者は「執筆にあたって」の中で、日米開戦の幕開けとなった真珠湾攻撃に参加、捕虜となった人物の波乱の人生を<テーマが“戦争と平和”で、なお現在の日本にも通じるもの>として書きたかったという。行き着いたのが日本周辺海域で<人知れず日本への脅威と対峙している>海上自衛隊の潜水艦の存在。だから第一部では、記憶にある潜水艦なだしお・遊漁船衝突事故がモデルとなっているような物語が展開、若い潜水艦乗りが主人公として描かれている。この主人公のその後については「ハワイ編」「千年の海 編(仮題)」の構想の中で多少知ることは出来たが、想像力の無さをあらためて痛感。完成作品を読んで、著者が追究してみたいと言っていた「戦争をしないための軍隊」なるものを考えてみたかった。例の新安保法案がめざしているものとは明らかに違うと思うが。