再審で死刑囚の冤罪が晴れ、無罪となるニュースもあるが、冤罪でありながら死刑が執行されていることはないのだろうか。そんな疑問を持つこともあり、手にしたこの本。結論から言えば、単純な冤罪のまま死刑という話ではなかったが、“冤罪”と“死刑”が可能性としてあり得ると考えさせる内容である。作者は通信社の記者だっただけに、誘拐事件の警察の対応や新聞記者の取材方法、刑場や死刑執行の場面などの描き方は迫真的。警察の不祥事や骨髄移植をからませるなど、真実は結構手がこんでいたが、女性弁護士が刑務官を利用しての冤罪偽装や刑事局長への罠は現実離れのような気も。ただ物語としては面白く、小説だからこれでよいのか。