知っている人が出ると聞いて、存在を初めて知った鴻巣グリークラブ。その定期演奏会に足を運んだ。大ホールを包み込む男性合唱の重厚な、そして洗練された響きは、音楽には素人な自分でも聴きごたえあるものだった。なかでも映像とともに歌いあげられた組曲「海鳥の詩」は、荒々しい北国の自然とそこで生きるものの希望が存分に伝わってくるようで特に印象に残った。新年をこれから迎えようとしている時期にこうした音楽に耳を傾けるのも悪くはない。練習に励まれた皆さん、お疲れ様でした。
悪天の北国とは無縁、冬晴れの「クレアこうのす」が会場
「オロロン オロロンとなけば 岩も もの言わぬ岩も オロロンと答える」から始まる組曲「海鳥の詩」の作詞・更科源蔵、作曲・廣瀬量平ともに北海道出身、とりわけ詩人の更科源蔵の名前は北海道にいたころによく聞いており懐かしかった。
ふるさとは キラキラの 光散る 北の海 北の空
オロロン エトピリカ ケイマフり
生と死は ろんろんと ゆれ動き ゆれ返す 深き海底
ごうごうと 重く渦ず巻き 天にとどろく オーロラの たゆとう季節
空を行く 笛の音ににて 月の夜は 月にぬれ 胸いたみ 口ごもり 息をのむ
みずかきの 冷たくしぴれ 落日の 燃えゆく彼方に あかね色
花を夢みて 鉛色 波をけり 岩をけり 風を呼ぴ どうどうの
シタキに乗り 虹をくぐり
雪を抱く 雲となり 風にまかせ 天と地の 空と海との 人と神
一つにとける キラキラの 光の彼方 南天の 星をめざすか 北の海鳥
(更科源蔵『海鳥の詩』の「北の海鳥」より)