数々のヒット曲の作詞や作家でもある著者は今、がん再発で闘病中と聞く。間もなく憲法記念日、少し前の朝日新聞でこの本にふれて「自民党が憲法改正と言っているけど、(中略)現在でも天皇陛下は平和憲法の価値を機会あるごとに語られている」と言っていた。副題が「反戦と抵抗のための文化論」としているように、政治から芸術、交友の中での出来事を氏の立ち位置から熱っぽく語る。題名となっている第1章はじめ第2章の「リメンバー ヒロシマ・ナガサキ―反戦・反核・脱原発のために」の信念は第5章の「芸術的抵抗への招待」まで受け継がれていく。その中の一文「『楢山節考』と棄民の構造」では、沖縄の人々、福島原発の被害者もまた現在に続く国家による棄民ではないか。<そして改憲して、国民から民主主義を取り上げようとする政治家たちの頭の中はとっくの昔に私たちを棄民しているに違いない>と厳しく問いかける。絶望の中にあって正直にものを書いて抵抗していく、と言う氏の一日も早い回復を願わずにはいられない。
(朝日新聞の掲載記事)