「聞き上手は話し上手」とか「優秀なセールスマンは上手に話すより聞くこと」、「クレーム処理はまず聞くことから」など「聞く」ことの大事さが言われるが、それが「力」を使うほどなのか。なぜ、この本がベストセラーになるの。そうした疑問が読んでみてよく分かった。インタビューが苦手で、1000回近い週刊誌の連載対談を経た今でも得意と思っていないという筆者が経験から得たコミュニケーションの術。エピソードを織り交ぜながらの<心をひらく35のヒント>は目新しいものはそう多くはないのだが、なるほど会話とはこういうものかと思わせる。<話をする当の本人にとっても、自ら語ることにより、自分自身の心をもう一度見直し、何かを発見するきっかけに…>そんな聞き手をめざしたい、と最後まで意外に殊勝な筆者。これからは、出しゃばりで小生意気というイメージを消して、週刊文春の「阿川佐和子のこの人に会いたい」を味わって読むことにしよう。