マスコミで時々報じられる医療ミス。だが、そうした医療過誤が同じ医師によって繰り返されるケースについてはあまり知られていない。その具体例と何故起きるのか、そこに横たわる本質的な問題点は何か。数々の医療訴訟を手掛けてきた弁護士がこの本で厳しく糾弾する。度々、対比で示される医師免許と運転免許。交通違反・事故を起こせば不利益や処罰、場合によっては自身への危険もあり、反省・後悔する。ところが、運転行為と違い、そもそも医療行為はミスがあっても自分自身に危険は及ばない。<刑事処罰の難しさ>は何となく分かるが、<民事裁判における「医師賠償責任保険」(医賠責)の運用による過保護><行政処分(免許取消、医業停止)はまずなされない>などの実態には驚くばかりだ。そうしたことで反省する機会が無く、研鑽もしないままの医療行為が続けられ、新たな被害者を生み出しているという現状。後段に身を守る術を何点か紹介しているが、著者が提起しているように医師を監督・指導する国の責任は大きい。民事で過失が認められた医師の把握やリピーター医師の氏名・内容の公表など含め、ルールや制度の見直しが必要であろう。この本は、数年前から医療過誤で病院を提訴している友人から借りた。担当医師がリピーター医師かどうかは分からない。しかし根底にある問題は同じように思いながら読み終えた。