僕と猫のブルーズ

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映画「悼む人」

2015年03月07日 | Art・本・映画
金曜日の夜、渋谷に映画「悼む人」を観に行った。
天童荒太原作、堤幸彦監督、高良健吾主演。2年前くらいに原作は読んだ。


http://www.itamu.jp/
事件の起きた場所を訪れ死者が「誰に愛されていたか」を聞き祈りをささげる青年静人。
彼は「死者のことを記憶する」ため事件が起きた場所を訪れ死者の知人に会い
生前の人となりを聞きノートに記録し祈りを捧げる。
彼の行為を喜ぶ人、恐れる人、忌み嫌う人、嘲笑する人。色々いる。
他人にどう言われようと静人はひたすら死者を悼む。犯罪者、善人、分け隔てなく。
そんな彼の行動は夫を殺した女性、母を棄てた父を憎む雑誌記者、癌で余命わずかの母親
色んな人を巻き込み・・ある奇跡を起こす。

堤監督の演出はストレート、重いテーマに正面から取り組む。
ボクは「TRICK」「SPEC」みたいなトリッキーな演出よりこっちのほうが好きだな。
「明日の記憶」や「コヨーテ、海へ」も素晴らしかったし。

俳優、撮影、音楽。どれも素晴らしかった。
大竹しのぶ、ARATAの強烈な演技に対し高良健吾の「ただそこに居る」演技が素晴らしかった。
そして静人が「なぜ悼むのか」その理由を説明しなかったのも良かった。
理屈や理論だの要らん。「そうしたいから、そうせざるをえないから」。それで十分だ。
原作同様、見終わった後の余韻は「爽やか」だった。心地よい感触が残った。

自分自身、この年齢になると「死」について考える事も増えてきた。
自分自身の病気だったり父や友人との別れ、広島、沖縄を描いた作品に触れたり、
そして・・・311・・・。
色んな出逢いや別れの中で感じたのは「忘れたくない。憶えておきたい」だった。
確かに死は哀しいし痛いしツラい。その最中にいるときは「忘れたい」と思う。

でも・・別れた人たちは自分にとって大切な愛する人だ。
いや、人だけじゃない。大好きな場所だったり風景だったり・・・・
それを「忘れる」のは・・「無かったことにする」のは・・・絶対違う。
悲しみや傷みも自分にとっては大切な感情だ。なら棄てちゃダメだ。
むしろ受け容れよう。ずっと自分の中に残して行こう。
だから、毎日想う、祈る。そうすれば「悲しみ」は友達になる。「悼み」は日常になる。

だから静人の行動はスンナリ受け容れられた。共感できた。
もしかすると、今後自分がどう生きるべきか、どう「死」に向かい合っていくか、
について示準になる映画かも知れない。観てよかったと思う。


311からもうすぐ4年。東北に行くたびに亡くなった方、傷ついた東北の地に悼みを感じる。
一方でこんな理不尽なことが起きることに怒りを憶える。
その悼みと怒りは4年経っても消えない。

忘れねーぞ、消さねーぞ、ずっと憶えてる。ずっと想ってる。だから、行こう。何度でも。

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