遅い朝に起きて蕎麦を茹でてブランチを摂った後、僕は再びバッグのファスナーを開いた。まずは財布の中身だ。保険証が4枚、持ち主は結構珍しい苗字の僕より7歳年下の女性のようだ。夫は僕より1歳年下で四国中央市に本社がある会社に勤めている。子供が二人居るようだ。キャッシュカードが4枚、地元の銀行のものがメインのようだ。その他には精神科の診察券が夫婦二人分と子供の内科の診察件が1枚。パチンコ屋のメンバーズカードが数枚とパチンコ玉二つ。各種レシート多数とその他の会員がカード数枚。
アニエスベーのビニールポーチを開く。そこにキャッシュカードと同じ銀行の通帳と郵便局の通帳。夫名義と妻名義の通帳を開く。残高はほとんど無い。どうやら妻は3月頃まで某運送会社で勤務していたらしい。毎月15万ほどの振込みが有った。3月までというのは4月に失業何とかという所から20数万円の振込みがあったので退職したものと考えた。その他には何やら手紙らしき封筒。さすがにこれは中を開けてみる気分にはならなくてそのままポーチに戻した。郵便局の通帳は恐らく娘のものだろう。一万円ちょっとの給料が毎月振り込まれていた。
他にも小さなビニール小物入れがあった。一つには印鑑セットが入っており、もう一つは小銭入れとして使っているらしい。残金281円とここにもパチンコ玉が二つ。その他には何種類の薬が入ったケースが一つ。精神科の診察券から考えるときっと睡眠薬や抗鬱剤・精神安定剤の類だろう。好奇心からちょっと飲んでみたくなったけれどどれが何の薬か判らないので変になっても嫌だからやめることにした。その他には某宗教の教えを書いた小冊子と同じく分厚い本とパンフレット。何も書かれていない2冊のノート。ルイヴィトンの手帳の1ページ目に神へ向けて、嬰児の成長と愛に包まれて云々というような祈りが書かれていた紙が挟まれていただけで中身は空白だった。
それらから察するに、このバッグの持ち主はやはりひったくりか置き引きにあったものと考えてよいだろう。少々鬱気味で仕事は辞めてしまった主婦でパチンコにもよく出かける。夫が先か妻が先か、何に疲れ鬱の症状が出たのかは知る由も無いが何かにすがりたくて心療科のある長町に近い4号バイパス沿いの宗教施設へも出入りをしているようだ。うちの家の位置関係から考えるとバイパス沿いのパチンコ屋でパチンコに夢中になっているうちに(または両替でもするために席を離れた隙に)バッグを盗み取られたものだろう。ここまで検証して交番へバッグを届けることにした。(続く)
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