夏は来ぬの唱歌は、まことこの季節にぴったりの風情である。近くの大通り両側には卯の花が咲き溢れて居るし、橘は最近旧家が少ないので都会では見かけ難い。しかし十分に青葉若葉の溢れる山野が遠く近く望まれる。本当に身も心も躍動する快晴の上天気の、しかも今日は、八十八夜の日和の季節である。軒端や木の天辺には、四十雀が元気よく囀り続けている。その鳴声が遠くまで響き冴え渡ってくる。ホトトギスこそは飛来して来ないが、佐佐木信綱作詞の「夏は来ぬ」がぴったりの自然豊かな季節である。卯の花、橘、棟(おうち)など、花鳥風月が人間社会と綺麗に織り交ぜられていて、生きる喜びが何時でも彷彿としてくる。過去現在未来へと繋がる一連の風物詩である。