マチンガのノート

読書、映画の感想など  

メタファーと身体性:鍋島弘治朗

2018-10-18 23:47:50 | 日記
本書では言語やそれに伴う世界認識が、いかに身体性を基にした
メタファーから成り立っているかが解説されている。
最近は何かとAIが人間の知性を超えるなどと主張する人がいるが、
現在のように、ある特定の演算などで人間を超えても、
身体のないAIが「人間を超える知性」とは別物にしかならないことがよく解る。
様々なメタファーが、自らと関わりのある対象と関連する動きや内的身体活動に基盤を持つ以上、
身体のないAIなどが、人間と同じような知性を持つことが原理的にありえないことが
よく解る一冊である。
メタファーと身体性の繋がりを考えながら、発達障害児(者)のプレイセラピーなどを行えば、
言語の獲得や、言葉とイメージの解離(渡辺あさよ)などへの治療にもつながるのではないだろうか。
これまで一部の臨床家がプレイセラピーは発達障害児には無効としていたのも、
身体性に基づいたメタファーが言語や他者理解の基となることが解らずにいたことが大きいのだろう。
児童精神科医の滝川一廣氏が、発達障害のSSTに関しては、
「スキルを公式的、機械的に教え込むのではなく、理解や判断を人と交換したり
分かち合う体験を繰り返し積ませること」が大切というのも
身体に根付いた理解、判断を通して、言葉を身体に関連付け、
メタファーの基にすれば、他者と共有した言語を発展させることに繋がるからだろう。


肉中の哲学:ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン 計見一雄訳 3

2018-10-17 09:37:33 | 日記
この本の翻訳が読みにくいのは確かだが、多忙な中、これだけの大著を
翻訳したことは大きな価値があると思う。内容とは関係ないが、装丁の写真はいいと思う。
様々な概念が身体の動きに起源をもつ、というのは
言語以前の子供や発達障害児(者)が言語を獲得していくプロセスや鏡像関係を考えるのに
役立ちそうである。
訳者の一連の著作は、見方や描写が動的で、読んでいて臨場感があり、
解り易かった。
表面的な病像の描写や症状と妄想の解釈と違い、どのように進行して
どのように介入するとどのように変化するかが読んでいて興味深かった。

肉中の哲学:ジョージ・レイコフ、マーク・ジョンソン 計見一雄訳 2

2018-10-13 23:38:28 | 日記
デカルトは見ることは知る事、と書いているが、実際には
あるアイデアから、他のアイデアへと動いて行っている。
それにもかかわらず、自分の動きには無自覚とのこと。
現代の認知科学者から見ると、哲学者が自らの動きに無自覚なことは意外との事。
デカルト以降の多くの哲学者たちも、考えを巡らし発展させるときに、
自らの方向を見つけたり、そちらへ動いたりするという自らの動きに
無自覚なことが意外だとの事。
訳者の計見氏が自らの書いたもので、様々な精神疾患は、動くことが出来なくなる事に
端を発するのだが、それらの事には多くの精神科医は注意を払っていないとのこと。