何かと話題になり売れた本書ですが、敵国の兵士の扱い方にいちいち疑問を持つというのは、
ソ連国内で自国民であっても「反革命的」とされた人物は、拷問し無理やり調書に署名させ、
万単位で処刑していた時代に不自然とは、著者は考えなかったのでしょうか。
自国民でもその様に扱った時代に、自国を侵略し、一般市民も大量に虐殺した敵国の兵士に、
復讐心を持つ人は多くいても、人道的に扱うべきと考える人は、極めて少なかったでしょう。
『騎士道精神』を引き合いに出す人がいそうですが、そのようなものは中世に騎士や傭兵などが
戦争をしていたという時代のもので、第二次大戦とはほとんど関係がないものです。
国民国家が成立し、一般市民を徴兵した国民軍ができたからこそ、その後の大規模な戦争が
可能になったという歴史の流れを考えに入れない人は、そのあたりが曖昧になりそうです。
ジュネーブ条約やハーグ陸戦条約の方が影響を与えていたでしょうが、独ソ両軍とも、
それほど尊重していなかったようです。
後世に書かれた多くの資料を基に書かれた本書ですが、資料を参考にする際に、
何も考えずに使っているようでした。