世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

栗東市歴史民俗資料館

2021-02-28 08:13:03 | 博物館・滋賀県

今回から、東近江の古代関連施設や神社等を訪問順に紹介する。尚、訪れた先々はココをご覧願いたい。初回は「栗東市歴史民俗資料館」である。

残念ながら、展示物の写真撮影はロビー以外は禁止されていた。しかし上砥山の山ノ神祭祀場を再現した展示物は、是非にと思い了解を得て、此れのみ写真撮影させて頂いた。その写真は次回紹介したい。

何点かの石造物が展示されていたが、上掲の写真のみ紹介する。民俗資料館前には、明治初年の農家が展示されていた。

旧中島家住宅と呼ぶようだが、居室は田の字配置になっており、昔の農家の居室配置とおなじであろう。尚、同じ建屋の中に牛小屋がある。屋並びの小屋の牛小屋は、60数年前の子供のころ見た覚えがあるが、同一建物内の牛小屋を見るのは初めてである。

ハエに悩まされたとも考えるが、建物の柱や梁は煤で真っ黒、中には黒光りしている様子がうかがわれる。竈や囲炉裏の煙でハエが寄り付かなかったとも考えるが、果たしてどうか?

<了>


中島誠之助氏久々の誤鑑定か?

2021-02-26 06:35:40 | 東南アジア陶磁

過日(2021年2月16日)放送の『開運!なんでも鑑定団』(←ココをクリック)でとりあげられた、『クメール壺』の中島氏の鑑定についてである。

先ず、放送の大壺は『クメール』ではなく、北タイ産と思われるが、未だ窯場が特定されていない『謎の陶磁』である。今から30年以上前にラオスからメコンを渡り『謎の大壺の一群』がタイに里帰りし、チェンマイに持ち込まれた。北ラオスのシェンクワーン辺りが焼成地ではないかとも云われていたが、それらの壺や陶片が北ラオスのどこからも出土していない。壺の姿かたち、釉薬の調子、土味から北タイ産と云われているが、残念ながら北タイの各窯場から、それらの失敗作や陶片がどこからも出土しておらず、『謎の陶磁』である。ただし候補としては、サンカンペーン、パヤオ、ナーンであろうと云われている代物である。前置きはこの程度にしておく。

中島氏は、その謎の大壺と思われるものに対し、『近年に造られた土産物』で2万円との御託宣である。その理由は一つ、壺の頸部の宝相華唐草文の印花文をさして『その文様は古いものには無い』との指摘である。それ以外に何故土産物かとの説明は無い。失礼ながら中島氏は東南アジア古陶磁について、どこまで御存知であろうか? 

下の写真をみて頂きたい。頸部や肩部の圏帯に宝相華唐草の印花文を認めることができる。実は『謎の大壺』の一群の最大の特徴は、この宝相華唐草文にある。

上掲写真の壺は双耳が取り付けられている。出品作もこの双耳らしき痕跡が残っている。つまり、欠け落ちていると思われる。何故、近年の土産物に耳が欠けているのか?・・・中島氏は何も語っていない。常識で考えて耳が欠けたものを近年の土産物と売りにだすのか? 土産物なら完品を売りに出すであろう。

当該ブロガーは、この大壺は本歌と考えているが、断言できるほどの情報が映像から得られないでいる。手取りの重量感、バランスが分からない、底の処理として鉋削りなのか、静止糸切痕をもつのか、それとも回転糸切痕なのか。土味はどうか・・・など重要な要素が分からないので断言できないが、本歌の可能性が高い。

出品者氏は300万円で購入したとのこと、2万円の鑑定にショックであったであろう。しかし早まるなかれ、本歌の可能性がある。最近正確な鑑定ができる骨董商がお亡くなりになっており、持ち込み先の助言ができない。是非見てみたい一品である。

<了>


東近江と北タイの風習(1):ターレオとトリクグラズ

2021-02-25 08:25:52 | 日本文化の源流

東近江は民俗学の宝庫のように思われる。今回は、ある呪標を例に東近江と北タイの風習の類似性について紹介する。

先ず北タイの事例から紹介する。ターレオ(ต๋าเเหลว)と呼ばれる呪標が存在する。チェンマイ民俗学博物館では、このต๋าเเหลวをEagle eyeと紹介している、とすれば『鷹の眼とか鷲の眼』などの猛禽類の眼ということになる。その事例としてチェンマイ郊外のタイ・ルー族住居の門柱の横木に掲げられているターレオをご覧いただきたい。

(写真出典:北タイ日本語情報誌Chaoの編集人Facebookより)

横木の中央に竹の枌を編んだ呪標が掲げられている。その中央には何やら白色のものが取り付けられている。これは呪文が書き込まれた紙片かと勝手に推測している。そしてその下には植物の種らしきものが吊り下がっている。これは何某かの意味を持つであろうが、素人の当該ブロガーには分からない。ついでに横木に表現されている白い綱による文様は鋸歯文と云い、魔除けの意味をもつ。

蛇足ながら日本でも鋸歯文が魔除けの意味を持つ事例を下に掲げておく。

ここで重要なことは、掲げられているターレオは結界を示しており、エイリアンの侵入を監視・阻止する呪標である。あわせて同じ意味をもつ鋸歯文も掲げられている。つまりタイ・ルー族の家屋に災いが無きよう、更には平穏でありますよう願う呪標に他ならないことになる。

尚、北タイでは民族により、ターレオの形は異なるようである。下の写真は昨年4月のCiangmai Newsに掲げられていた写真の一枚で、COVID-19の侵入から村を守るため進入路を封鎖した場面である。ここのアカ族のターレオは3枚羽根の風車の形をしている。このように民族によりターレオの形は、少しづつ異なるようである。

そこで東近江のトリクグラズである。このトリクグラズの語源を調べるが、よくわからないでいる。”鳥潜らず”なのか”物盗り潜らず”なのか? 下に東近江は野洲市行畑の行事神社に掲げられている勧請縄のトリクグラズの写真を掲げておく。尚、トリクグラズとは注連縄の中央のシンボルと云うか肖形をそのように呼んでいる。

先のタイ・ルー族住居の門柱の横木にみるターレオと大きさは異なるものの形状はよく似ている。このトリクグラズが掛かっている注連縄を勧請縄と近江では呼んでいる。この勧請縄は集落の出入口に掲げられる呪標で、タイ・ルー族やアカ族と同じく結界を示し、エイリアンの侵入を阻止する役割を受け持っている

タイ・ルー族のターレオと勧請縄のトリクグラズの形状の類似性と、双方の同一の役割、片や猛禽類の眼と片や鳥潜らず・・・単なる偶然の一致なのか。このように双方が一致する事例(後日、別途紹介)が他にも存在することから、単なる偶然の一致とは考えにくい。

タイ族が史書に現れるのは、雲南の南詔国の後継・大理国からと云われている。雲南南部はタイ族に限らず、多くの少数民族が割拠していた。それらの民族の多くは、紀元前に中国の呉・越の地を源流とする説が存在する。中国・華北の動乱の際、多くの漢族が難を逃れて南下したが、それらの少数民族は漢族に追われて雲南や、ある一派は渡海して倭(日本)に逃れたであろうと云われている。タイ・ルー族やアカ族のターレオと東近江の勧請縄のシンボル・トリクグラズの類似性は、国境なき古代における民族間の交流・交易の証であろうか?

<了>


出雲と古代朝鮮(拾壱)・馬具類

2021-02-24 07:22:39 | 古代出雲

<続き>

朝鮮半島からの渡来か国産かは別として、半島の影響を受けた遺物として馬具類が存在する。

6世紀末の出雲市上塩冶町・築山古墳からは、大刀のほかに馬具類が出土している。

これらを復元した首長の騎馬像が下の写真である。

金達寿氏は、この馬具類は”古代朝鮮から直行したものにちがいない”・・・と、「日本の中の朝鮮文化・8」で、指摘しておられる。他に馬具類が出土するのは、6世紀前半の出雲市国富町の上島(あげしま)古墳、同町の国富中村古墳、出雲市今市町の大念寺古墳、同市下古志町の妙蓮寺山古墳、松江市の御崎山古墳がある。

上掲3葉の写真は国富中村古墳出土の馬具類である。この古墳は次の復元模型にあるように二つの埋納石棺があり、おびただしい馬具と武具が副葬されていた。

これらの馬具や武具類は、やはり半島の影響を受けたものと考えられる。

写真は韓国・金海国立博物館展示の馬具と甲冑を身に着けた武人像である。やはり出雲に限らず全国の馬具・甲冑類は半島の影響を認めざるを得ないであろう。

拾壱回にわたり『出雲と古代朝鮮』としてシリーズ展開してきた、今回をもって終了する。出雲の縄文・弥生期については、半島の影響は云われるほど大きなものではなかったようだが、古墳時代にはそれなりの影響を受けたものと思われる。

<了>


出雲と古代朝鮮(拾)・金銅製冠

2021-02-22 08:17:58 | 古代出雲

更に古墳からの出土遺物と朝鮮半島のそれと比較してみる。金銅製冠は全国各地の古墳から出土しているが、出雲でも3か所の古墳から出土した。一つは出雲市上塩冶町の築山古墳から出土しており、形状は写真の如くシンプルである。

(復元品)

馬具も半島渡来ないしは渡来の品を参考に国産されたものと考えるが、馬具類については次回紹介したい。首長は写真の如く金銅製冠をつけ馬に騎乗していたであろう。

写真は安来市鷺ノ湯病院跡の横穴墓から出土した金銅製冠立飾りや金銅製太環式耳飾りが出土している。今回のテーマではないが、太環式耳飾りは、新羅の王墓や伽耶の王墓から出土しており、何らかの関連が考えられる。

最後の1点は、出雲市国富中村古墳出土品で、これは潰された状態で出土した金銅冠である。ここからは馬具や武具も出土している。以上、今回は金銅製冠の出雲からの出土状況を紹介した。

<続く>