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いくつになっても人生これから

終生ヒトのオスは飼わずー米原万里

2015-02-14 16:13:13 | 読書メモ

 

好きな作家のひとり 米原万里さんの

終生ヒトのオスは飼わず

 

図書館で借りてきました。

私、この本をずっと誤解していて 「ヒトのオスは飼わないの?」と

混同していました。

それで、2007年の出版なのに読んでいなかったのです。

米原万里さんは 2006年に亡くなっていますから、死後に

雑誌に連載されたものが出版されたのでした。

似たようなタイトルだったので、てっきりもう読んだものと思ってしまって。

 

米原さんは、のら猫や保護されて殺処分されそうな犬を何匹も

引き取って大切に飼っていましたが、この本はその飼い猫、犬騒動記

のような内容でした。

 

それぞれの猫ちゃんやワンコのエピソードが楽しく、また悲しく語られています。

まるで、人間の家族のようです。

というよりは、人間よりずっと純粋な心の交流のように感じました。

ことばは交わさないのに会話しているような場面もありました。

 

特に猫は、脳が人間に似ていて、人間の前頭葉を取ったら

猫の脳になるそうです。

道理でね~、人間ぽいですもんね~。

 

米原さんの文章は洗練されていて語彙も豊富で

テンポもよくて、全く嫌味がなくさらっと読めてしまいますが

大事なところはしっかり心に残ります。

 

ある日大事なワンコが行方不明になってしまい

何年も探し続けて結局この世では再び会えなかったという

哀しい話が書かれています。

文章は割と淡々とあっさりと感じるほどですが、米原さんの心の痛みが

じんじん伝わってきます。読み手に迫らない配慮があるのです。

 

 

ロシア語のほかにいったい何か国語をマスターされているのか

わかりませんが、膨大な言葉のタンクから選び出さるのは

やさしい言葉です。

米原さんは、うつくしい言葉だけがいいとは思っていないようで

「うつくしくないことばでも、気持ちを表すことのできる言葉は必要」

と考えていたようです。

たとえば、 ウザイ、キモイ のような言葉でも。

彼女がそのような言葉を使うことはなかったですけど。

少女時代をロシアですごし、日本のように以心伝心があるとされる国とは

違う環境で暮らした経験からの考えだったのでしょうか。

 

本の最後に 米原さんの秘書さんが猫ちゃんやワンコが

どのようになったのかを追記してくださっていて、ホッとしました。

みんな、自分の運命をちゃんと受け止めてそれなりに

暮らしていました。泣けました。