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逝きし世の面影(1)

2022年01月15日 | NPO

昨日開催された認定NPO法人フリースペースたまりばの30周年記念シンポジウムは素晴らしかったですね。シンポジストは東京大学の熊谷晋一郎さん、世界ゆるスポーツ協会の澤田智洋さん、浦河ベテルの家の向谷地生良さん、コーディネーターはたまりばの西野博之さんという布陣だから当然といえば当然ですが。

その中で某が「おや?」と思ったのは、向谷地さんの最後のコメントに渡辺京二の著書「逝きし世の面影」を引用し、江戸時代に来日した欧米人が「貧乏人は存在するが、貧困なるものは存在しない」と言っているというくだりでした。ピンとこなくてスルーした方も多かったのではないかと思いますので、少しだけおさらいをしてみますね。

「逝きし世の面影」は、日本近代史家の渡辺京二が幕末から明治年間に来日した数多くの外国人が残した膨大な記録を丹念に精査することによって、明治末期以前の文明の姿を追い求めたものであり、以後はこれ以上の成果を得ることは不可能だとして同様の研究を行う者が出てこないというほどの名著です。

向谷地さんが紹介したのは、1873年(明治6年)にお雇い外国人として来日し海軍兵学寮で英語を教えたイギリスの日本研究家バジル・ホール・チェンバレンが書いた「日本事物誌1」の「金持ちは高ぶらず、貧乏人は卑下しない。実に、貧乏人は存在するが、貧困なるものは存在しない。ほんものの平等精神が社会の隅々まで浸透しているのである。」という一節です。

因みに、初代英国総領事として下田に来航したタウンゼント・ハリスは、「彼らは皆よく肥え、身なりもよく、幸福そうである。一見したところ、富者も貧者もない。これが恐らく人民の本当の幸福の姿というものだろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であるかどうか、疑わしくなる。」とまで述べています。

彼らの脳裏には、産業革命以降の欧米での悲惨な貧困の現状が浮かんだものと考えます。

「逝きし世の面影」には「子どもの楽園」という章もありますが、長くなるので明日ご紹介したいと思います。

 

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