某月某日 今月初旬、稚内で取材した校正が上がったので取材先に確認をしてもらうために送付した。取材先の『悠遊ファーム』オーナーの渡部さんと電話でも話をしたが、雪は未だとのことだった。が、雪虫が飛んだので一週間もしないうちに雪になるだろうとのこと。
北国ではこれから、本格的な冬、雪の季節となる。南の国に育った私には分からぬ世界である。取材時は暖かで穏やかな天候、ファーム向かう途中『夕日が丘」』という見晴らしポイントに寄った。残念ながら利尻富士の半分から上は雲に覆われていた。
悠遊ファームは、200坪のメインハウス、35坪の宿泊用の別棟、バーベキューハウス、野菜栽培のビニールハウス5棟、農園、これらが7000坪土地に在る。このほかに、約2ヘクタールの畑を借りているそうだ。これを、常時応援してくれる6人のシニアボランティアのメンバーとともに手入れをしている。ボランティアの年齢は70歳~80歳。高齢なので病気が心配だとか、現にお一人入院中とのことだった。
ジャガイモを掘る 大根畑で草取り ジャガイモさん
そういえば、取材時に冬の間は暇ではないですか?と訊くと。「いえいえ、やることはたくさんあります。屋内の修繕、改修と大工仕事をします」とのことである。働くことが苦にならない、好きなんだろうな・・・。
そうでなければ「農業なら生涯現役で働きつづけられる。生涯を現役で生きるために農業を選択した」とは、云わないし、思わないだろう。ここ悠遊ファームでは、野菜類の生産の他に力を入れたいのが宿泊者の増と、加工品の販売だという。客室は、メインハウスに5部屋、別棟は2LDKが二室である。
ここでは、野菜の販売のほか初夏から夏にかけてはイチゴ狩りが楽しめる。またバーベキューハウス(この建物も自分たちで建設)で、バーベキューも楽しめる。メインハウス内の”キッチンゆうゆう”(妹夫妻が運営)では、特産の勇知イモ(ジャガイモ)を使った手作りのパン・ドーナツや食事ができる。加工品の南蛮味噌・ヨーグルトケーキも楽しよう。
残念ながら、今年の営業は今日でお仕舞となり、来春のゴールデンウィークまで休業となる。メインハウスに設えた、薪で沸かす五右衛門風呂やロシアサウナは、冬季オーナーだけの占有か。テラスの五右衛門風呂に浸かり、雪を見るのは格別、と渡部さんが云ったのが思い出される。
取材で宿泊した私は、勇知イモ三種(農林1号、きたあかり、メークイン)を茹でてもらい食した。正直、違いは分からなかった。が、全部美味かった。ファームのすぐそばに勇知スキー場があるが、冬場はファームの営業をしていないのが残念だ。
これは朝食です
稚内の農業は酪農が中心、勇知も牧草地が広がりサイロが点在していた。それでも文化的な取り組みにも力を入れているそうだ。窯元が四軒あるというが、その中の一つがファームの隣に在った。
JR宗谷本線勇知駅は、古い貨車が一両ぽつんと置かれた無人駅。単線の線路が延びているが、電車は一日五本しかない。この駅からファームまで、徒歩10分であるが、人家や店はまばらであった。
夕方、インタビューの途中であったが渡部さんから「夕日を見に行きましょう」と提案された。迫る夕闇と競争するように車を飛ばして10分ほど、海岸に着いた。海の彼方に浮かぶ島、利尻富士には雲がかかっていた。島の東端と海にかかる雲を朱に染めて、夕日は海に没すところだった。浜辺の浜木綿の真っ赤な実が印象的だった。浜に沿ってコウホネ草(見たことはない)の咲く小さな池があるのだが・・・。
10月3日、稚内市上勇知を訪れた時の光景である。