論文問題を眺めて,重要な事実をピックアップする。しかし,実際問題として,全て書き抜くわけにはいかない。そこで,事実間の重要度をつけるトレーニングをして欲しい。全て書け無いなら,特に重要な,落としてはいけない事実は何か,という「順序付け」をするセンスを磨くのである。それから全てマンマ抜き出すわけにもいかないので,文をある程度まとめる力量も必要であろう。そのトレーニングもしておきたい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120221-00000011-wsj-bus_all
・・・グローバルな売り上げの観点からすると、日本は高級品メーカーにとってますます重要でなくなってきている。
LVMHの昨年の総売上高237億ユーロのうち、日本が占める比率はわずか8%で、日本を除くアジア諸国の27%を大きく下回っている。日本以外のアジア諸国では、高級品に対する需要が旺盛で、成長が見込める。5年前は、売り上げのうち日本が占める比率が13%、日本を除くアジア諸国が17%だった。
グッチの売り上げ31億4000万ユーロのうち日本の占める比率は12%であるのに対し、日本以外のアジア諸国は37%で、LVMHのパターンと同様だった。2006年時点の日本の比率は19%、日本を除くアジア諸国は22%だった。
日本市場は他のアジア諸国ほど期待が持てない状況が続きそうだ。
こういう記事を見ると,悪意を感じるか,単なる馬鹿じゃないかと思うことがある。しかしウォール・ストリートジャーナルでこのレベルかと。
日本の比較対照相手が「アジア」って段階で,凄い比較の仕方である。中国,韓国や東南アジア諸国連合軍と比較して何の意味があるのかと先ず思う。中国は既にGDP世界第2位の経済大国であり,世界第2位を含むエリアと世界第3位の国を単独で比較するってのはどういう了見なんでしょう。まぁ,ずっと「アメリカ,日本,EU,アジア諸国」という「比較の仕方」がまかり通ってきたので,そのせいかもしれないが,発展途上国と言われる国々の経済成長がこれだけ進んでいる以上,「1国の経済的影響力」を検討するのに,他のエリアと比較するのは何かと誤りの元であると思うのだが。この記事は元々は「国別の売上伸び率」を問題にしているのだが,最後の方は単純にシェアの話に摩り替わって終わっている。因みに日本での売上高は,10%以上伸びてたそうだが,ユーロ安の影響を指し引けば1%減になるそうだ。大震災の影響を考えたら寧ろ持ち応えているように思うがどうでしょう。
俺が経営者なら,自分とこの商品のワールド・シェアが10%近い国は,「とんでもなく重要なマーケット」と考えるがどうでしょう?どうでもいいなんて思うわけ無い。シェアは全体の額がでかくなれば下がりやすい性質を持つ。もし売上総額が劇的に減少しているなら分からんでもない指摘だが,日本のロット自体はかなりでかい。グッチの例で言えば,日本を含むアジアのシェアが10%伸びているということである。他の国がシェアを喰われているという方がまだ正しいと思う。
TPPの問題もそうで,環太平洋なんて言い方しているけど,その実情は,アメリカと日本だけで加盟国のGDP総額の91%なんですが(苦笑)。別に環太平洋エリアの新興国マーケットを取り込む,なんて言っても実益は我が国にはほとんど無い。しかもその他の国は輸出国家であり,日本の商品を売り込めるようなマーケットではない。日本の市場がこれらの小国に「飲み込まれる」だけである。一体日本にとって何のメリットがあるのでしょうか。しかも日本の関税率,実は相対的に見ても既に相当低いんですがね(笑)。日本はアメリカ,中国,韓国,インドあたりと個別にFTA辺りで手をうっとけば良くないかと(笑)。これも日本と環太平洋なんてくくりで語るから誤解を招きやすいのだ。
そういえば昔,日本人が「日本とアジア」と言うと,「日本はアジアではないのか?」とアジア諸国の人が言う,という笑い話があったなぁ。
・・・グローバルな売り上げの観点からすると、日本は高級品メーカーにとってますます重要でなくなってきている。
LVMHの昨年の総売上高237億ユーロのうち、日本が占める比率はわずか8%で、日本を除くアジア諸国の27%を大きく下回っている。日本以外のアジア諸国では、高級品に対する需要が旺盛で、成長が見込める。5年前は、売り上げのうち日本が占める比率が13%、日本を除くアジア諸国が17%だった。
グッチの売り上げ31億4000万ユーロのうち日本の占める比率は12%であるのに対し、日本以外のアジア諸国は37%で、LVMHのパターンと同様だった。2006年時点の日本の比率は19%、日本を除くアジア諸国は22%だった。
日本市場は他のアジア諸国ほど期待が持てない状況が続きそうだ。
こういう記事を見ると,悪意を感じるか,単なる馬鹿じゃないかと思うことがある。しかしウォール・ストリートジャーナルでこのレベルかと。
日本の比較対照相手が「アジア」って段階で,凄い比較の仕方である。中国,韓国や東南アジア諸国連合軍と比較して何の意味があるのかと先ず思う。中国は既にGDP世界第2位の経済大国であり,世界第2位を含むエリアと世界第3位の国を単独で比較するってのはどういう了見なんでしょう。まぁ,ずっと「アメリカ,日本,EU,アジア諸国」という「比較の仕方」がまかり通ってきたので,そのせいかもしれないが,発展途上国と言われる国々の経済成長がこれだけ進んでいる以上,「1国の経済的影響力」を検討するのに,他のエリアと比較するのは何かと誤りの元であると思うのだが。この記事は元々は「国別の売上伸び率」を問題にしているのだが,最後の方は単純にシェアの話に摩り替わって終わっている。因みに日本での売上高は,10%以上伸びてたそうだが,ユーロ安の影響を指し引けば1%減になるそうだ。大震災の影響を考えたら寧ろ持ち応えているように思うがどうでしょう。
俺が経営者なら,自分とこの商品のワールド・シェアが10%近い国は,「とんでもなく重要なマーケット」と考えるがどうでしょう?どうでもいいなんて思うわけ無い。シェアは全体の額がでかくなれば下がりやすい性質を持つ。もし売上総額が劇的に減少しているなら分からんでもない指摘だが,日本のロット自体はかなりでかい。グッチの例で言えば,日本を含むアジアのシェアが10%伸びているということである。他の国がシェアを喰われているという方がまだ正しいと思う。
TPPの問題もそうで,環太平洋なんて言い方しているけど,その実情は,アメリカと日本だけで加盟国のGDP総額の91%なんですが(苦笑)。別に環太平洋エリアの新興国マーケットを取り込む,なんて言っても実益は我が国にはほとんど無い。しかもその他の国は輸出国家であり,日本の商品を売り込めるようなマーケットではない。日本の市場がこれらの小国に「飲み込まれる」だけである。一体日本にとって何のメリットがあるのでしょうか。しかも日本の関税率,実は相対的に見ても既に相当低いんですがね(笑)。日本はアメリカ,中国,韓国,インドあたりと個別にFTA辺りで手をうっとけば良くないかと(笑)。これも日本と環太平洋なんてくくりで語るから誤解を招きやすいのだ。
そういえば昔,日本人が「日本とアジア」と言うと,「日本はアジアではないのか?」とアジア諸国の人が言う,という笑い話があったなぁ。
伊藤塾の論文公開模試も3月日程だとあと1ヶ月なんですね。いよいよ「超直前期」という風情でありましょう。決戦の日が近づいてきております。
以前から指摘しているように,そろそろ,「過去問題1日1問」週間の始まりです(笑)。自分の目指してきた「答案スタイル」が身についているかどうかをチェックすることが最大の目的です。
あと,フレーム講義で指摘した点(視点・事実関係・論点等)につき全部言及するのは実際には難しいわけですが,他方で「落とすべきではない視点・事実関係・論点」というのはあります。その書き漏らしが無いよう注意しましょう。この「選別の感覚」が重要です。なお論点そのものは,既に分かってしまっているので,論点をピックアップできたこと自体には大した意味はありません。分量的には少なくても,重要なポイントについて指摘できているかいないかで天と地ほどの差が付きかねませんので気をつけましょう。
以前から指摘しているように,そろそろ,「過去問題1日1問」週間の始まりです(笑)。自分の目指してきた「答案スタイル」が身についているかどうかをチェックすることが最大の目的です。
あと,フレーム講義で指摘した点(視点・事実関係・論点等)につき全部言及するのは実際には難しいわけですが,他方で「落とすべきではない視点・事実関係・論点」というのはあります。その書き漏らしが無いよう注意しましょう。この「選別の感覚」が重要です。なお論点そのものは,既に分かってしまっているので,論点をピックアップできたこと自体には大した意味はありません。分量的には少なくても,重要なポイントについて指摘できているかいないかで天と地ほどの差が付きかねませんので気をつけましょう。
夏場は短時間睡眠でもガバッと起きて元気百倍なのだが,冬場はどうにも駄目である。いわゆる寝起きは非常に良いのだが,その後「起きたくない」気分に強烈に襲われるのである(笑)。
起きた瞬間(これはバチッと目覚める),その日の予定全てを「面倒くさい」とまず思うのである(笑)これはプライベートの遊びの予定も含めてである。とにかくなんか「面倒くさい」と一端考えてしまう。実際には,面倒くさいわけではなくて,「このままずっと寝たい」なのだが(笑)
どうにも寒いのは苦手で,寒い時期はひたすら寝ていたい。なんとも凄い怠けぶりである。なので寒い時期は早く終わって欲しいのだ。まぁ,言うてももうすぐ弥生の声が聞こえてくる。春はすぐそこまで来ているのかなぁ~。
起きた瞬間(これはバチッと目覚める),その日の予定全てを「面倒くさい」とまず思うのである(笑)これはプライベートの遊びの予定も含めてである。とにかくなんか「面倒くさい」と一端考えてしまう。実際には,面倒くさいわけではなくて,「このままずっと寝たい」なのだが(笑)
どうにも寒いのは苦手で,寒い時期はひたすら寝ていたい。なんとも凄い怠けぶりである。なので寒い時期は早く終わって欲しいのだ。まぁ,言うてももうすぐ弥生の声が聞こえてくる。春はすぐそこまで来ているのかなぁ~。
以下のオープンスクールは,3月3日に,京都(13時~15時),名古屋(18時~20時)の順で,3月4日は大阪(11時~13時)です。各校舎,20分×5コマの個別カウンセリング枠も確保してあります。新判例を利用してガツンコ♪と講義します☆
2013年度の司法試験受験予定者の方へ
最新情報から提供するこの1年の具体的学習法
~LSルート受験者が予備試験合格者と渡り合うための実践力~
そして3月14日は,『未修からの大逆転「2013年合格へ向けすべきこと」』と題しまして,東京校で19時~20時半まで講座説明会です。
2013年度の司法試験受験予定者の方へ
最新情報から提供するこの1年の具体的学習法
~LSルート受験者が予備試験合格者と渡り合うための実践力~
そして3月14日は,『未修からの大逆転「2013年合格へ向けすべきこと」』と題しまして,東京校で19時~20時半まで講座説明会です。
5個目の判決で完全決着がついたと言う感じでしょうか。凄惨な事件から13年の月日が流れたということです。また本件で「永山基準」とも言うべき「4人殺害」という死刑判決のベースラインが,「2人殺害」に拡大したとも言えそうです。
死刑制度の当否はさておき,弁護団の「言い分」でいつも違和感を感じるのが,「反省の日々を送っている(被告の)姿勢に目を向けようとせず、更生の可能性を否定した」とかなんとか言う点である。
「反省」すると何故犯した罪が急に軽くなるのだろうか。死刑を回避するだけのインパクトが,反省すること自体にあるとは思えない。反省するのは「当たり前」のことであり,「当たり前のこと」をすると特別扱いしなければいけない理由がピンと来ない。更正の可能性云々も「反省していれば更生する」,というそんな単純な話でもなかろう。大体,人を殺しておいて反省しない方が異常だ。
獄中手記やら,獄中からの反省文にどこまで意義があるのだろうか。大体,本当に反省してんだか単に自己弁護してるだけなんだか分からない。自分の行動に何らかの理由の後付けをしているだけのように感じる。弁護人が「とりあえず」反省文を書かせるというのもどうかと思う。
死刑制度の当否はさておき,弁護団の「言い分」でいつも違和感を感じるのが,「反省の日々を送っている(被告の)姿勢に目を向けようとせず、更生の可能性を否定した」とかなんとか言う点である。
「反省」すると何故犯した罪が急に軽くなるのだろうか。死刑を回避するだけのインパクトが,反省すること自体にあるとは思えない。反省するのは「当たり前」のことであり,「当たり前のこと」をすると特別扱いしなければいけない理由がピンと来ない。更正の可能性云々も「反省していれば更生する」,というそんな単純な話でもなかろう。大体,人を殺しておいて反省しない方が異常だ。
獄中手記やら,獄中からの反省文にどこまで意義があるのだろうか。大体,本当に反省してんだか単に自己弁護してるだけなんだか分からない。自分の行動に何らかの理由の後付けをしているだけのように感じる。弁護人が「とりあえず」反省文を書かせるというのもどうかと思う。
無事,第1次名京阪遠征は終了しました!今春からロー進学と言う方が多く来てくださり,流れの変化を強く感じました。制度がまだ固まっていない段階なので,1年1年で在学生・受験生の意識が大きく異なるように思います。変化を敏感に感じ取り早めに新しい動きをとる能力も,情報感度の一部だと思います。
早くも再来週の3月3日4日には第2次名京阪遠征になります。今度は新判例を用いて,学習方法を示して行きたいと思っています。レジュメ作らにゃ(笑)
しかし西日本冷え込んでましたね~。特に米原から京都間なんて完全に雪がドカンと積もっていて,「えっ,ここどこ?」って一瞬思ってしまうほどでした。京都も日中晴れていたのですが,講義中に少し雪が舞ったそうです。名古屋も負けじと冷え込んでいました。間違いなく今冬の列島は冷え込んでいやがりますよ。これだけ冷えれば,一時期問題化していた,「琵琶湖の息吹」も順調に回復しているかと。
しかし,今朝の千葉は最低気温が驚天動地のマイナス2度だとか!これは吉野的には即死レベル。洗濯物が乾くどころかカチコチに固まっていやがりましたよ!
早くも再来週の3月3日4日には第2次名京阪遠征になります。今度は新判例を用いて,学習方法を示して行きたいと思っています。レジュメ作らにゃ(笑)
しかし西日本冷え込んでましたね~。特に米原から京都間なんて完全に雪がドカンと積もっていて,「えっ,ここどこ?」って一瞬思ってしまうほどでした。京都も日中晴れていたのですが,講義中に少し雪が舞ったそうです。名古屋も負けじと冷え込んでいました。間違いなく今冬の列島は冷え込んでいやがりますよ。これだけ冷えれば,一時期問題化していた,「琵琶湖の息吹」も順調に回復しているかと。
しかし,今朝の千葉は最低気温が驚天動地のマイナス2度だとか!これは吉野的には即死レベル。洗濯物が乾くどころかカチコチに固まっていやがりましたよ!
NBAのオールスターが近づいていますが,イースタン・カンファレンスの先発メンバーがとにかく凄い!デリック・ローズ,レブロン・ジェームズ,ドゥエイン・ウェイド,カーメロ・アンソニー,ドワイト・ハワードの5人ですよ!文字通りのオールスターメンバーだ。レブロン,ウェイド,メロ,ハワードは同期って言うのも,マイケル・ジョーダン世代を思い起こさせる。ローズは少々若いが,史上最年少MVPだ。この面子は本当に夢の競演だなぁ。
他方で,ケビン・ガーネット,ティム・ダンカン,ジェイソン・キッド,ビンス・カーター,トレイシー・マグレディ,アレン・アイバーソン(そもそも引退状態)というオールスター常連のスーパースター軍団の名が無い。コービー・ブライアントは頑張っているけど,確実に世代交代が進んでいるなぁ,と感じます。しかし寂しいですねぇ。
他方で,ケビン・ガーネット,ティム・ダンカン,ジェイソン・キッド,ビンス・カーター,トレイシー・マグレディ,アレン・アイバーソン(そもそも引退状態)というオールスター常連のスーパースター軍団の名が無い。コービー・ブライアントは頑張っているけど,確実に世代交代が進んでいるなぁ,と感じます。しかし寂しいですねぇ。
平成19年のピアノ伴奏事件と,平成23年の起立斉唱命令事件は絶対比較検討するようにして下さい。しかも,あくまでも「事例判断」である,という点も意識して下さい。事実関係を変えれば似て非なる事案になる可能性がある事例なので,非常に本試験向きの素材です。
前者では,「間接的制約である」との認定すらなく,その上で論理を展開し,後者では,「直接的な制約ではない」が,「間接的な制約はある」,という前提でロジックを展開しています。この差異を知らなかった人は,マズイでしょう。なので今すぐ復習しましょう。両事案の違いについては,補足意見を参考にしながらチェックして下さい。
2012年の論文突破基礎力完成講義では当然扱いますが,2011年版では扱っていないので,告知した次第です。このブログで補足意見は確認してください。2月6日のエントリーです。なお,多数意見は以下の通り。
第1 上告代理人飯田美弥子ほかの上告理由のうち職務命令の憲法19条違反をいう部分について
1 本件は,東京都八王子市又は町田市の市立中学校の教諭であった上告人らが,卒業式又は入学式において国旗掲揚の下で国歌斉唱の際に起立して斉唱すること(以下「起立斉唱行為」という。)を命ずる旨の校長の職務命令に従わず,上記国歌斉唱の際に起立しなかったところ,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)から,事情聴取をされ,戒告処分を受け,服務事故再発防止研修を受講させられるとともに,東京都人事委員会から,上記戒告処分の取消しを求める審査請求を棄却する旨の裁決を受けたため,上記職務命令は憲法19条に違反し,上記事情聴取,戒告処分,服務事故再発防止研修及び裁決は違法であるなどと主張して,被上告人に対し,上記戒告処分及び裁決の各取消し並びに国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めている事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの。以下同じ。)38条及び学校教育法施行規則(平成19年文部科学省令第40号による改正前のもの。以下同じ。)54条の2の規定に基づく中学校学習指導要領(平成10年文部省告示第176号。平成20年文部科学省告示第99号による特例の適用前のもの。以下「中学校学習指導要領」という。)第4章第2C(1)は,「教科」とともに教育課程を構成する「特別活動」の「学校行事」のうち「儀式的行事」の内容について,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定めている。そして,同章第3の3は,「特別活動」の「指導計画の作成と内容の取扱い」において,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めている(以下,この定めを「国旗国歌条項」という。)。
(2)八王子市教育委員会の教育長は,平成15年9月22日付けで,同市立小中学校の各校長宛てに,「卒業式及び入学式等の式典における国旗掲揚及び国歌斉唱について(通達)」(以下「本件八王子市通達」という。)を発した。その内容は,上記各校長に対し,〔1〕学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施すること,〔2〕入学式,卒業式等の実施に当たっては,式典会場の舞台正面中央に国旗を掲揚し,全員が起立し国歌を斉唱するなど,所定の実施指針のとおり行うものとすること等を通達するものであった。
町田市教育委員会の教育長は,同年10月29日付けで,同市立小中学校の各校長宛てに,「入学式,卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(以下「本件町田市通達」といい,本件八王子市通達と併せて「本件各通達」という。)を発した。その内容は,上記各校長に対し,上記〔1〕及び〔2〕と同様の事項(ただし,所定の実施指針には,教職員は式典会場の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱することも含まれていた。)等を通達するものであった。
(3)X1は,平成16年3月当時,町田市立A中学校に勤務する教諭であったところ,同月15日,同校の校長から,本件町田市通達を踏まえ,平成15年度卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令を,同校長の命を受けた教頭から文書で受けた。しかし,同上告人は,上記職務命令に従わず,同月19日に行われた同校の卒業式における国歌斉唱の際に起立しなかった。
X2は,平成15年9月ないし同16年3月当時,八王子市立B中学校に勤務する教諭であったところ,同15年9月3日,同16年1月14日及び同年3月17日,同校の校長から,本件八王子市通達を踏まえ,平成15年度卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令を受けた。しかし,同上告人は,上記職務命令に従わず,同月19日に行われた同校の卒業式における国歌斉唱の際に起立しなかった。
X3は,平成16年3月ないし同年4月当時,同市立C中学校に勤務する教諭であったところ,同年3月17日,同校の校長から,本件八王子市通達を踏まえ,平成16年度入学式における国歌斉唱の際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令を受けた(以下,上告人らに対するこれらの職務命令を併せて「本件各職務命令」という。)。しかし,X3は,同上告人に対する上記職務命令に従わず,同年4月7日に行われた同校の入学式における国歌斉唱の際に起立しなかった。
(4)X1は,平成16年3月24日に約20分間,X2は,同月25日に約1時間,X3は,同年4月16日に約10分間,それぞれ都教委から上記不起立行為に関する事情聴取を受けた。
(5)都教委は,上記不起立行為がそれぞれ職務命令違反に当たり,地方公務員法29条1項1号,2号及び3号に該当するとして,平成16年4月6日,X1及びX2に対し,同年5月25日,X3に対し,それぞれ戒告処分をした。また,都教委は,同年8月,上記戒告処分を受けたことを理由として,上告人らにそれぞれ服務事故再発防止研修を受講させた。
(6)X1及びX2は,平成16年5月31日,X3は,同年7月22日,それぞれ東京都人事委員会に対し,上記戒告処分の取消しを求めて審査請求をしたが,同19年4月26日,同人事委員会から,いずれもこれを棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受けた。
3(1)ア 上告人らは,卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を拒否する理由について,天皇主権と統帥権が暴威を振るい,侵略戦争と植民地支配によって内外に多大な惨禍をもたらした歴史的事実から,「君が代」や「日の丸」に対し,戦前の軍国主義と天皇主義を象徴するという否定的評価を有しているので,「君が代」や「日の丸」に対する尊崇,敬意の念の表明にほかならない国歌斉唱の際の起立斉唱行為をすることはできない旨主張する。
上記のような考えは,我が国において「日の丸」や「君が代」が戦前の軍国主義や国家体制等との関係で果たした役割に関わる上告人ら自身の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等ということができる。
イ しかしながら,本件各職務命令当時,公立中学校における卒業式等の式典において,国旗としての「日の丸」の掲揚及び国歌としての「君が代」の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であり,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものというべきであって,上記の歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものということはできない。したがって,上告人らに対して学校の卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は,直ちに上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできないというべきである。
ウ また,本件各職務命令当時,公立中学校の卒業式等の式典における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況は上記イのとおりであり,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作として外部から認識されるものというべきであって,それ自体が特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難である。なお,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるともいえる。
したがって,本件各職務命令は,上告人らに対して,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものともいえない。
エ そうすると,本件各職務命令は,上記イ及びウの観点において,個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。
(2)もっとも,卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,教員が日常担当する教科等や日常従事する事務の内容それ自体には含まれないものであって,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり,そのように外部から認識されるものであるということができる(なお,例えば音楽専科の教諭が上記国歌斉唱の際にピアノ伴奏をする行為であれば,音楽専科の教諭としての教科指導に準ずる性質を有するものであって,敬意の表明としての要素の希薄な行為であり,そのように外部から認識されるものであるといえる。)。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,それが心理的葛藤を生じさせ,ひいては個人の歴史観ないし世界観に影響を及ぼすものと考えられるのであって,これを求められる限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。
(3)ア そこで,このような間接的な制約について検討するに,個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,当該外部的行動が社会一般の規範等と抵触する場面において制限を受けることがあるところ,その制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限を介して生ずる上記の間接的な制約も許容され得るものというべきである。そして,職務命令においてある行為を求められることが,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行動を求められることとなり,その限りにおいて,当該職務命令が個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があると判断される場合にも,職務命令の目的及び内容には種々のものが想定され,また,上記の制限を介して生ずる制約の態様等も,職務命令の対象となる行為の内容及び性質並びにこれが個人の内心に及ぼす影響その他の諸事情に応じて様々であるといえる。したがって,このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
イ これを本件についてみるに,本件職務命令に係る国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,前記のとおり,上告人らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素を含み,そのように外部から認識されるものであることから,そのような敬意の表明には応じ難いと考える上告人らにとって,その歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動となり,心理的葛藤を生じさせるものである。この点に照らすと,本件各職務命令は,一般的,客観的な見地からは式典における慣例上の儀礼的な所作とされる行為を求めるものであり,それが結果として上記の要素との関係においてその歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることとなるという点で,その限りで上告人らの思想及び良心の自由についての前記(2)の間接的な制約となる面があるものということができる。
他方,学校の卒業式や入学式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。法令等においても,学校教育法は,中学校教育の目標として国家の現状と伝統についての正しい理解と国際協調の精神の涵養を掲げ(同法36条1号,18条2号),同法38条及び学校教育法施行規則54条の2の規定に基づき中学校教育の内容及び方法に関する全国的な大綱的基準として定められた中学校学習指導要領も,学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗国歌条項を定めているところであり,また,国旗及び国歌に関する法律は,従来の慣習を法文化して,国旗は日章旗(「日の丸」)とし,国歌は「君が代」とする旨を定めている。そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地方公務員法30条,32条)に鑑み,公立中学校の教諭である上告人らは,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地方公務員法に基づき,中学校学習指導要領に沿った式典の実施の指針を示した本件各通達を踏まえて,その勤務する当該学校の各校長から学校行事である卒業式等の式典に関して本件各職務命令を受けたものである。これらの点に照らすと、公立中学校の教諭である上告人らに対して当該学校の卒業式又は入学式という式典における慣例上の儀礼的な所作として国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は,中学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものであるということができる。
以上の諸事情を踏まえると,本件各職務命令については,前記のように上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。
(4)以上の諸点に鑑みると,本件各職務命令は,上告人らの思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である。
前者では,「間接的制約である」との認定すらなく,その上で論理を展開し,後者では,「直接的な制約ではない」が,「間接的な制約はある」,という前提でロジックを展開しています。この差異を知らなかった人は,マズイでしょう。なので今すぐ復習しましょう。両事案の違いについては,補足意見を参考にしながらチェックして下さい。
2012年の論文突破基礎力完成講義では当然扱いますが,2011年版では扱っていないので,告知した次第です。このブログで補足意見は確認してください。2月6日のエントリーです。なお,多数意見は以下の通り。
第1 上告代理人飯田美弥子ほかの上告理由のうち職務命令の憲法19条違反をいう部分について
1 本件は,東京都八王子市又は町田市の市立中学校の教諭であった上告人らが,卒業式又は入学式において国旗掲揚の下で国歌斉唱の際に起立して斉唱すること(以下「起立斉唱行為」という。)を命ずる旨の校長の職務命令に従わず,上記国歌斉唱の際に起立しなかったところ,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)から,事情聴取をされ,戒告処分を受け,服務事故再発防止研修を受講させられるとともに,東京都人事委員会から,上記戒告処分の取消しを求める審査請求を棄却する旨の裁決を受けたため,上記職務命令は憲法19条に違反し,上記事情聴取,戒告処分,服務事故再発防止研修及び裁決は違法であるなどと主張して,被上告人に対し,上記戒告処分及び裁決の各取消し並びに国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めている事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの。以下同じ。)38条及び学校教育法施行規則(平成19年文部科学省令第40号による改正前のもの。以下同じ。)54条の2の規定に基づく中学校学習指導要領(平成10年文部省告示第176号。平成20年文部科学省告示第99号による特例の適用前のもの。以下「中学校学習指導要領」という。)第4章第2C(1)は,「教科」とともに教育課程を構成する「特別活動」の「学校行事」のうち「儀式的行事」の内容について,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定めている。そして,同章第3の3は,「特別活動」の「指導計画の作成と内容の取扱い」において,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めている(以下,この定めを「国旗国歌条項」という。)。
(2)八王子市教育委員会の教育長は,平成15年9月22日付けで,同市立小中学校の各校長宛てに,「卒業式及び入学式等の式典における国旗掲揚及び国歌斉唱について(通達)」(以下「本件八王子市通達」という。)を発した。その内容は,上記各校長に対し,〔1〕学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施すること,〔2〕入学式,卒業式等の実施に当たっては,式典会場の舞台正面中央に国旗を掲揚し,全員が起立し国歌を斉唱するなど,所定の実施指針のとおり行うものとすること等を通達するものであった。
町田市教育委員会の教育長は,同年10月29日付けで,同市立小中学校の各校長宛てに,「入学式,卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(以下「本件町田市通達」といい,本件八王子市通達と併せて「本件各通達」という。)を発した。その内容は,上記各校長に対し,上記〔1〕及び〔2〕と同様の事項(ただし,所定の実施指針には,教職員は式典会場の指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱することも含まれていた。)等を通達するものであった。
(3)X1は,平成16年3月当時,町田市立A中学校に勤務する教諭であったところ,同月15日,同校の校長から,本件町田市通達を踏まえ,平成15年度卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令を,同校長の命を受けた教頭から文書で受けた。しかし,同上告人は,上記職務命令に従わず,同月19日に行われた同校の卒業式における国歌斉唱の際に起立しなかった。
X2は,平成15年9月ないし同16年3月当時,八王子市立B中学校に勤務する教諭であったところ,同15年9月3日,同16年1月14日及び同年3月17日,同校の校長から,本件八王子市通達を踏まえ,平成15年度卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令を受けた。しかし,同上告人は,上記職務命令に従わず,同月19日に行われた同校の卒業式における国歌斉唱の際に起立しなかった。
X3は,平成16年3月ないし同年4月当時,同市立C中学校に勤務する教諭であったところ,同年3月17日,同校の校長から,本件八王子市通達を踏まえ,平成16年度入学式における国歌斉唱の際に起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令を受けた(以下,上告人らに対するこれらの職務命令を併せて「本件各職務命令」という。)。しかし,X3は,同上告人に対する上記職務命令に従わず,同年4月7日に行われた同校の入学式における国歌斉唱の際に起立しなかった。
(4)X1は,平成16年3月24日に約20分間,X2は,同月25日に約1時間,X3は,同年4月16日に約10分間,それぞれ都教委から上記不起立行為に関する事情聴取を受けた。
(5)都教委は,上記不起立行為がそれぞれ職務命令違反に当たり,地方公務員法29条1項1号,2号及び3号に該当するとして,平成16年4月6日,X1及びX2に対し,同年5月25日,X3に対し,それぞれ戒告処分をした。また,都教委は,同年8月,上記戒告処分を受けたことを理由として,上告人らにそれぞれ服務事故再発防止研修を受講させた。
(6)X1及びX2は,平成16年5月31日,X3は,同年7月22日,それぞれ東京都人事委員会に対し,上記戒告処分の取消しを求めて審査請求をしたが,同19年4月26日,同人事委員会から,いずれもこれを棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受けた。
3(1)ア 上告人らは,卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を拒否する理由について,天皇主権と統帥権が暴威を振るい,侵略戦争と植民地支配によって内外に多大な惨禍をもたらした歴史的事実から,「君が代」や「日の丸」に対し,戦前の軍国主義と天皇主義を象徴するという否定的評価を有しているので,「君が代」や「日の丸」に対する尊崇,敬意の念の表明にほかならない国歌斉唱の際の起立斉唱行為をすることはできない旨主張する。
上記のような考えは,我が国において「日の丸」や「君が代」が戦前の軍国主義や国家体制等との関係で果たした役割に関わる上告人ら自身の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等ということができる。
イ しかしながら,本件各職務命令当時,公立中学校における卒業式等の式典において,国旗としての「日の丸」の掲揚及び国歌としての「君が代」の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であり,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものというべきであって,上記の歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものということはできない。したがって,上告人らに対して学校の卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は,直ちに上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできないというべきである。
ウ また,本件各職務命令当時,公立中学校の卒業式等の式典における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況は上記イのとおりであり,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作として外部から認識されるものというべきであって,それ自体が特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難である。なお,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるともいえる。
したがって,本件各職務命令は,上告人らに対して,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものともいえない。
エ そうすると,本件各職務命令は,上記イ及びウの観点において,個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。
(2)もっとも,卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,教員が日常担当する教科等や日常従事する事務の内容それ自体には含まれないものであって,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり,そのように外部から認識されるものであるということができる(なお,例えば音楽専科の教諭が上記国歌斉唱の際にピアノ伴奏をする行為であれば,音楽専科の教諭としての教科指導に準ずる性質を有するものであって,敬意の表明としての要素の希薄な行為であり,そのように外部から認識されるものであるといえる。)。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,それが心理的葛藤を生じさせ,ひいては個人の歴史観ないし世界観に影響を及ぼすものと考えられるのであって,これを求められる限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。
(3)ア そこで,このような間接的な制約について検討するに,個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,当該外部的行動が社会一般の規範等と抵触する場面において制限を受けることがあるところ,その制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限を介して生ずる上記の間接的な制約も許容され得るものというべきである。そして,職務命令においてある行為を求められることが,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行動を求められることとなり,その限りにおいて,当該職務命令が個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があると判断される場合にも,職務命令の目的及び内容には種々のものが想定され,また,上記の制限を介して生ずる制約の態様等も,職務命令の対象となる行為の内容及び性質並びにこれが個人の内心に及ぼす影響その他の諸事情に応じて様々であるといえる。したがって,このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
イ これを本件についてみるに,本件職務命令に係る国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,前記のとおり,上告人らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素を含み,そのように外部から認識されるものであることから,そのような敬意の表明には応じ難いと考える上告人らにとって,その歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動となり,心理的葛藤を生じさせるものである。この点に照らすと,本件各職務命令は,一般的,客観的な見地からは式典における慣例上の儀礼的な所作とされる行為を求めるものであり,それが結果として上記の要素との関係においてその歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることとなるという点で,その限りで上告人らの思想及び良心の自由についての前記(2)の間接的な制約となる面があるものということができる。
他方,学校の卒業式や入学式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。法令等においても,学校教育法は,中学校教育の目標として国家の現状と伝統についての正しい理解と国際協調の精神の涵養を掲げ(同法36条1号,18条2号),同法38条及び学校教育法施行規則54条の2の規定に基づき中学校教育の内容及び方法に関する全国的な大綱的基準として定められた中学校学習指導要領も,学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗国歌条項を定めているところであり,また,国旗及び国歌に関する法律は,従来の慣習を法文化して,国旗は日章旗(「日の丸」)とし,国歌は「君が代」とする旨を定めている。そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地方公務員法30条,32条)に鑑み,公立中学校の教諭である上告人らは,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地方公務員法に基づき,中学校学習指導要領に沿った式典の実施の指針を示した本件各通達を踏まえて,その勤務する当該学校の各校長から学校行事である卒業式等の式典に関して本件各職務命令を受けたものである。これらの点に照らすと、公立中学校の教諭である上告人らに対して当該学校の卒業式又は入学式という式典における慣例上の儀礼的な所作として国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は,中学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものであるということができる。
以上の諸事情を踏まえると,本件各職務命令については,前記のように上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。
(4)以上の諸点に鑑みると,本件各職務命令は,上告人らの思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である。
よく考えたら,第一次名京阪遠征は明日からだ。明日は名古屋で明後日が京都,大阪の順です。相手して下さい(笑)レジュメも完成したし,あとは喋くり倒すだけ。
2011年論文突破基礎力完成講義の復習ポイント講義第4回では,法学教室付録の「判例セレクトⅠ 刑法」の判例解説を付加しました。レジュメ等は出していないので,各人で判例セレクトⅠを参照して下さい。まぁ,完全にオマケですが(笑),時期的にやった方が良いかなと思い放り込んでみました。
今週末18日&19日の名京阪限定説明会では,第6回刑法問題の一部を利用した判例学習法の確認と(フレーム講義のレジュメを一部使用),第2回刑事訴訟法の問題を利用した「問題文読み方検定」もレジュメに放り込んでおきました!あと,「べからず集」とか「無内容な言葉たち」,「科目別・論文・短答別の判例学習の目的一覧」などもまとめてみました。
これからローに進学される方,これから司法試験対策を本格化させる方には,かなりコンパクトに有益な情報を伝えられると思います!というか,知らないと駄目です!(笑)。生講義限定なので是非来て下さいね==☆
これからローに進学される方,これから司法試験対策を本格化させる方には,かなりコンパクトに有益な情報を伝えられると思います!というか,知らないと駄目です!(笑)。生講義限定なので是非来て下さいね==☆
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120215-00000047-mai-soci
郵便事業会社の「ゆうパック」の小包276個を配達せずに自宅に放置したとして、京都府警下鴨署は15日、京都市左京区岡崎北御所町、無職、鈴木達也容疑者(33)を偽計業務妨害容疑で逮捕した。鈴木容疑者は、配達業務を請け負う同市右京区の運送会社の元従業員で、「配達が面倒だった」と容疑を認めているという。
逮捕容疑は、昨年8月16日~11月17日、小包を自宅に放置しているのに、勤務先に配達が完了したと虚偽の報告をし、業務を妨害したとされる。
「見えない」から「威力」じゃなくて「偽計」の方でと。「妨害」の内容の認定もきちんとしています。ニュースも短答対策になりますね(笑)
郵便事業会社の「ゆうパック」の小包276個を配達せずに自宅に放置したとして、京都府警下鴨署は15日、京都市左京区岡崎北御所町、無職、鈴木達也容疑者(33)を偽計業務妨害容疑で逮捕した。鈴木容疑者は、配達業務を請け負う同市右京区の運送会社の元従業員で、「配達が面倒だった」と容疑を認めているという。
逮捕容疑は、昨年8月16日~11月17日、小包を自宅に放置しているのに、勤務先に配達が完了したと虚偽の報告をし、業務を妨害したとされる。
「見えない」から「威力」じゃなくて「偽計」の方でと。「妨害」の内容の認定もきちんとしています。ニュースも短答対策になりますね(笑)
以前,未修1年生の人が,マーキング講義やフレーム講義を受講しているのを知りその意識の高さに驚いた事があるが,最近は,ロー進学前から,論文突破基礎力完成講義を全科目受講したり,短答マスターを受講している人がいるのを知り更に驚いた。もちろん良い意味での驚きであり,ナイスジャッジだと思う。危機管理ができているし問題意識も高い。「合格する」,というミッションを遂行しているという自覚が高い証拠である。
司法試験は情報戦である,と言うのは,今に始まったことではないが,益々激化しているのは事実である。そして,それに比例して,個人差も恐ろしく拡大してきている。同じ未修の人でも意識の高い人は,ロー進学前のこの時期から受験指導校を利用する人もいれば,2振した夏以降に漸く重い腰を上げ,受験指導校に来始める人もいる。同じ未修という属性でも,約5年のタイムラグが生じているということになる。5年である!オリンピックが1巡してしまう年数だ。
このような情報感度の格差が生じる理由は,正直イマイチ分からないし,理解できない。厳しいことを言うようだが,もし自分が合格率の低いロースクールに通っていたら,少しは焦るべきではなかろうか。自分の人生を大事にすべきだと思うのである。何故平気でいられるのか,という話である。何となく,合格者の再現答案を読んで,「まぁ,この程度なら大丈夫だろう」,とタカをくくってしまうのだろうか。
まずは具体的に「ゴール」を知り,「現在の自分の身の丈」を確認することから始めるべきである。今自分はどういう状況にあるのか。これが具体的に把握できていなければ,「正しい受験対策」を取りようが無い。
司法試験は情報戦である,と言うのは,今に始まったことではないが,益々激化しているのは事実である。そして,それに比例して,個人差も恐ろしく拡大してきている。同じ未修の人でも意識の高い人は,ロー進学前のこの時期から受験指導校を利用する人もいれば,2振した夏以降に漸く重い腰を上げ,受験指導校に来始める人もいる。同じ未修という属性でも,約5年のタイムラグが生じているということになる。5年である!オリンピックが1巡してしまう年数だ。
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まずは具体的に「ゴール」を知り,「現在の自分の身の丈」を確認することから始めるべきである。今自分はどういう状況にあるのか。これが具体的に把握できていなければ,「正しい受験対策」を取りようが無い。
今週末の18日が名古屋,19日が京都,大阪でオープンスクールをやりますが,3月3日・4日も京都,名古屋,大阪の順番で別のオープンスクールをやりに行きます。この時は個別カウンセリングの時間も確保しています。
毎春,名京阪には遠征に出ているので,遠征の話が出てくると「うーん,春だなぁ」,というのを感じます。ま,今年の3月遠征はお雛様の時期で,ちょいと早いですけど。3月14日には東京で講座説明会ですし,説明会が続く季節です。講師業を営む者としては,「新シーズンが始まったな」と感じる季節でもあります。
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