憲法の教室使用不許可の方ですが,こっちの方が何かと難しいですね。「大学の自治」の書きようで差がつくところでしょう。大学の自治が,表現の自由+学問の自由に対し,対立的な立場で立ち現われている事例です。「政治的目的での利用を認めない理由」をどう考えるかで,大学側の処置の合憲性に影響が出る気がします。
第4回本試験でも問われましたが,「大学の自治」は,時の権力からの内部介入を防ぐためのものです。政治的目的があれば,もはやそれは純粋な学問の場ではなく,広場などの政治集会と変らないではないか,という東大ポポロ事件アプローチが使えます。
講演会のテーマは,「B県」における財政のあり方を巡る議論に関るもので,「B県」知事の施策に反対派の政治家と賛成派の政治家が講演者として招かれる予定でした。そして,問題の大学は「B県立」大学なんですよね。となると,「B県」による政治介入を受けやすい状況にあるとの評価も十分可能ではないのか,と思います。そういう意味で「学問としての場」と「政治の場」を切り分けることで,「大学の自治」を守ろうとしたのではないか,との評価はできそうです。
他方で,本件講演会はそのような「政治集会」とでも言うべきものなのかどうか,は問題になります。賛成派と反対派の双方に配慮しており,特定の政治的立場に立った講演会と言う名の「政治集会」とまでは言えないのではないか。
そもそも単に政治家をゲストスピーカーとして呼んだら,「政治色が出る」というものではないでしょう。現に諸外国の元首・閣僚クラスを大学に招いて講演会を開く,というのはごく普通に行われています。本件講演会が,「政治的目的」のものなのかどうか,どう評価するのかが問題になるでしょう。
デモ行進の不許可処分を違憲とすれば,大学側の「デモ行進が県条例に違反するから」というのはそもそも理由足りえないので,結論の整合性には気をつけてください。仮に不許可処分が合憲だとしても,デモ行進の違法性が本件講演会の性質にどのような影響を及ぼすのかは別の話です。特に「デモ行進の違法理由」が本件講演会に当てはまるのかも疑問です。
Aのインタビューについても,学生が「県政批判すべきではない」,ということを意味しますが,このような考え方自体,問題があるのではないか。インタビューに答えることが本県講演会の「政治化」を意味するのかどうか。昭和女子大事件のような,「学風」の問題はB県立大学ではなさそうです(現に当初デモ行進は大学側も認容していたと思われる)。
あと経済学部のゼミ主催の方は,同様のテーマであるにも関らず許可しています。この「差別的な取扱い」をどう評価するも問題になりえます。14条を大展開するのかどうかは悩ましいです。14条の問題として議論する場合の理由付け,ロジックが,表現の自由;学問の自由に対する制約として論じる場合と内容が異ならないのであれば,大展開すべきではないでしょう。第5回で25条は書くけど14条は書かない,というのと同じ理由です。