>総合的なもの作りのアップルに対し、分業特化型のソニー。日本の技術力は世界最高水準にありながら、大きな物語の中で製品を位置づけることができなかったことが、現在のアップルとソニーの現状に現れている。
という記事がありました。同じようなことは色々なところで指摘されています。要は,「何故物を作るのか?売ろうとするのか?」という,目的意識の違いにあるのだと思います。ジョブズ氏は生前,「アップルは物を売るのではない」と再三協調し,プレゼンにおいても「生活がこう変る」(=どうだ,楽しそうだろう?)というコンセプトで説明していました。「この商品を買うと,あなたの生活はこう変る」という売り方を本当に徹底していたわけです。つまり,アップルは物を売るのではなく,ライフスタイルを売っていたわけです。
日本企業は,残念ながらその発想が無かった。80年代に文字通り世界を席巻した時の成功体験から未だに抜け出せない。その成功体験とは,「技術力世界一」というもの。技術力で他の追随を許さない,スマートな商品を売りにし,アメリカ企業を窮地に追い込んだ。その成功体験から抜け出せないまま,20年もの時間を無駄に費やしてしまった。まさに「呪縛」です。
SONYも当初は,新しい生活スタイルを売っていたはずです。ウォークマンなんかがその典型である。しかも「技術力世界一」というオマケ付き。これで勝てないわけがない。しかし,残念ながらその後が続かず,ジリ貧となってしまった。技術力も大差がないレベルまで来てしまった。発想の転換が必要だったのに,それどころか,液晶TVが典型例だが,「そんなデカイサイズ,どの家で使うのか?」という100インチを軽く超えるサイズのものを,技術力の誇示,価格競争力の維持(一番の売れ筋サイズは,最低賃金の問題で勝てない韓国企業に駆逐されてしまうから)の観点から主力商品として作ろうとした。シャープや松下がTV事業で沈した理由の一つが正にこれ。要は,消費者の目線で製品を作ろうとしなかったから負けたのである。自分達が「勝負できる商品」,「勝負したい商品」を売ろうとしているのです。
なので,「日本の企業はアイフォンのような商品が作れない」なんて言っているうちは当分駄目でしょう。目の付け所が「商品」から離れていないからです。大事なのは,消費者が,「アッ!」というような「ライフスタイル」を提言できるかどうかです。売る製品はその実現手段に過ぎないということに気が付かないと,成熟しきった先進国の消費者相手にその魅力をアピールすことはできない時代になったのです。