きのうの東博探訪記も書き始めたばかりだというのに、きょうは富士山の見える美術館に行ってきました。
出かけた先は、もちろん、こちらの記事で決意表明した「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」展@神奈川県立近代美術館 葉山 デス
かなり交通の便のわるいところで(最寄り駅・JR逗子駅 or 京急・新逗子駅から路線バスで約18分
)、私はクルマ
で行ったものですから、ガソリン代
はかかる、通行料
はかかるで、交通費だけでバカにならないのですが、、、、それでも、行って良かったぁ~
とつくづく思っています。
まさしく、至福のひとときでした
とりわけ、ベン・シャーンの死後に発見されたという素描がワンサカ展示されていた第2室は、このままこの部屋に居残りしたい
と思うほど。
こちらで書いた「Ounce Dice Trice」のための素描もありました
なんだか、ハンドルネームだけ知っていた人とオフ会で初めて会ったような気分でした。
MoMAやWhitney Musiumを始め、個人蔵の作品を含めて、これほど広範囲に集められたベン・シャーンの作品が一堂に会するとは、いやはや、日本では空前絶後のベン・シャーン展だと思いました。
画集や教科書でしか見たことがなかった「解放(Liberation)」(生で観たら、思っていた以上にステキな作品でした)とか、「マルテの日記」から「一篇の詩の最初の言葉」とかが観られて、私にとっては涙もの…
そんな粒ぞろいの作品のなかで、きょう一番の作品はこれかな?
「至福(Beatitude)」.。
しっかりと実った麦を手にとる無表情な農民を描いた作品です。
麦の茎の隙間から見える農民の手が、ベン・シャーンしています
もう3年近く前、私は「ベン・シャーンが描く手と足」という記事で、
ベン・シャーンが描く大きな手は、掴んだ(掴みかけた)幸せを決して手放さないという強い意志を示しているようです。また、大きな足(こちらの例は省略)は、大地を踏みしめて生きていく意志を示しているように見えます。
と書きました。
きょう、「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」展を観て、改めて、ベン・シャーンの神髄は手にありと再認識しました。
それを痛感したのは、「サッコとヴァンゼッティ事件」シリーズのこの一点
「四人の検事」と題する作品で、サッコとヴァンゼッティを告訴した検事の方々を描いたもの。
彼らの手、、、、完全に死んでいます…
ベン・シャーンの作品によく登場する、生きる意志を感じさせる大きな手と対称的に、普通の大きさですし、何よりも、まったく生気がありません
ベン・シャーンにとって、この4人の検事は、生身の人間ではないと感じられたのでしょう。
私なりのベン・シャーンの作品に対する認識は間違っていないような気がします。
ベン・シャーンの作品をご覧になる機会がありましたら、是非、手にご注目くださいませ。
【追記】12月24日の記事「ここに来て、急に年末らしくなってきた」で書きましたように、1月15日のNHK日曜美術館は、「静かなるプロテスト~反骨の画家ベン・シャーン~」です。
また、芸術新潮の1月号の特集も「ベン・シャーン 『世直し画家』の真実」
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芸術新潮 2012年 01月号 [雑誌] 価格:¥ 1,400(税込) 発売日:2011-12-24 |
神奈川県立近代美術館 葉山 での「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」展は1月29日で終わってしまいますが、その後、名古屋市美術館(2012/2/11~3/25)、岡山県立美術館(2012/4/8~5/20)、そして、この展覧会にたくさんの収蔵作品を出品している福島県立美術館(2012/6/3~7/16)を巡回します。
お近くで開催の節は、是非お出かけくださいませ
右の画像は「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」の図録(2,200円)
かなり満足できる図録ですゾ
(2012/01/08 07:41)
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