新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

「至福」に至福のひとときを味わった

2012-01-07 21:56:56 | 美術館・博物館・アート

きのうの東博探訪記も書き始めたばかりだというのに、きょうは富士山の見える美術館に行ってきました。

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出かけた先は、もちろん、こちらの記事決意表明した「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」展@神奈川県立近代美術館 葉山 デス

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かなり交通の便のわるいところで(最寄り駅・JR逗子駅 or 京急・新逗子駅から路線バス約18分)、私はクルマで行ったものですから、ガソリン代はかかる、通行料はかかるで、交通費だけでバカにならないのですが、、、、それでも、行って良かったぁ~ とつくづく思っています。

まさしく、至福のひとときでした

とりわけ、ベン・シャーンの死後に発見されたという素描がワンサカ展示されていた第2室は、このままこの部屋に居残りしたいと思うほど。

こちらで書いた「Ounce Dice Trice」のための素描もありました
なんだか、ハンドルネームだけ知っていた人とオフ会で初めて会ったような気分でした。

MoMAWhitney Musiumを始め、個人蔵の作品を含めて、これほど広範囲に集められたベン・シャーンの作品が一堂に会するとは、いやはや、日本では空前絶後のベン・シャーン展だと思いました。

画集や教科書でしか見たことがなかった「解放(Liberation)」(生で観たら、思っていた以上にステキな作品でした)とか、「マルテの日記」から「一篇の詩の最初の言葉」とかが観られて、私にとっては涙もの…

そんな粒ぞろいの作品のなかで、きょう一番の作品はこれかな?

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至福(Beatitude)」.。

しっかりと実った麦を手にとる無表情な農民を描いた作品です。
麦の茎の隙間から見える農民のが、ベン・シャーンしています

もう3年近く前、私は「ベン・シャーンが描く手と足」という記事で、

ベン・シャーンが描く大きな手は、掴んだ(掴みかけた)幸せを決して手放さないという強い意志を示しているようです。また、大きな足(こちらの例は省略)は、大地を踏みしめて生きていく意志を示しているように見えます。

と書きました。

きょう、「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」展を観て、改めて、ベン・シャーンの神髄は手にありと再認識しました。
それを痛感したのは、「サッコとヴァンゼッティ事件」シリーズのこの一点

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四人の検事」と題する作品で、サッコとヴァンゼッティを告訴した検事の方々を描いたもの。

彼らの、、、、完全に死んでいます

ベン・シャーンの作品によく登場する、生きる意志を感じさせる大きな手と対称的に、普通の大きさですし、何よりも、まったく生気がありません

ベン・シャーンにとって、この4人の検事は、生身の人間ではないと感じられたのでしょう。

私なりのベン・シャーンの作品に対する認識は間違っていないような気がします。

ベン・シャーンの作品をご覧になる機会がありましたら、是非、にご注目くださいませ。

【追記】12月24日の記事「ここに来て、急に年末らしくなってきた」で書きましたように、1月15日NHK日曜美術館は、「静かなるプロテスト~反骨の画家ベン・シャーン~」です。

また、芸術新潮の1月号の特集も「ベン・シャーン 『世直し画家』の真実

芸術新潮 2012年 01月号 [雑誌] 芸術新潮 2012年 01月号 [雑誌]
価格:¥ 1,400(税込)
発売日:2011-12-24

120107_2_04う~む、、、ベン・シャーン好きの私にはうれしい年初です

神奈川県立近代美術館 葉山 での「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」展は1月29日で終わってしまいますが、その後、名古屋市美術館(2012/2/11~3/25)、岡山県立美術館(2012/4/8~5/20)、そして、この展覧会にたくさんの収蔵作品を出品している福島県立美術館(2012/6/3~7/16)を巡回します。

お近くで開催の節は、是非お出かけくださいませ

右の画像は「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト-写真、版画、グラフィックアート-」の図録(2,200円)
かなり満足できる図録ですゾ

(2012/01/08 07:41)

後日談:2012/01/15 家と近所だけで過ごした週末 
辛い話:2012/01/27 ラッキー・ドラゴンとラッキー・アイランド

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東博に初もうで(その1)

2012-01-07 09:51:55 | 美術館・博物館・アート

土偶ストラップをget!」のつづきは、順番を前後させて、 特別展「北京故宮博物院200選」から始めます。

120107_1_01 私が本館から渡り廊下を通って平成館に入り、「日本の考古」を観てから(そして土偶ストラップgetしてから)、特別展会場に向かうエスカレーター下へ歩を進めますと、平成館の外に行列
どうやら入場規制を行っているようです。
本館からやってきた私は、この行列に並ぶことなく、すんなりとパスポートにスタンプを捺していただき、入場することができました。これって裏技か?

120107_1_03 平成館の外で並んで待っていた人たちに申し訳ない気持ちを抱きつつ、エスカレーターを上がって行きますと、そこにはまた行列ができていました

この行列は何?

不思議なことに、この行列、入場口や音声ガイド機の貸し出しに続いているのではありません。
どうやら、「神品」なるものが冠されている「清明上河図」を観るために並んでいるようです。
行列の最後尾に掲げられていた掲示によれば、「180分待ち」だとか (私が東博を後にした14:00頃には「90分待ち」になっていました)
行列が嫌い」と公言して憚らない私(こちらの記事をご参照)としましては、完全に気持ちが萎えてしまいました

私が行った時点(10:30頃)の行列の様子は下図のとおりです。

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この行列に並ばなくても、行列の後から柵越しに「清明上河図」を覗き見ることもできます。ただ、ほとんど見えませんが…

この「清明上河図」は別格としても、「第一部 故宮博物院の至宝-皇帝たちの名品-」の冒頭の書画の前には観客がびっしりと張り付いていて、もともと書に対する興味が薄い私はますます気が萎えるのでありました。
隙間を埋め尽くすことに精力が傾けられたのではないかとまで思うほど鑑賞印がベタベタ捺された作品群を遠目から眺めながら、こりゃ、来るんじゃなかったかな…とまで思いました。

もともと、北京の故宮博物院の「宝物」は、国民党政府が、日本軍、そしてその後は共産党軍との戦いから宝物を疎開させる過程で、最初にその選からもれたもの、いわば「第一次予選敗退組」だし…と、さほど食指を動かされる展覧会ではありませんでしたし…

それでも、試練の書画コーナーを通り過ぎてからは、なかなか楽しめました

皇帝や皇后の装束とか、巨大なとか、皇帝の巨大な肖像画とか、逆に、ごく普通の湯飲み茶碗っぽいのだけれど何ともステキな「青花唐草文杯」とか、おぉと思う作品もありました。

とりわけ印象に残ったのは、故宮内の皇帝執務用御殿:養心殿(私も行ったはずなのですが写真がない…)にある乾隆帝の個人スペース「三希堂」の再現コーナーでした。

三希堂」といえば、さまよった故宮の宝物たちの(現時点での)最終地となった台湾の故宮博物院点心レストランの名前が「三希堂」でした。
私も三希堂で食事しましたっけ…。

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話を北京の三希堂に戻します。この部屋は、こちらのサイトの記事を転載しますと、

養心殿のなかでも、東側の東暖閣とならんで有名なのは西側の三希堂です。三希堂は、風流皇帝、乾隆帝が天下の名筆とされる王羲之の「快雪時晴帖」、王献之の「中秋帖」、さらに王 の「伯遠帖」の三帖、つまり「三希」を手に入れた喜びを込めて名づけた書斎です。
三希堂は北側の次の間と主室をあわせても12平方メートル、南の窓に面している主室はわずか5平方メートルに過ぎませんが、乾隆帝はこの小さな、小さな書斎をこよなく愛し、四十数年にわたって、冬になるとここに入り、書斎の一角に置かれた紅木(マホガニー)の箱から王羲之らの書を取りだし観賞し、また詩を作って楽しみました。三希堂の壁には、乾隆帝御題の「三希堂」という横額と「懐抱観古今、深心託豪素」という対聯が掛けられています。
南側は間口いっぱいの一枚のガラス窓で、窓ごしに庭を望むことができます。暖かい陽光の差し込むこの質朴な小さな書斎に一人静かに座るときが、乾隆帝にとって最高のひとときだったのかも知れません。

だそうです。
実物大に再現された三希堂は、ホントに小さな部屋。あれほど広大かつ壮麗な紫禁城の中で、こんな狭い部屋で過ごす時間が乾隆帝にとって至福の時だったなんて、なんだか子どもの頃、押し入れの中に潜り込んで遊んだことを思い出します。
もしかして、この特別展「北京故宮博物院200選」の一番の見どころは再現された三希堂だったかもしれません。

   

ここで今後特別展「北京故宮博物院200選」を観に行こうとされている方へアドバイス。

特別展「北京故宮博物院200選」を観る前に、本館1階特別5室で随時上映されている「故宮VR『《紫禁城・天子の宮殿》-北京故宮博物院200選 特別版』」を観ることをお薦めします
簡単な予習として、最適なプログラムだと思いました。画面は巨大かつ精細ですし、単発モノとしても充分に楽しめますよん。
上にも書きましたように、本館から渡り廊下を通って平成館に行けば、入場規制も避けられますしネ

もうひとつ。明日(1月8日)のNHK 日曜美術館は、「皇帝たちが憧れた悠久の美~北京故宮の至宝~」としてこの展覧会が取り上げられます。
番組を観て予習するか、それとも、放映後は必至混雑激化を避けて今日行くか、思案のしどころですぞ

つづき:2012/01/08 東博に初もうで(その2)

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