「東博に初もうで(その3)」のつづきを書きます。実は、「その3」はきのうのうちに書き上げるつもりにしていたのですが、時間切れになってしまい、今朝
、さらに手を入れて
アップした次第です(写真
のファイル名が「120113_1_xx.jpg」なのはそれゆえ)。
今年の「新年特別公開」は、「東京国立博物館140周年」と華々しく冠が被せられている割には、「秋冬山水図」も「風神雷神図屏風」も「冨嶽三十六景・凱風快晴」も「古今和歌集(元永本)」も、去年の「新年特別公開」と当日の他の展示で拝見したものでしたし(昨年の記事はこちら)、「賢愚経断簡(大聖武)」や「一休宗純墨跡『峯松』」も別の機会に東博で何度か拝見していましたので、初めて観た作品を中心に紹介しましょう。
なんて書きながら、最初に載せたのは一休さんの書「峯松」
小学校だか中学校の国語の教科書(だったか習字の副読本
だったか)に、一休さんの奔放な書が載っていて、当時の私にはヘタクソとしか思えませんでした。
一休さんの書を教科書に載せた編集者は、書に劣等感を持つ子どもたちを元気づけようとしたのでしょうか?
いくらなんでもよほどの審美眼を持っていない限り、中学生には鑑賞なんてできませんって
この記事の最初に載せた写真は、この日の東博本館のエントランスホールを写したもので、大階段の右側に、東博の嚆矢とされる湯島聖堂博覧会を描いた錦絵「古今珍物集覧」の垂れ幕、左側に鳳凰の絵の垂れ幕が下がっていました。
この鳳凰の絵の元ネタは何なのだろうかと思っていたところ、それが展示されていました。
友禅染掛幅 桐鳳凰図
江戸時代・19世紀
鳳凰は中国において瑞祥として知られ桐樹に棲むと言われてきた。日本においても桐と鳳凰の組み合わせは吉祥模様として好まれた。絵画的な図様を友禅染で染めた掛幅。表装部分もすべて友禅染である。江戸時代後期には仏画や花鳥図なども友禅染で制作された。
とあります。
てっきり、普通に肉筆画を表装した掛け軸かと思ったら、絵も表装もすべて友禅染
驚きました…
驚いたといえば、こちらの「十組盤(とくみばん)のうち鷹狩香」の細工の細かさにも驚かされました。
「十組盤」は以前にも拝見したことがありました。これは、こちらの記事に書きましたように、組香(香を嗅ぎ分ける遊び)の成績をサイコロの目の代わりにした双六のようなもの。
この「鷹狩香」は、盤の奥に置かれた鷹匠が、組香の結果に応じて、手前の獲物に近づいていくというものものっぽい。
10人の鷹匠たちが、しっかりとつくり分けられているし、
獲物たちもすべて違う種類です。
それぞれのコマを、単独としてフィギュアとして楽しめます
ところで、ここでもタンチョウが獲物になっている…(こちらの記事をご参照方)
江戸時代後期の絵師、鳥文斎栄之(ちょうぶんさい・えいし)の「隅田川図巻」が、意表を突いて楽しい
隅田川での舟遊びにやってきたのは、七福神のうち、大黒天・恵比寿・福禄寿のお三方。
姐さんが持っている箱には「大黒屋」と書かれていますから、もしかするとこんな会話があるのかもしれません。
大黒天:うちの店に行こうじゃないか
恵比寿:弁財天に怒られないかな?
福禄寿:大丈夫、大丈夫、ちょっとだけだから。
そして男3人が隅田川の舟遊びで行き着く先と言えば、、、
当然のごとく吉原でして、もう恵比寿さんはノリノリです
常々「書と茶の湯は苦手」と書いている私ですが、こちらの作品は、飾る場所があればお持ち帰りしたいと思いました。
江戸時代中期の書家・武術家の三井親和(みつい・しんな)による「詩書屏風」。
説明には、
親和は、書家・武術家。細井広沢(こうたく)に師事し、中国の文徴明風の書を能くした。ことに篆書は染物に用いられ、親和染めの名前で流行した。この詩書屏風は、右から数えて奇数の各扇に様々な篆書の書風で大書して、偶数の各扇には行書で揮毫している。
とあります。
で、行書で何が書かれているのかといいますと、英語の説明によれば、
the works of Chinese poets and Wang Wei
だそうですから、王維(Wang Wei)ほかの漢詩のようですが、よく判りません
最後に根付をご紹介しましょう。
総合文化展の根付の展示の中で一番気に入ったのはこちら
ピントが甘くて申し訳ない…
「秀親」の銘が刻まれた「唐子狐面牙彫根付(からこ きつねめん げちょう ねつけ)」、江戸時代(19世紀)の作品です。
いやぁ~、なんとかわいらしい作品でしょうか
これはホント、いただいて帰りたかった…
この作品を含めて、総合文化展の根付の展示作品の多くは、
郷誠之助氏寄贈
でした。
この郷さん、郷ひろみさんの親戚筋ではなくて、明治中期~昭和初期の財界の超大物
詳しくはWikiediaの記述をご参照くださいませ。
さて、根付といえば、「根付 高円宮コレクション」に触れずにはいられません。
前回、この「根付 高円宮コレクション」を観たのはこちらで書きましたように昨年11月末でした。それから1ヶ月ちょっとしか経っていないというのに、展示品は完全に入れ替わっていました。さすがは東博ですな。
今回も魅力的な根付がどっさり展示されていました。
もっとも、個々の作品が小さいものですから、展示室を使い余している感がなきにしもあらずですが…
今回の展示品の中で私が最も気に入った、っつうか、気になったのはこちら。
蒔絵が施された小判型の弁当箱っぽいのに、赤く「人」と書かれたこの作品の説明プレートには、
何と大胆な作品なんでしょ
作品も、そしてタイトルも、そしてこれをコレクションに加えた高円宮殿下も
好きです、この感覚
今後、東博に行く時、「根付 高円宮コレクション」を観る楽しみが深まった気がします。
ここで2012年最初の東博観覧の感想を終えるつもりだったのですが、一つ、大事な作品に触れていなかったことを思い出しました
茨城県行方(なめがた)市から出土したもので、
猿の埴輪としては唯一の存在で、当館には明治初年から寄託されていた。背中の剥離痕から、元は小猿を背負っていたとみられる。巻上げ成形でハケ目が残るが、ナデ整形で仕上げている。
顔面などには赤色顔料が残り、生き生きとしたさるの表情と捉えた傑作である。
という説明がつけられています。
なんだか手人形みたい…。
ってなところで、2012年最初の東博探訪記は全巻の終わりでございます。