[↑ ※「サルまで怒る 自民の腐敗」(週刊金曜日 1454号、2023年12月22日・2024年01月05月合併号)]
(2024年08月11日[日])
米不足!? ニッポンは戦争したくて仕方ないらしいが、《兵糧攻め》に対して、兵器でも喰うのかね? 何が「安全保障」か、「国防」か! 鈴木宣弘さん《実質自給率は9・2%だ。おそるべき数字だ》…。また、《だが日本の方向性は、食料やエネルギー自給率向上の抜本的な論議よりも、経済制裁の強化、敵基地攻撃能力の強化など勇ましいものばかりだ。増税して43兆円に防衛費を増額して攻めていく論議が盛んだが、その前に食べるものをどうするのか?》、《輸出規制が強化されてモノが入らなくなったら、私たちはトマホークとオスプレイとコオロギをかじって何日生き延びられるのか》? さらに、《ばかたれはどっちなのか。43兆円でミサイル等を爆買いする金があるのなら、なぜこれが出せないのか。武器は破壊するものだが、食料は国民の命を守るものであり、そのために必要なのは農業・農村を守ることだ》。
城山三郎さん《平和憲法こそ生き残る者の夢であり、守ることが使命だ》、《戦争待望論を唱える若い文士がいると聞いて、鳥肌の立つ思いがする。平和の有難さは失ってみないとわからない》、《日本は先の戦争で、ほとんどすべてを失ってしまった。唯一、得られたのは、憲法九条だけだ》。また、(古賀茂明さん)《…菅原文太さんのことを思い出している。もうすぐ命日だ。菅原さんは死の直前の11月1日、沖縄で演説を行った。文字通り、命を削りながらの訴えだ。「政治の役割は二つあります。一つは、国民を飢えさせないこと、安全な食べ物を食べさせること。もう一つは、これが最も大事です。絶対に戦争をしないこと!」》。
《政治の役割》を全く果たせない、果たそうとしない自公政権。<ぎろんの森>《軍事ではなく外交力を駆使する「別の道」を探るのが、政治の責任》を全く果たせない、果たそうとしない自公政権。
《食料危機にいかに備えるか》? こんな食糧自給率で、軍事費倍増等々、やってる場合なのかね…《兵糧攻め》に対して、兵器でも喰うのかね? 煮ても焼いても無理だと思うが…。腹は満たされない。
ズブズブ壺壺ヅボヅボな自民党・公お維コミの直接的・間接的支持者の皆さん、いい加減に目覚めて下さい。彼や彼女らに投票したツケ、投票に行かなかったツケがこの国・ニッポンの凋落です。《戦争などできない国…「戦争などやるもんじゃない」の一言に尽きる》《戦争に向いてない国》《柳沢協二氏「日本は…食料やエネルギーなどを全て自給できず、海外とつながらなければ生きていけない。…戦争を得意とする国ではない」》。台湾有事を煽って、ニッポンに何のメリットがあるのか? ニッポンの《有事》は少子化(浜田敬子さん)。なのに、軍事費倍増って、バカなのか? これは、農業や酪農にも言えること。鈴木宣弘さんの農畜産業への危機意識、なぜにカルト協会とヅボヅボな「利権」「裏金」「脱税」党や下駄の雪党、お維コミの直接的・間接的支持者の皆さんには伝わらないのか…。鈴木宣弘さん《食料と農業を守ることが安全保障》。
『●食料と農業を守らないニッポン『乳牛をしぼればしぼるほど赤字になる。
まったく希望が持てない』…《兵糧攻め》に対して、兵器でも喰うのかね?』
『●問題解決はとっても簡単だと思いますよ、軍事費倍増を止めればよいのです。
その分の税金を子供たちのため、教育のため、市民のために使えばよいだけ』
『●《誰もが豊かに生きていける社会にたどり着くまでに…未来はそのように
して変化を恐れずに、その時代を生きている人間が作っていくもの…》』
まずは、カルト協会とヅボヅボな「利権」「裏金」「脱税」党を政権から引きずり下ろす、《変化を恐れずに》。そこから始めなければ、数多の問題の解決は難しく、ニッポンは凋落していく一方だ。
長周新聞の記事【「世界で最初に飢えるのは日本――食の安全保障をどう守るか」 東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授・鈴木宣弘氏が下関市で講演】(https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/31383)。《下関市の社会福祉センターで7月27日、『世界で最初に飢えるのは日本~食の安全保障をどう守るか~』をテーマに東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授の鈴木宣弘氏の講演会が開かれた。市民団体「高齢社会をよくする下関女性の会(ホーモイ)」が主催する市民福祉講座「地域の持続可能性に貢献する農業~安心安全な地産地消を目指すために~」の第二弾としておこなわれ、下関市内や北九州市から約250人が参加した》。
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【https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/31383】
「世界で最初に飢えるのは日本――食の安全保障をどう守るか」 東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授・鈴木宣弘氏が下関市で講演
2024年8月7日
(『世界で最初に飢えるのは日本--食の安全保障を
どう守るか』をテーマにした鈴木宣弘教授の講演会
(7月27日、山口県下関市))
下関市の社会福祉センターで7月27日、『世界で最初に飢えるのは日本~食の安全保障をどう守るか~』をテーマに東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授の鈴木宣弘氏の講演会が開かれた。市民団体「高齢社会をよくする下関女性の会(ホーモイ)」が主催する市民福祉講座「地域の持続可能性に貢献する農業~安心安全な地産地消を目指すために~」の第二弾としておこなわれ、下関市内や北九州市から約250人が参加した。鈴木氏の講演要旨を紹介する(文責・編集部)。
◇◇ ◇◇
(鈴木宣弘氏)
今日は「食料安全保障崩壊の本質」から入りたい。日本の食料自給率はなぜこれほど低いのか。一番大きい要因は米国の占領政策だ。戦後、米国の余剰農産物の最終処分場にされているのが日本だ。とくに麦や大豆やトウモロコシの関税が撤廃されて、一気に米国の農産物が押し寄せ、国内生産は壊滅した。そして御用学者が「コメを食うとバカになる」といい、日本人に米国産小麦を食べさせるために「食生活改善」がうたわれ、米国企業の利益のために日本人がみずから動くようにする洗脳政策がおこなわれた。一方、日本側も米国の要求を経済政策として利用した。経産省は自動車産業の利益のために食料、農業を差し出す「生け贄」政策で農産物の関税を撤廃した。
もう一つは財務省(大蔵省)の財政政策だ。予算の推移を見ると、1970年段階で農水省の一般会計予算は1兆円近くあった。だが50年以上たった昨年度は2・3倍の2兆円ちょっとで実質の減額だ。一方、防衛予算は農水予算の半分だったものが、今や10兆円規模で18倍にまで膨らんでいる【①参照】。ちなみに再生可能エネルギー(太陽光発電)からの電力買いとりで事業者に払われている金額だけで4・2兆円。それだけで農水予算の2倍だ。
軍事・食料・エネルギーが国家存立の三本柱というが、そのなかでも命を守るのは食料だ。その食料の予算が歪に減らされてきたのが日本の特徴だ。生産者は苦しくなり、輸入はさらに増えて自給率低下の流れが止まらない。
今の世界的な食料危機をクワトロ(4つの)ショックと呼んでいる。コロナ禍、中国の爆買い(小麦、大豆、トウモロコシ、牧草、魚粉、肉、魚などを中国が大量に買い付けて日本に入ってこない)。また異常気象が通常気象になり、日本でも世界でも不作が頻発する。間違いなく食料需給が世界的にひっ迫している。そこに紛争のリスクが高まり、ウクライナや中東で勃発した。
こういうなかで、まず経済制裁を受けたロシアやベラルーシが「日本が敵だからモノは売らない」といいはじめた。米国がそうしてきたように、食料はまさに武器なのだ。またウクライナのような世界の穀倉が破壊されている。そのなかで一番深刻なのが食料の囲い込みだ。インドは世界で1位、2位のコメ、麦の生産・輸出国だが、自国民を守るために防衛的に輸出を止めている。そういう動きが今や30カ国に及んでいる。日本は小麦を米国、カナダ、オーストラリアから買っているが、これらの代替国に需要が集中して食料争奪戦が激化している。
日本の農業も大変な事態になってきた。まず穀物が十分手に入らず酪農、畜産のエサの価格が2倍に上がって全国で廃業する流れが止まらない。さらに、日本は化学肥料の原料であるリン、カリウム、尿素をほぼ100%輸入に頼っている。中国の輸出抑制で入手困難になりつつあった矢先、カリウムを依存していたロシアとベラルーシも輸出を抑制した。高くて買えないどころか、原料が手に入らず製造中止となる配合肥料も出てきている。これでお手上げだ。日本の農業は、化学肥料を使った慣行農業が99・4%を占めている。肥料価格も一昨年の2倍ぐらいに上がり、日本の農業が続けられるかという大変な状況になっている。化学肥料に頼らない有機農業というのも考えていかないといけない事態になっている。
さらに注目すべきは中国の動きだ。中国がアメリカとの関係悪化に備えて14億人の人口を1年半まかなえるほどの食糧備蓄をしている。しかし国産だけでは足りず世界中の穀物を買い占め始めた。今、世界の穀物在庫の大半が中国に集まっている。異常な事態だ。かたや日本の備蓄はコメを中心に1・5カ月分。今日本の農業はコスト高で苦しんでいるが、モノが入らなくなったときにそんな食糧備蓄で私たちは子どもたちの命を守れるのか。
実は日本の農業も、潜在生産力はある。減反によってコメは全国で700万㌧しかつくっていないが、地域の田んぼをフル活用すれば1400万㌧はできる。コメを中心に他の作物も増産して、1年分ぐらい備蓄してみなの命を守れるようにすることこそが一番の安全保障ではないか。
これをいうと財務省が「その金はどこにあるか?」といって議論にならない。米国からまともに飛びもしないようなミサイルを買うのに43兆円を使う金があるのなら、どうしてみなの命を守る食料、農業、農村を守らないのかだ。突きつけられているのは、食料、種、肥料、飼料などを海外に過度に依存していては国民の命を守れないという現実なのに、いまだに「米国に要求された貿易自由化をすればみんなが幸せになれる」「それが安全保障」のような議論をしている。
現実に農業の衰退や所得低下の一方で、もうけているのは日米のグローバル企業だけだ。みんなを守るルールを破壊すれば、一部の企業だけがもうかるに決まっている。そして輸入が滞るリスクが高まるなかで、このまま放置していたら「台湾有事」などで本当に中国がシーレーンを封鎖するようになったら、みな飢え死にしてしまう。それを考えたら、目先コストが高くても地元の食料を守ることが一番の安全保障といえる。
日本の実質自給率9% 種の9割は輸入
もう一つ大変なことがある。種(たね)だ。野菜の自給率は80%といっているが、その種の九割は輸入だ。それを考慮すると物流が停止すると野菜も8%しか自給率がない。種採りしようにも、ほとんどがF1種(交雑種)なので一代限りで同じものはできない。地元の在来種をしっかりと守り、循環させる仕組みを強化しないといけない。食料は命の源だが、その源は種だ。
鶏卵の国産率は97%というが、エサが止まれば自給率は12%。ヒナが止まれば今でもほぼ0%だ。それも含めて日本の食料自給率を計算し直す必要がある。現在の食料自給率は38%ぐらいといっているが、肥料や種の話は入っていない。さらに化学肥料原料の調達ができなければ収量が半分になる。実質自給率はそれだけで22%だ。さらに野菜の種の9割が輸入であることを考慮すれば実質自給率は9・2%だ。おそるべき数字だ。
野菜はともかく「コメの種は国内で調達しているのでは?」と思われるかも知れない。だが「日本の種を守るんだ、シャインマスカットの種が中国や韓国にとられてはいけない」といって大変な法律を決めてしまった。今、グローバル種子農薬企業が「種を制するものは世界を制する」といって世界中の種を自分のものにしようとしている。しかしそれに対して世界中で農家や市民が猛反発している。
そのなかで、なんでもいうことを聞く日本に対して「まず公共の種子事業は邪魔だからやめろ」と要求した。そこで日本は、各自治体が公共の試験場でコメの品種をつくってみんなで安く共有するために定めていた種子法を廃止した。やめただけではない。各地域の良質な種はグローバル企業に渡さなければいけないという法律までつくった(農業競争力強化支援法8条4項)。さらに農家が自家採種することを制限した。種苗法の改定だ。そう考えると、「日本の種を守るんだ」といいながら、実態は逆に日本の大事な種をどんどんグローバル企業に渡していく流れをつくっている。本当に9・2%という自給率に近づいている。
その流れのなかで、福岡のイチゴ「あまおう」の種の知見をよこせといってきたという事例がある。福岡県は抵抗したが、法律で決まっているという理由でとられた。そういう事例が全国で1400品種ぐらい出ており、懸念される事態が進んでいる。
さらに追い打ちをかけるような計算を米ラトガース大学が出した。局地的な核戦争が起こっただけで、被爆による死者よりも物流が止まることによる死者、餓死者が世界で2・55億人出ること、うち世界の餓死者の3割(7200万人)が日本に集中するというものだ。「食料を自給できない人たちは奴隷である」(キューバの著作家ホセ・マルティ)、「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」(高村光太郎)といわれるが、自給率38%でも低すぎるのに、実質1割を切るような状況が近づいている。不測の事態において国民を守れない国は独立国といえるのだろうか。
主食のコメは、今になって足りないといって値段が上がっているが、余っているといわれて1俵(60㌔)9000円ぐらいまでに下がったときもある。でもコストは1万5000円かかるから大赤字だ。肥料も2倍になっており、農家の赤字はどんどん膨らんでいる。買いたたかれて価格転嫁が進まないし、それを支援することもない。コメづくりを続けられない人が増えてきて、今急にコメが足りないといっている。その政府の失敗をいわずして、「去年の猛暑でコメ生産が減ったからしょうがない」というのは違う。どうしてこうなったか考えないといけない。
国内農業生産を強化し、危機に対して国民を守る体制づくりが急務のはずだ。ところがコメも牛乳も過剰だから「コメをつくるな、搾るな(牛乳捨てろ)、牛を4万頭殺せ」と「セルフ兵糧攻め」のように国内生産基盤をそぎ落とした。こんなことをしているのは日本だけだ。他の国はコロナ・ショックで在庫が増えたときに、国が買いとって子ども食堂やフードバンクを通じて困っている人に届けるということもやった。そうやって財政出動で国が農家を助けて歓迎された。日本はそれを一切やっていない。
日本が国内在庫を援助物資に使わないのはなぜか? かつての中川昭一農水大臣が周囲の反対を押し切って脱脂粉乳の在庫を途上国の援助物資として出したが、彼はもうこの世にいない。つまり、日本が援助物資をやるとアメリカの逆鱗に触れることがわかっているから、政治行政の側は恐れ、国民の心配よりも自分の地位や保身の心配ばかりしている状況がある。アメリカの市場を奪うことになるからだ。
今、酪農はとくに大変だ。コロナ禍で牛乳が余るから牛を1頭殺したら15万円払う、4万頭殺せといってきた。そもそも2014年にバターが足りないと大騒ぎになり、酪農家は借金してでも増産するよういわれ、みな頑張ってきた。ところが軌道に乗ってきたところにコロナ禍に見舞われ、今度は牛乳が余ってきたから搾るな、捨てろという。酪農家は借金だけ残って、廃業するどころか、北海道や熊本などで自殺者も出ている。このようなところまで追い込んでしまっている。生産者を振り回す「作れ」「作るな」をいつまでくり返すのか。
需給がひっ迫するのがわかっていながら、牛を殺したために今度は本当に牛乳が足りないといい始めた。でも子牛から牛乳を搾れるようになるまで3年以上かかる。足りなくなってから焦っても間に合うわけがない。だからバターを緊急輸入するという。それがさらに国内生産の芽を摘む。他の国のように政府が需要をつくって生産を維持するための調整をすればいいのに、しわ寄せがすべて農家にいっているのだ。
手厚い米国の農家補填 食料を武器にする戦略
米国は日本に対してあれやれこれやれと要求するが、自国の農業予算は圧巻で、非常に戦略的にやっている。米国ではコメ1俵を4000円で売ってもその差額の1万2000円は100%政府から補てんされる。食料こそ一番安い武器だという考え方に基づいている。だから徹底的に食料にお金をかけて、日本をコントロールするんだという戦略だ。
なんと農家への補てん額が、穀物の輸出向け分だけで1兆円規模になる年もあるほど農家への所得補てんも驚くほど充実している。米国は徹底的な補助金をつけて安くして、日本の農業をつぶしてくるわけだ。つまり米国が自由にもうけられるのが「自由貿易だ」という理屈だ。自分の悪いところを棚にあげて人を叩きまくるのが米国の得意技だ。
さらに米国は、消費者支援策をしっかりやっている。農業予算の64%が消費者の食料購入支援に使われている。日本はこういう政策もない。
世界のなかで日本と米国は先進国で最貧国になっている。一番貧困率が高いのはアメリカだったが、ついに日本がそれを抜いた。抜いたばかりか、国連の飢餓地図では日本はいまやアフリカなどと同じグループで、世界でもっとも栄養不足人口が多い国になった。これほど日本の国民消費者は追い込まれている。それを助ける政策が必要なのだ。
私が農水省にいたころは、農水、財務、経産省は官邸でバチバチケンカをしながらも頑張っていた。それがいまや農水省の権限がどんどん縮小され、財務省は食料、農業予算が切りやすいからといって、とにかく一番大事な予算を集中的に減らしてきている。例えばコメを作るなというだけではなく、コメの替わりに小麦、大豆、野菜、そば、飼料米、牧草などを作る支援として支出していた交付金をカットすると決めた。もう一つ驚くのは、田んぼを潰せという。信じられるだろうか? 田んぼでコメをつくるのが、一番の命の源だ。地域コミュニティも伝統文化も守り、洪水も止めてくれるのが日本の田んぼであり、それが日本の社会だ。それをまったく考えず、「余っているのだから潰せ」「潰すならば補正予算で750億円つけますよ」という。どこに政策を向けているのか、ほんとうに大局的見地、国家観というものがあるのか問われるのが今の状況だ。
農業は国民の命に直結 最初に飢えるのは東京
(搾乳する酪農家(熊本県))
先ほどのべたように農家の赤字は膨らんでいる。でも歯を食いしばって頑張っているが、農産物の価格は上がらない。これを地域みんなが支え合って生産が持続できるようにすることが必要だし、この状況を放置したら、本当に海外からものが入らなくなってきたときに、私たちは子どもたちの命を守れるかだ。農業問題は生産者の問題をはるかにこえて、消費者一人一人、国民の命の問題だということを今こそ考えないといけない。
それをさらに思わされたのは昨年の猛暑による減産だ。北海道の自給率は223%、山口県は31%、東京は0・4%。私が出した『世界で最初に飢えるのは日本』という本が衝撃を与えたというが、その日本で最初に飢えるのはどこかといえば東京に決まっている。去年のように猛暑で北海道で大幅に生産が減るようなことになれば、まずはじめに食料が届かなくなるのが東京だ。だれのおかげで私たちの命がつながっているのかを考えないといけない。人口が少なくても農村部で、第一次産業で頑張っている人がいるからこそだ。
佐賀県が「国会議員の定数を各都道府県の食料自給率に基づいて再配分すればどうなるか」ということで試算したところ、東京の国会議員の定数は1。自給率から見ればゼロだ。自給率の高い北海道は196人だ。極端な計算ではあるが、人口だけみて優劣を付けるのではなく、こういう数字の意味をわれわれは考えないといけない。生産地が疲弊すれば都市には食料が供給されないのだ。
こういうなかで25年ぶりに農業の憲法といわれる農業基本法が改定された。だれが考えても、今この時期に農業の憲法を改定するということは、世界情勢の悪化と国内農業の疲弊を放置せず、抜本的に農業・農村を支える政策を強化して食料自給率を引き上げてみなの命を守れるようにするためだ。ところが、ふたをあけてみると新基本法には、食料自給率という言葉がなく、「基本計画」の項目で「指標の一つ」に位置付けを後退させ、食料自給率向上の抜本的な対策の強化などには言及されていない。逆のことをいっている。これまで農業、農村を支えるためにいろんな政策をやってきたのだからそれで潰れる方が悪い、もうかっている経営体だけ守ればいいという基調だ。
そして大多数の農家が潰れることを前提に、輸出、スマート農業、海外農業投資、農外資本比率を増やすことを挙げているが、それだけで食料・農業・農村を守ることができるわけがない。いざというときにどうやって食料を供給できるのか。それへの答えが、今回の農業基本法改定の目玉である有事立法だ。普段苦しんでいる農家への支援は一切やらず、有事になったら増産を命令する。花き農家にも畜産農家にもイモを強制的に増産させて、それを供出させる。従わない農家は処罰する。「支援するから頑張ってくれ」ではなく、支援はしないが罰則で脅してそのときだけ作らせればなんとかなるという荒唐無稽な法律が通ってしまった。そうではなく、今頑張っている農家を支援して自給率を上げればいいだけの話だ。
ある有名な経済学者が四国の中山間地にいって「なぜこんなところに人が住むのか。こんなところに無理して人が住んで農業をやるから、税金を使って行政もやらなければいけない。これを無駄という。早く原野に戻せ」といった。これがいかに間違っていたかはコロナショックで明らかになったはずなのに、今また農業の憲法まで変えてそのような方向性を進め、農業・農村の疲弊を放置し、結局一部の企業だけがもうかればいいという議論にしてしまっている。これでいいのか? ということが厳しく問われている。
農業悪玉論に怒り爆発 欧州で広がる農民の抗議
(トラクターデモをおこなうオランダの農家
(1月31日、ブラバント州))
今世界中で農家の怒りが爆発している。欧州では、コスト高への怒りだけではなく、SDGsを悪用した環境規制強化で農業潰しが始まったことに農家は怒り、高速道路を封鎖し、中心部から食料を消して抗議している。都市部のスーパーの棚からは一斉に食品が消えた。農家は「農家なくして食料なしだ(No Farmers,No Foods)」と訴え、それに共鳴した国民運動にもなっている。日本は世界でもっとも厳しい状況に置かれているのに、みんなとても我慢強い。もうちょっと怒っていい。
この環境規制の絡みで、まともな食料生産振興を差し置いて、突如、地球温暖化の主犯は水田のメタンガスと牛のゲップだといって農業を悪者にし、コオロギや人工肉の普及が始まっている。水田は何千年も前からあったし、牛も昔からゲップしている。温暖化は工業化が原因であるのに、それを農業、酪農畜産、漁業のせいにして新しいビジネスでもうけようとしている者たちがいるのだ。
今年1月の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)でも耳を疑う発言が飛び出した。プライベートジェットで温室効果ガスをまき散らしながら集まるこれらの人たちは、「アジアのほとんどの地域ではいまだに水田に水を張る稲作がおこなわれている。水田稲作は温室効果ガス、メタンの発生源だ。メタンはCO2の何倍も有害だ」(バイエル社CEO)、「農業や漁業はジェノサイドならぬ“エコサイド(生態系や環境を破壊する重大犯罪)”とみなすべきだ」と主張した。
この荒唐無稽な議論は「工業化した農漁業や畜産を見直して環境に優しい農漁業に立ち返るべきだ」という主張ではなく、農漁業や畜産の営み自体を否定して、その代替食料としてみずからが推進する昆虫や人工肉などを普及してもうけるためのビジネス本意の主張といわざるを得ない。
「三食イモ」でしのぐ? 食料安保の実態
今、農業の実態は非常に厳しい。データ【② ③参照】を見ても、酪農や肉用牛の経営では、規模拡大して借金して頑張ってきた大規模層が平均2000万~3000万円の赤字だ。このまま放置すれば産業崩壊だ。稲作でも、全国平均で1年やって手元に残るのはわずか1万円。時給換算では10円だ。それでもおいしいコメを作るために頑張ってくれている農家がいるのは奇跡といえる。
だが日本の方向性は、食料やエネルギー自給率向上の抜本的な論議よりも、経済制裁の強化、敵基地攻撃能力の強化など勇ましいものばかりだ。増税して43兆円に防衛費を増額して攻めていく論議が盛んだが、その前に食べるものをどうするのか? これだけ食料をないがしろにしてきた日本が、米国に金魚の糞のようについて行った途端、中国が海上封鎖でもすれば、戦う前に飢え死にして終わるだけだ。武器をいくら備えても命を奪うだけだが、食料自給率を高めて平和外交をすることがみんなの命を守ることに繋がる。
米国から買わされる食料も在庫処分なら、兵器も在庫処分。オスプレイなどは危ないから世界中が敬遠しているのに、日本が1機200億円で買い、買い増しまでして沖縄で大事故を起こし、米国も生産を2026年で中止する。それなのに佐賀空港の隣では40㌶の優良な田畑を潰してオスプレイ基地を増設している。こんなことをいくらやっても、輸出規制が強化されてモノが入らなくなったら、私たちはトマホークとオスプレイとコオロギをかじって何日生き延びられるのかということだ。
「だからこそ食料自給率が大事なのだ」というと「自給率はゼロでもいい。自給力さえあればいい」といい始めた。自給力の中身とはサツマイモだ。有事になったら農家だけでなく、国民みんなでサツマイモを植える。校庭やゴルフ場、道路に盛り土してイモを植えて三食イモで数年しのげばなんとかなるという。まさに戦時中だ。これが日本の食料安全保障だというのだから呆れるほかない。
日本の食料自給率が低いのは輸入が多いからだ。日本は国の責任で米の77万㌧、乳製品13・7万㌧という莫大な量を「最低輸入義務」だといって輸入し続けている。だが私の調べでは、そんな約束はどこにもなく、「低関税を適応する」というだけの約束だ。だから他国で全量入れている国はない。日本は国内在庫が増えても全量輸入して国内農家を苦しめている。本当の理由は、米国から「コメは36万㌧必ず買え」と密約で命令されているからだ。
その米国から買っているミニマムアクセス(MA)米の値段たるや、今や1俵3万~4万円近くになっている。国産米の2~3倍の値段【④参照】だ。そんな米国産米を大量に買い、入札にかけても誰も買わない。しょうがないから飼料に回すが、そこで差損を埋めるために毎年税金700億円を投入している。
酪農については、コロナ禍の在庫過剰で北海道だけで14万㌧余るから、「(牛乳を)搾るな、捨てろ」「牛殺せ」という話になったが、国は脱脂粉乳・乳製品を13・7万㌧(生乳換算)輸入している。それへの批判が高まると、野村農水大臣(当時)は「乳牛淘汰は農家が選択したことであって国はそれを助けただけ」といい、義務でもない大量輸入については「輸入に頼る日本が輸入を止めると信頼をなくし、今後輸入できなくなると困るから」といった。これだけ現場が価格転嫁できずに歯を食いしばって頑張っているときに、他人事のように責任転嫁だけしていいのかということだ。
「外に媚び、内を脅かす者は、天下の賊である」(吉田松陰)という言葉があるが、政治家に限らず、一定の年齢に達して、自分がリーダーであると思う人は、子どもたちを守るために自分が盾になるくらいの覚悟をもって行動すべきときに来ているのではないか。
政策で自給率増は可能 農漁業保護は当たり前
農漁業が消滅すれば国民は食べ物を失う一大事となるが、地域経済においても一次産業のおかげでどれだけの関連産業や組織が成り立っているか考えてほしい。みんな運命共同体であり、私たちが支え合わなければ、一緒に泥船に乗って沈んでいきかねない。
第一次産業は小さな産業だという人がいる。たしかに生産高は全国で10兆円規模だ。だが、それを基礎にして成り立っている食料関連産業の規模は110兆円になる【⑤参照】。すべての経済社会は一次産業を基礎にして成り立っているといっても過言ではない。これを忘れてはいけない。
とくに地方の中山間地域では、一次産業があることで土砂崩れや川の洪水を防ぎ、地下水をつくり、水田が暑さを和らげ、生物多様性も育まれる。その営みを基礎にして地域コミュニティが形成され、教育や文化伝承ができる。東京のように都市部が農村から分離されて肥大化すれば人間は住めなくなる。地方では、都市と農村がしっかり繋がりながら地域の循環圏を作り上げる力を強化しなければいけない。
「日本の食生活が変わり、もう日本の農地だけでは足りないのだから自給率など上げられない」という言葉をよく聞く。誰がそうしたかといえば米国の政策だ。裏返せば、政策で自給率は変えられるということだ。
たとえば江戸時代は鎖国政策で海外からモノは入ってこなかったが、私たちは負けずに徹底的に地域の資源を循環させ、循環農業、循環経済の社会を作り上げた。これは世界中を驚かせた。江戸時代に戻ることはできなくても、われわれの実績を思い起こさなければいけない。それをぶち壊したのは米国の占領政策と戦後政策だ。
まず著名な学者を「回し者」にして、日本人が欧米人に劣るのは主食のコメが原因であるとする「コメ食低脳論」(慶應大学医学部教授・林髞著『頭脳』)を氾濫させた。きわめつけは、子どもたちをターゲットにして学校給食でパン食と腐った脱脂粉乳を与え、米国の小麦連合会が厚生省(当時)に資金供与して「食生活改善運動」を推進し、米国の過剰な小麦を売り込む戦略のもとで「洋食推進運動」まで実施した。これほど短い期間に伝統的な食文化を一変させた民族は世界に例がない。
農水省は2006年に日本食をとり入れることによって自給率が向上するというレポートを出したが、圧力を受けて今では入手不能になった。それを助長したのが経産省主導の経済政策だ。政府の計量モデルで私たちが試算すると、RCEPやTPP11などの大きな貿易自由化交渉がまとまるたびに、自動車が約3兆円もうかり、農業が大赤字になる。これをくり返している。農業を生け贄にしてもうけてきた産業界も、その犠牲にしてきた農業・農村の再興についてもっと責任をもつべきだ。
農業を生け贄にしやすくするために「日本の農業は過保護だ」という誤解をメディアを通じて国民に刷り込んだ。「欧米は競争によって発展した」というのも大嘘で、欧米こそ国家戦略で農業を大々的に国が下支えしている。「日本の農業は補助金漬けだ」というが、実際に調べると農業所得における補助金の割合はせいぜい3割。スイスやフランスはほぼ100%だ。命を守り、環境を守り、国土・国境を守る産業(農漁業)を国民みんなで支えることは世界の常識であり、農業は公共・公益事業だ。そう見なさない日本の常識は世界では非常識だ。
手厚い農業政策があるフランスでは農家の平均年齢は51・4歳だが、日本はいまや68・7歳。各地で「10年後にどれだけの農業・農村が残っているか」という話をすると、「10年どころか5年でもたない」「もうやる人がいない」という地域が増えている。赤字が膨み廃業のスピードが加速しており、われわれに残された時間は非常に少ないということを認識しなければならない。
…… (長周新聞 または コチラ)
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