吉田徳次郎先生の「コンクリート及鉄筋コンクリート施工方法」の、第24章「コンクリート工事の監督、管理および記録」より抜粋。
p.721 No.592「現場監督者」より一部抜粋。
「現場監督者は、人格が高潔で、機略に富み、判断が正確であり、しっかりしていて責任感が強くなければならない。いわゆる「あの人はいい人だ」という人が満足な現場監督者だとはかぎらない。
現場監督者は、作業員の尊敬と親愛とをうける人柄であることが大切である。公平にことを処理し、よくできた工事を作業員と共に心から喜ぶようであれば、作業員の好意ある協力がえられる。
中略
現場監督者は、請負人との間の問題に理解をもち、また、おこった問題を常に好意をもって処理することが大切である。請負者の身になって考えることを忘れなければ、請負者との間に友誼を保ち、協力して工事をすすめることができる。両者が敵視するようなことでは到底満足な工事は望まれない。
現場監督者は、不満足な結果がえられると思われる点があったときは、できるだけ早く請負者と相談して、材料および労力の無駄をさけなければならない。工事ができ上ったのちに、やり直し、修繕、等を命ずる監督者は、自分が未熟でないかについて反省する必要がある。
現場監督者は、請負者から検査を求められたとき、できるだけ早く、これに応じなければならない。あいまいな、不注意な検査が論争の原因となる。おおへいの検査は常にまさつをおこし、請負者との間の感情を悪くする。
中略
公平で、ていねいで、協力的で、実際的で、しっかりしていることが、現場監督者が請負者の尊敬と協力とをえるゆえんである。
構造物の設計施工について十分な知識をもち、請負者との関係について理解があり、頭のいい、しっかりした判断のできる現場監督者は立派に工事を完成させることができる。
有能な現場監督者に支払う費用は、構造物のできばえを保証される結果にたいしてはすこぶる安価なものである。」
このブログをしつこく継続していることからも、私は書くことが嫌いではないのだと思いますが、「書く」ということの意義や重要性については、年々理解が深まってきているように感じます。
9/2にJCIのランドマーク委員会(通称)の報告会が開催され、報告書も発刊されました。委員のメンバーが惚れ込む学者や技術者の業績を、ご本人へのインタビューの結果も踏まえて取りまとめたものです。私は委員会では幹事も務めましたが、報告書の内容は非常に秀逸であると思います。私が執筆に直接かかわったのは、岡村甫先生、池田尚治先生、角田与史雄先生でした。
それらの先生方についても、何となく聞いて知っていたこと、や、記憶があやふやなことなどがかなりありましたが、今回の報告書で正確な記述(先生方に直接確認や添削もしていただいた)の文章で残ったことはとても大きなことでした。すでに何度も何度も読み返している文章もありますが、読むたびに自分の知識として脳に定着し、いずれ完全に血肉になるのだと思います。書く、ということの大きな効果です。そして、文章に残ることで、委員会のメンバーだけでなく、多くの興味のある方々が、それを読んで勉強することができます。フィロソフィーが伝播していくことになります。
近年の、藤井聡先生や、三橋貴明さんらの言論活動にも多大な敬意を抱いています。似て非なるいいかげんな言論人は多くいますが、彼らは確かなデータに基づいて、現状でベストと思われる方向性を適切に示し、その方向へと皆を導く流れを創り出していきます。そう簡単にそんな流れなどできるわけではないので、やはり堅固なフィロソフィーに基づいた言論の継続こそが重要なのだと思います。私も、大変に勉強させていただいています。
最近は、稚拙な研究者である私も、自分の書く文章(学会誌や技術誌、論文等)において、私の哲学をなるべく記述するように心がけています。論文では難しいこともあるのですが、論文にこそ本来は哲学が盛り込まれるべきだろうな、と思っています。土木学会論文集の建設マネジメント分野で査読で落ちた、「施工状況把握チェックシートによるコンクリート構造物の品質確保と協働関係の構築」は、社会技術論文集へ投稿する最終準備を行っています。私は建設マネジメント分野に適した論文だと思っていましたが、客観的なデータが足りない、具体的な記述が無さ過ぎるなどの理由が主で落とされましたので、社会技術論文集に再チャレンジです。社会技術、というくくりの方が私たちのやろうとしていることはフィットするのかな、と思い始めています。また落とされるかもしれませんが。
哲学が込められた文章であれば、少ないかもしれないけれど必ず共鳴してくれる人が出てきます。または、文章を参考にして、ご自身の活動にフィードバックしてくださる方が出てきます。そうやって生じる変化は、地味に見えるかもしれないけれど、実は一番本質的な変化です。幸いに、私の関与する活動を、文章で表現する場は多く与えていただいていますので、それらの場でその時点でのベストを尽くしていこうと思っていますし、その積重ねがないと自分たちの夢は実現できないと改めて思っています。
帰国する日には、私が仏滞在中に書いてきたブログを読み返そうと思っています。その時々で、必死に考えてきたことの蓄積であり、それらを反芻して、仏滞在を総括したいと思います。