シャープ & ふらっと

半音上がって半音下がる。 それが楽しい、美しい。
思ったこと、感じたことはナチュラルに。  writer カノン

幼い子供を残して・・

2007-10-31 16:17:32 | 人とのつながり
28、29日に、葬儀に参列した。

地域活動で一緒の仲間の、
奥様が亡くなられたのだ。

夫婦ともに、31歳。
結婚して、まだ7年。
3歳の男の子と、
1歳の女の子がいる。

今年の春。
癌が見つかり、入院する。
かなり、早期に発見できたと思われたが、
あまりにも早く、方々に転移してしまっていた。

しかし気丈な彼は、いつも私達に、
「大丈夫です」「良くなってきています」
と告げていた。

そして、奥様が入院中、
子供二人にご飯を食べさせ、お風呂に入れて、
それから地域活動に顔を出していた。
私達の前では、
一度も泣き言を言わなかった。

しかし、奥様の病状は、
日毎に悪くなっていたのだ。


私は、この活動でのリーダーである。
奥様のことは、随時伝えてもらっていた。
しかし、彼の言葉は一貫して、
「大丈夫です」だった。

自分に言い聞かせていたのだろう。

私は、地元の神社にお参りし、
大きなお札を貰ってきた。
『病気全快』
活動場所の事務所に掲げ、いつも皆で祈っていた。



26日夕方。
彼から電話が入った。
「今朝・・妻が亡くなりました」

絶句した。何も返事ができなかった。

そして、夜遅くメールが入る。
淡々と、葬儀の日程が書かれていた。
最後に、
「お世話になります。よろしくお願いします。」


通夜。

昨年生まれたばかりの娘さんは、
彼・・いや、お父さんに抱っこされ笑っている。
お母さんとは、一年だけの日々。
でも、それは今、この子にわからない。

通夜の席でも、彼は温和な表情を崩さなかった。
私達の前に来ても、
「いつも集まらないメンバーなのに、
 今日はこんなに集まらせてすみません」と、笑わせた。
でも皆の方が、堅い表情だった。


そして、告別式。

二人の、思い出の写真が、式場に飾られる。
デートでのツーショット。
結婚式での神妙な二人。
そして、上の子が生まれ、
下の子も写真に加わってきた。
ディズニーランドでの、4人の笑顔。

でも、もうお母さんは写真に写らない。


そういえば、
奥様を初めて見たのが、結婚式のあとのパーティーだった。
彼は、タレントの優香さんのファンだったが、
射止めた奥様は、本当に優香さんそっくりの、
かわいらしい女性だった。

一度、仲間とお見舞いを申し出たが、
彼は固辞した。
今となっては、彼の気持ちがわかる。


出棺前の、最後のお別れ。
「ご参列の方も花をたむけて下さい」、という声に、
私達も、花を一輪手にして、
最後のお別れをした。

棺の中。
穏やかなお顔、と言いたかったが、
私が見た奥様は、
小さな子供を残して旅立つ、無念でいっぱいの表情に見えた。

そして、
彼はここで、子供を抱えながら号泣した。


喪主である彼には、
最後の挨拶が残っている。

「二人の子供を、しっかり育てていきます。
 そして・・
 この世から、妻の病気が無くなることを願っています」

私も、この言葉に泣いてしまった。


私もしかし、最後の挨拶が残っている。
活動の決まりに乗っ取った、
出棺時の敬礼である。

仲間を並ばせる。
「気をつけ!」

出棺。霊柩車のクラクション。
「最敬礼!」


私達の前を、
無言の奥様と、
初めて人の前で泣いた彼と、
何も知らずに笑っている子供達が通り過ぎた。


神様は、残酷なことをするものだ。

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4 コメント

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Unknown (カノン)
2007-11-01 10:26:29
悲しすぎます・・・。
愛する旦那様と最愛の子供さんを残して
亡くなられた奥様は心配、そして悔しさも
あったでしょう。
本当に神様は時として残酷な事をします。
私の同級生には早くに母親を亡くしている人が
大勢居ます。
皆強くそして心優しい人間ばかり。
私がその立場だったらきっと彼女たちのように
受け入れて前を向く事がはたして出来ただろうか。
と考えるととても私には乗り越えられない。
と感じてしまいます。

残された旦那様と子供さんはきっと強い絆で結ばれ
奥様の目には見えぬ深い愛情で守られる事でしょう。
そう願いたいです。

返信する
見守っていきます (管理人のカノン)
2007-11-02 18:01:24
>カノンさん

お母さんはずっと、天国から家族を見守っている・・。
そう言いたいです。でも、いないという事実はあまりにも悲しいですよね。
子供が物心ついた時、
父親である彼は、なんと話すのだろうか・・。
子供たちは、どう受け入れるだろうか・・。
考えただけでも、悲しすぎます。

でも、私たちに出来ることは、
彼を仲間として励まし、ともに頑張り、
お子さんたちの成長を見守っていくことだと思います。

親子、夫婦、家族、仲間・・。
今回の出来事は、いろいろ考えさせられました。
そう、カノンさんのおっしゃる通り、
彼とお子さん達は、誰よりも心優しい人になると思います。

彼は、今日から仕事を再開しました。
つらいだろうけど、子供のため、そして奥様のために、
頑張って欲しいと思っています。
返信する
はじめまして (aosta)
2007-11-11 15:24:58
金井直を検索していて、こちらのブロブにまいりました。
HNをaostaと申します。
「木琴」に対するカノンさんの言葉が、しみじみ心に響いてきて、早速「お気に入り」に入れさせていただきました。
今日は先ほどからカノンさんの過去記事を拝見しておりました。どの記事もさらりと書いていらっしゃるのですが、琴線に触れる言葉がいくつも光っていて、時間が経つのも忘れていました。

幼い子供を残して・・・
胸を憑かれる思いで読みました。
幼い子供を残していかなければならない親の想い。
親に先立たれた子供の想い。
どんなに言葉を尽くしてみても言い尽くせる物ではありません。どんなに思いを共有したいと願っても、経験した人にしかわからない魂の嘆きがあります。

それでも、手を伸ばしていたい。
私にはわからない。
けれども、私はあなたをずっと見ているから、と知っていて欲しい。
返信する
ありがとうございます (カノン)
2007-11-12 12:01:51
>aosta様

はじめまして。素敵なコメントをありがとうございます。
ブログの文字だけで伝える中で、
大勢の人に理解して戴いたり、共感を持って戴くことは難しいですね。
でも、少しでもわかって下さるところがあれば、
私もとても嬉しく思います。

記事の彼も、もう仕事やお子さん達のことで、毎日一生懸命です。
私達も、変わらずに接していますし、
お互いに、精神的に支え合っていきたいと思っています。
彼のガンバリには、私も見習うところが多いですから・・。

aostaさんのブログ、
私のほうも、ブックマークでご紹介させて戴くことにしました。
よろしくお願いします。
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