〇テーブルの下の旅路やきりぎりす
机の下に、キリギリスが居る。ああ、これも一つの旅なのだ、とふと気づく。自分も旅に出たい気がする。
〇押入れに蛍火ひとつ妹欲し
押入れに光る蛍が入ってきた。ああ、自分にも妹が居ればいいのに。思春期的な妹への憧れ。
〇流れゆく表札の名の十三夜
十三夜の名月に、表札の名前が目をかすめる。家という制度への反抗心が、少しだけ歌われている。
〇されど銀河父にもなれず帰郷して
だが、銀河よ。私は故郷を離れ幾年月、父親にもなれず、挫折して故郷に帰ってきた。苦い思い。
〇鏡台にうつる母ごと売る秋や
母親に対する近親憎悪が、寺山には強い。鏡台を売るのだが、できれば映っている母親ごと売り払いたい。
〇生命線を透かせば西日病室に
寺山は若き頃から病弱で、幾度も死にかけて、最期も病で早逝した。病室で生命線の短さをじっと見る。
〇冬鏡おそろし恋をはじめし顔
冬の鏡に映る、恋をし始めた思春期の顔は、もはや子供ではなく、何やら恐ろしい。自分の事かは不明。
〇くるところまで来てさむき唄うたふ
こんなところまで来て、というのは悪場所か、追い詰められた境遇か。それでも少し、歌ってみる。
〇春の虹手紙の母に愛さるる
生身の母でなく、手紙の母に愛されている。少し寂しい、母への屈折した愛着。春の虹との対比が冴える。
机の下に、キリギリスが居る。ああ、これも一つの旅なのだ、とふと気づく。自分も旅に出たい気がする。
〇押入れに蛍火ひとつ妹欲し
押入れに光る蛍が入ってきた。ああ、自分にも妹が居ればいいのに。思春期的な妹への憧れ。
〇流れゆく表札の名の十三夜
十三夜の名月に、表札の名前が目をかすめる。家という制度への反抗心が、少しだけ歌われている。
〇されど銀河父にもなれず帰郷して
だが、銀河よ。私は故郷を離れ幾年月、父親にもなれず、挫折して故郷に帰ってきた。苦い思い。
〇鏡台にうつる母ごと売る秋や
母親に対する近親憎悪が、寺山には強い。鏡台を売るのだが、できれば映っている母親ごと売り払いたい。
〇生命線を透かせば西日病室に
寺山は若き頃から病弱で、幾度も死にかけて、最期も病で早逝した。病室で生命線の短さをじっと見る。
〇冬鏡おそろし恋をはじめし顔
冬の鏡に映る、恋をし始めた思春期の顔は、もはや子供ではなく、何やら恐ろしい。自分の事かは不明。
〇くるところまで来てさむき唄うたふ
こんなところまで来て、というのは悪場所か、追い詰められた境遇か。それでも少し、歌ってみる。
〇春の虹手紙の母に愛さるる
生身の母でなく、手紙の母に愛されている。少し寂しい、母への屈折した愛着。春の虹との対比が冴える。