超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

寺山修司の俳句を読む

2023-07-04 05:09:14 | 無題
〇テーブルの下の旅路やきりぎりす
机の下に、キリギリスが居る。ああ、これも一つの旅なのだ、とふと気づく。自分も旅に出たい気がする。
〇押入れに蛍火ひとつ妹欲し
押入れに光る蛍が入ってきた。ああ、自分にも妹が居ればいいのに。思春期的な妹への憧れ。
〇流れゆく表札の名の十三夜
十三夜の名月に、表札の名前が目をかすめる。家という制度への反抗心が、少しだけ歌われている。
〇されど銀河父にもなれず帰郷して
だが、銀河よ。私は故郷を離れ幾年月、父親にもなれず、挫折して故郷に帰ってきた。苦い思い。
〇鏡台にうつる母ごと売る秋や
母親に対する近親憎悪が、寺山には強い。鏡台を売るのだが、できれば映っている母親ごと売り払いたい。
〇生命線を透かせば西日病室に
寺山は若き頃から病弱で、幾度も死にかけて、最期も病で早逝した。病室で生命線の短さをじっと見る。
〇冬鏡おそろし恋をはじめし顔
冬の鏡に映る、恋をし始めた思春期の顔は、もはや子供ではなく、何やら恐ろしい。自分の事かは不明。
〇くるところまで来てさむき唄うたふ
こんなところまで来て、というのは悪場所か、追い詰められた境遇か。それでも少し、歌ってみる。
〇春の虹手紙の母に愛さるる
生身の母でなく、手紙の母に愛されている。少し寂しい、母への屈折した愛着。春の虹との対比が冴える。
コメント
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