作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

府庁

2010年10月19日 | 日記・紀行

府庁

用事があって府庁まで出かける。時間に多少の余裕があったので、散輪がてら自転車で行くことにする。いつものように、桂川の堤防を北に上野橋まで行き、そこから葛野西通りから天神川まで出て、自動車の通行の少ない裏通りの小道をさらに抜けて四条通りを横切る。京福嵐山線の山ノ内停車場で線路を横切ってまっすぐ北に走ると山王神社の鳥居に出くわす。

やがて御池通に出ると右に折れる。そして東に方向を変えて進むと、左右に島津製作所の工場が見えてくる。この島津製作所には2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が今も働いているはずである。さらにまっすぐ東に進むと、JRの二条駅西口やBiVi二条の建物などが見えてくる。

                                          

山陰本線の高架をくぐり、神泉苑の前を抜けて堀川通りの交差点を渡る。そこから二条城前の一角をデジカメに撮る。京都府庁はここから眼の先にある。自宅を出てからゆっくりと自転車を走らせても四〇分くらいの行程だったろうか。

府庁で用事を済ませてから、とくに行く宛もなく自転車を烏丸通りに向かって走らせる。たまたま蛤御門が目に入ったので、そこから御所に入る。昔、学生たちの間にフォークが流行していたとき、多くの若者たちがこの御苑の芝生の上でギターを片手にたむろして、演奏している光景が見られた。彼らの多くも今は定年を迎え社会の第一線を退こうとしている。歳月の移ろいは早い。歳と世代もすぐにばれるに違いないが、小説でもないからすべて自分の視点でしか語ることができない。

             

御所のなかは犬を連れて散歩する人たちの姿がちらほら見えるくらいで、平日の夕刻に近い午後は人影もまばらで静かだった。砂利道を自転車で踏み分けながら苑内をゆっくり久しぶりに見て回る。

                                                        

まだ中に入ったことはないが、二〇〇五年に京都迎賓館が出来たばかりのころ、当時のブッシュ大統領と小泉首相がこの迎賓館で会談し金閣寺などを訪れたときのニュースが今も記憶に残っている。イラク戦争の混迷しはじめて行くさなかで、一方では北朝鮮やイランに対してブッシュはまだ強硬な態度を示して、世界へ自由の拡大を目指すテキサス男らしい外交を広げていた頃である。今はアメリカの外交もオバマの現在で大きく様変わりしている。時の移ろいは早い。

御所のなかは、とくにこの迎賓館などができたせいもあるのだろうが、今は防犯カメラが至る所に目に付くし、パトカーの巡回も多い。昔はそんなに仰々しくもなかった。ただ、つれづれなるままに久しぶりの御所をデジカメで写真や動画に撮った。

見事に手入れされた御所の松林などをゆっくりと見て回っているうちに日も落ち夕陽が差し始めた。それで一通り一巡しただけで帰途に就くことにする。御門に近いところに、西洋人の一家がベンチに腰掛けている。フランス人形のような子供に何を熱心に言い聞かせているのか。

門を出て烏丸通りの信号を渡ってまっすぐ行く。すぐに思いかけずブライトンホテルの前に出た。中立売通りに出ていたらしい。このホテルには何度か来たこともあり宿泊したこともある。そうした日々の反復の許される日はもうないのかもしれない。

     

京都の町中を、室町通りや新町通などを南に下がりながら、再び御池通に出た。そしてさらに西に向かい帰途に就く。もうこの頃には夕闇もすっかりと濃く、すでに灯された街灯も輝きを増し始める。途中に神泉苑が目に付いたので、少し寄り道して行く。

池のたもとにアヒルが三羽、人影に動じることもなく休んでいた。橋の脇にはフジバカマが植えられてあった。いつか山里で野生のこのフジバカマに出会いたいという思いはまだかなえられない。

                                         

                                                                                                     

ふたたび島津製作所の前を抜ける。仕事を終えて帰途につき始めたらしい職員たちと歩道で行き交う。自分もまた帰途を急がなければならない。                     

                       

                                

     小野リサ     Quien Sera                

          小野リサ     Fly me to the moon            

 

 

                                 


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