作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

民主党の再建と政界の再編成について

2005年09月13日 | 政治・経済

(一)

今回の総選挙では民主党は大敗した。小選挙区制では、得票率以上に獲得議席数に差が出る。自民党に敗北を喫したとはいえ、自民党と民主党との間に得票数でそれほど悲観するほど差があったわけではない。


再建のために、民主党のこれからはどのようにあるべきなのか。先に敗因の分析で明かにしたように、方向性としては民主党が根本的に国民政党へと脱皮することである。


国民政党に脱皮するとはどういうことか。少なくとも自民党は今回の総選挙で、小泉首相の意思によって従来の支持基盤であった特殊利益団体の関係を切り捨てて、国民全体の利益本位の立場に立つ政党になろうとした。自民党は特定郵便局という従来の支持母体の利益に反しても、郵政民営化という国民全体の利益の方向へと軸足を移したのである。


このように特殊利益団体の関係を切り捨ててでも、自民党は国民全体の利益本位の立場に立つ政党になろうとし、また国民もそれを認めて、自民党に勝利を得させた。


もちろん、いまだ自民党には農協や一部の大企業や銀行、金融会社という多くの特殊利益団体の支持を得ているが、少なくとも、今回の総選挙を見ても分かるように、これらの特殊利益団体と国民全体の利益が矛盾し、反する場合には、自民党は特定の利益団体の既得権益よりも、国民全体の利益を優先する国民政党の性格を明確にしはじめた。


これに対し、民主党はどうか。旧社会党勢力の生き残りを党内に色濃く残しており、その支持基盤である官公庁や大企業の労働組合などの特殊利益団体の意向を無視し得ないでいる。民主党はまず国民全体の普遍的な利益を、国益を最優先する政党に生まれ変わり、自民党と同じように、もし国民全体の利益と労働組合などの一部の特殊利益団体の利害が矛盾する場合は、躊躇なく国民全体の利益を優先する政党にならなければならないのである。国民政党とはそのようなものである。


今日労働組合の組織率が低下し、引き続き都市化が進み、無党派層が有権者のなかで比重を増しているとき、このような国民政党に変化しなければ、政権を担うことは難しい。そのためには何よりも民主党の指導者は、旧社会党の勢力を統制し、必要とあれば排除する意思と実力を持たなければならない。


それは、外交・教育・軍事などの国家の根本政策においては現在の自民党とほぼ同じ政策を選択することになる。


これはなにも政権を獲得するために政略的にそうした政策、思想を採用するのではない。現在の菅直人氏や岡田克也氏は左よりの思想に過ぎると思う。これでは国民は絶対に民主党に政権を託すことはできない。前原誠司氏などの、より右よりの(岡田氏らと比較してである)政治家が民主党を指導できるようにしなければならない。現在の自民党とほぼ同じような政策、思想を主体的に確立するのでなければ、国民政党になれず、したがって政権党にもなれないということである。もし、それができないのであれば、政権を担うという大それたことは考えない方がよい。

(二)

岡田民主党では国民政党に成りきれないのは、まず党内の支持基盤である労働組合に対して、小泉首相が特定郵便局という支持基盤を蛮勇をもって切り捨てたようには切り捨てられなかったことである。もう一つは、外交政策において、とくに岡田克也氏はアメリカとの関係について、60年、70年の安保闘争世代の影響を受けてか、意識的無意識的に反米的色彩が見え隠れする。まあ、それは言い過ぎであるとしても、国民政党の指導者は民主主義者であると同時に正真正銘の自由主義者でなければならない。


岡田克也氏は民主主義者であることは認めるるとしても、自由主義についての理解が不足している。そのためにアメリカという国の本質を捉えきれないのである。イラクの撤退を口にするなどというのは、自由主義者のする思考ではない。


世界に自由を拡大しようというアメリカの歴史的使命をもっとよく理解し、さらには、「自由」の人間にとっての哲学的な意義を理解しなければならない。さもなければ、アメリカ人がなぜ基本的にブッシュ政権のイラク侵攻を支持し、北朝鮮への人権法案を制定したか理解できないだろう。日本の民主党の指導者たちは、特にアメリカの建国の精神である「自由の理念」をよく理解しなければならない。自由主義国家であるイギリスと、アメリカの民主党が共和党の対イラク政策にほぼ同調している意味をよく考えるべきである。にもかかわらず、愚かにも岡田民主党は、12月の自衛隊のイラク撤退を口にしている。


対イラク問題や対米政策については小泉首相の選択は基本的に正しいのである。民主党は自民党と対イラク政策で基本的に同調することに躊躇する必要はない。たとい政策を同じくしたとしても、それが民主党の主体的な思想の選択であれば、全然問題はない。むしろ、民主党は、アメリカでは民主党も共和党も国家の外交や教育など国家の基本政策にほとんど差がないことを知るべきである。イギリスの二大政党の場合も同じである。民主党は自民党と国家の基本政策で一致することをためらう必要はない。


それにしても、日本の政治がもっと合理的に効率的に運営されるためには、どうしても、政党を再編成する必要がある。どう考えても、西村慎吾氏と横路孝弘氏が同じ政党に所属することなど本来ありえないのである。少なくとも政党が理念や哲学に従って党員を結集している限り。


日本の政党は理念や哲学に基づいたものにはなっておらず、民主党も自民党も一種の選挙対策談合集団になっていることである。これは日本の政党政治の最大の欠陥である。早く政界は改革されなければならない。


具体的には、自民党と民主党はそれぞれ再度分裂して、自由主義に主眼を置く政治家と民主主義に主眼を置く政治家が、それぞれの理念に従って自由党と民主党の二つの政党で再結集し、二十一世紀の日本の政治を担って行くべきだ。もちろん自由党は経営者・資本家の立場を代弁し、民主党は勤労者・消費者の利益と立場を代弁することになる。そして、自由主義と民主主義のバランス、両者の交替によって日本の政治を運営して行くのが理想である。もちろん、自由党も民主党も、両者とも、まず国家全体の利益を、国益を優先する国民政党であることが前提である。

(三)

教育、外交、軍事、社会保障などの国家の根本的な政策では、自由党も民主党も八割がた一致していてよいのである。また、そうでなければ、国民は安心して民主党に政権をゆだねることができない。民主党の新しい指導者たちは、これらの点をよくよく考えるべきだと思う。


岡田克也代表の辞任を受けて、後継者選びが民主党で本格化している。しかし、その経緯を見ても、民主党が、その党名にもかかわらず、日本国民を「民主主義」をもって指導し、教育できる政党ではないことを示している。


党代表の選出にあたって、選挙ではなく、どこかの料亭で、「有力者」(鳩山由紀夫、小沢一郎氏など)が話し合い(談合)によって、決定しようというのだから。

この一件をもって見ても、鳩山氏らの民主主義の理解の浅薄さが分かる。
民主党の幹部の体質の古さは、昔の自民党以上である。


民主主義とは、言うまでもなく、決して党内の個人の意見を画一化することではない。党の構成員の意見が異なるのは当たり前で自明のことである。むしろ、指導者は党員の意見が互いに相違して、議論百出することを喜ぶぐらいでなければならないのに、鳩山氏は、「選挙になると必ずしこりが残るから」という。


党内での多数決意見が組織の統一見解として採用されたからといって、個人は自己の意見を変える必要はない。少数意見の尊重という民主主義の根本が、分かっていないのではないか。


会議のなかの議論を通じて少数意見者に認識に変化があり、自らの意見を多数意見に変更するかどうかは全く次元が異なるのである。納得が行かなければ、多数意見に変更する必要はない。


またそれと同時に、少数意見の持ち主は党内で議決された多数意見には規律として従うという民主主義の最小限のマナーも弁えない者が、民主主義を標榜する民主党の中にいる。


組織としての党の決定に、規律に従うことと、個人の信条として多数意見に反対であることが両立するのでなければ民主主義政党であるとは言えない。この民主主義の基本さえ十分に理解されていないように思われる。だから、鳩山氏や小沢氏は党代表選挙を避けようとするのである。
これでは、民主党は国民に対する民主主義教育という重大な職責さえ果たせないだろう。


民主党は何よりも、識見、モラルともに卓越した真の民主主義者の集団であるべきであるのに、未だそうなってはいない。民主党員が、とくに、その指導者たちが民主主義の思想と哲学をさらに研鑚され、民主党を真の民主主義者の集団として自己教育を実現することによって、国民にとって民主主義者の模範となり、尊敬を勝ち取れるように努めてほしい。そうなれば国民も安心して民主党に政権を託すようになるだろう。


また、自由党の党員もまた、自由主義者として自由の哲学をしっかりと身につけ、国民の幸福にとって不可欠な自由の護民官として活躍することである。日本の政治は一刻も早く、自由党と民主党の二つの政党で交互に担われるようになることを願うものである。国民もこの「政治の概念」をしっかりと理解し、それが実現するように行動すべきである。

05/09/13

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