アブリル - どこにでもあり、どこにもない

岡崎平野を中心とする 植物 と カメラの対話

サルスベリ - 2種類のおしべ

2024-07-21 15:00:00 | みんなの花図鑑
サルスベリ(赤)

いきなりアップですが、サルスベリの雄しべです。



gifアニメ (前ピン 後ピン)

サルスベリの雄しべには 2種類あります。




もうひとつのおしべ






なぜ2種類の雄しべがあるのかということですが、黄色い花粉のほうは不稔性(生殖能力がない)で、虫の餌として機能しているのだそうです。






長い黒っぽい花粉の雄しべが本来の雄しべで、やや大型のハチが黄色いおしべの花粉の上に止まると、長いおしべがハチの背中や翅に本来の花粉が付くという仕掛けになっているのだそうです。




これが ハチの餌用花粉。





背の高いのが本来の雄しべ。




本来の雄しべの葯は黒っぽく、花粉粒がどんな色をしているのかよく分かりません。




もちろんはじめから長短役割の違う雄しべがあったのでなく、長いことハチと接する過程でこんな風に役割分担するようになったんでしょうね。




長い下を向いた稔性の雄しべの葯は(黒っぽくしか見えないが)地味な紫色で、ハチにありかを知らせ食べてもらう疑似雄しべ?のほうは 黄色で上を向いて派手です。




右が本物の雄しべで、左が雌しべです。
おしべの花糸は細いですが、雌しべの花柱は太くて丈夫そうです。
本物のおしべとめしべは同じくらいの高さにあります。そうしないと同じハチの背中に付いた花粉を受け取れないから。




めしべも本物の雄しべと同じようにカールしてハチの背中に当たりやすいように下を向いています。





サルスベリ(白)

涼しそうな白のサルスベリ。
サルスベリは漢字で「百日紅」と書くように7月から9月までと花期が長いです。




もちろん白いのは花弁だけです。
中心のシベの集団は 白も赤も同じ色のようです。




蕾が開きだしたところ。シベがくるくる無造作に巻かれています。マンサクの花弁にもこんな時期がありました。




開いた花。雄しべに2つのタイプがあり、中心の黄色い花粉の集団と外側に大きく伸びてカールしている黒っぽい花粉の集団。






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カラスウリ - アルバム

2024-07-20 15:00:00 | みんなの花図鑑
(初出 2021-07-08)
カラスウリ

パッションフルーツの果実を取り上げたとき、かすかに思ったのですが、パッションフルーツの果実はちょっとだけカラスウリの実に似ているなと思いました。



つづけて、思いました。そういえば、今年はついぞカラスウリの花を撮ってないな、と。
(近くのマメツゲに絡まっていたカラスウリ雄株が家を建てるときに抜かれてしまった)




というわけで、過去ログよりカラスウリの(花と実の)画像をピックアップしてアルバムにしてみました。




外見はパッションフルーとはまるで違うけど・・・
私がパッションフルーツの実を開いて見て、かすかに カラスウリの果実に似ていると思ったのは・・・




かつてカラスウリの実を開いて食べてみたことがあったからでした (^_-)-☆





キカラスウリ

カラスウリの花は朝には萎んでしまいますが、キカラスウリの花は陽が出てからでも開いています。




キカラスウリの実は、私はまだ食べてみたことは無いのですが、話によると、(カラスウリよりは)食べられる、とのことです(^^ゞ




オオカラスウリ

「同属のカラスウリ,キカラスウリとの区別点として,本種は葉の表面のひどくざらつく毛が挙げられる.」(熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース「ウリ科 オオカラスウリ」)

「果実は、パッションフルーツ似のほぼ球形で、
緑地に白の吹っ掛け模様があります。
熟すにつれて模様は薄れ、橙色を経て赤に変化します。
完熟の実は、お奨めはしませんが、思ったより甘く食べられます。」(石垣島の植物通販「オオカラスウリ(塊根で越冬多年草)の種」)





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クイズ・トウダイグサ科でないのはどれ?

2024-07-19 15:00:00 | みんなの花図鑑
今から8種類の植物をお見せします。ほとんどが木本ですが、一部草本もあります。
8種類のうち7種類は「トウダイグサ科」です。
ではのこる一種類のトウダイグサ科ではないのはどれでしょう?


アカメガシワ(雌花)

アカメガシワは雌雄異株です。
これは雌株に咲いた雌花で、3つ伸びている羽根は柱頭部分です。



球状部分が将来果実になる子房です。



柱頭は受粉すると赤く染まります(そうならない種類もあります)。



受粉して子房が果実になりました。




アカメガシワ(雄花)

雄しべは多数伸びていて全体として球状になっています。



雄花は咲き終わると ぽとぽと地面に落下します。





トウゴマ(唐胡麻)

トウゴマは雌雄異花同株で、上の画像で左手の淡黄色が雄花、右上側の紅い人出のような柱頭をつけているのが雌花です。



雌花部分です。






雌しべの柱頭が赤いゼラチン質のヒトデのような恰好をしているのはオニグルミなどと同じです。





ナンキンハゼ

ナンキンハゼの花は雌雄異花同株ということになっていますが、種類によってはそう見えないものもあります。


たとえば、上2枚は 安城デンパークにある ’Tiny Cascade(タイニー・カスケード)’ という園芸品種ですが、いくら待っても雌花が咲きません。



’Snow mountain (スノー・マウンテン)’





斑入りのスノー・マウンテンですが、この木のばあいは1枚目のように雄花ばかりの穂をつけ、
その後花序の付け根部分に複数個の雌花を咲かせます。


’Metro Candle (メトロ・キャンドル)’



メトロ・キャンドルも雄花序が穂状に花をつけた根元に雌花を複数個つけます。
一般には まず雄花が咲いてのち雌花が咲くのがふつうなのですが、さらにそのあともういちど雄花が咲くという種類もあるようです。


’Summer Fringe(サマー・フリンジ)’


この木は 個体差かもしれませんが、雌花の数が多いように思えます。





シラキ





ナンキンハゼによく似た花を咲かせるのが、シラキです。
穂(総状花序)に最初雄花を沢山咲かせ、花序の基部(枝に近いほう)に雌花をつけるといわれています(雌花の写真がありません m(_ _)m)
ナンキンハゼと同様、穂が全部雄花ばかりのこともあるようです。




セイシボク(青紫木)

セイシボクは雌雄異株で、これは雌株に咲いた雌花です。


やはりナンキンハゼの雌花部分とよく似た感じです。
(セイシボクを見たのはこの時一度だけなので、雄株雄花の写真がありません m(_ _)m)






アオギリ

アオギリの分布は琉球、台湾、中国、インドシナの亜熱帯(まれに暖帯)で、日本の本州(伊豆半島、紀伊半島など)、四国、九州の沿海地方にあるものは半自生状態と位置付けられています。


花は雌雄異花同株で、これは雄花です。


非常にユニークな、まるで雌花の花柱と柱頭のような恰好をしています。

この雌しべの柱頭のような部分は複数の雄しべが合着して一本化したためです。複数の葯がよじれて模様を作っています。



つぎに、雌花です。


雌花の先には紅色の柱頭があります。





7月下旬の青い果実です。


9月の果実です。





ユーフォルビア

これは ユーフォルビアでも’ダイアモンド・スター’という園芸種の花です。


上では花序がよく分かりませんので、よく似た(そしてよく観る)’ダイアモンド・フロスト’ を近接撮影してみました。


ユーフォルビアの仲間は「杯状花序」といって、杯(カップ)状の器官の中に 雌花(めしべ)や雄花(おしべ)が生まれてきます。はじめに生まれためしべは子房がすぐ大きくなるのであとから産まれてくる雄しべのためにコップの外にぶら下がって杯(カップ)の入り口を占有しないようにしています。

トウダイグサ科の花序がみなこの特徴ある「杯状花序」であれば分かりやすいのですが、杯状花序はトウダイグサ科の中でもトウダイグサ属とニシキソウの仲間にだけ見られるもので、そうではないトウダイグサ科も多いのです。
(まぁ、これでユーフォルビアはトウダイグサ科ということ間違いなしですね (´∀`))



↓ 最後です
キャッサバ

これは西アフリカのベナンで撮影したものです。メモ代わりに撮影したものなのでピンボケ写真ですm(_ _)m


キャッサバ芋はアフリカの国々では主食です。


キャッサバは、茎を 25cm くらいの長さに切って、地中に挿すだけで根が出て、芽も出て、おおきくなります。
(サツマイモとちょっと似ていますね)


アフリカでは臼と杵で突いて柔らかくし、塩茹でにして灰汁を抜き、ココナツミルクを入れ煮て食べます。


キャッサバのでんぷんを取り出したものがタピオカです。
ここはベナンの(たぶん)「タピオカ街道」と言って、キャッサバ粉やタピオカ粉を街道沿いで直販しているところです。
キャッサバは花の写真が無くてすみませんm(_ _)m


以上を持ちまして、全8種が出そろいました。
このうち、「トウダイグサ科に属しない植物はどれでしょうか?ひとつだけお答えくださいm(_ _)m」












ハイ、答えは

アオギリ

でした \(^o^)/

アオギリは以前は アオギリ科という独立した科に分類されていましたが、現在では なんと アオイ科に含まれています。
私は現在の遺伝子を基にする分類が分かりませんので、アオイ科の花たちとまるで違うアオギリの花がなぜ同じ科にされるのか、納得がいきません。
(そういうわけで、外見だけで分類すれば 何科になるかな? って思考実験の結果、とりあえず トウダイグサ科などどうかしら?と思い、このクイズを作りました)


 というわけで
 お疲れさまでした (´∀`)
 ここまで長々とお付き合いくださりありがとうございました!







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デンパーク・コレクションより

2024-07-18 15:00:00 | みんなの花図鑑
安城デンパークには デンパーク・コレクションと言って デンパークが導入したコレクションの数々が季節に合わせてフローラルプレイス(大温室)に展示されます。
先日紹介した フィカス・アスペラ もデンパーク・コレクションのひとつでした。
今日はそのとき一緒に展示されていた他3種を掲載します。


マイソルヤハズカズラ








マイソルヤハズカズラ (Thunbergia mysorensis)は インド・ニールギリ高地原産、キツネノマゴ科の熱帯つる 植物です。つるは6m以上にもなります。春ごろに長さ 30~60cmの花穂を下垂させ、黄色と赤色の変わった形の 花を多数着けます。
日本へは1976年に持ち込まれ、デンパークへは1999年に 導入されました。

(京都府植物園の解説)
ツンベルギア マイソレンシス
インド南部が原産で、高さ6~8mになるつる性の 多年草です。
花は、腋生または頂生で、長さ40~100cmの下垂した総状花序に30以上の花がつき、基部から順 に咲きます。花は縦長の筒状で、先端が5つに別 れ大きく反り返ります。花の基部と大きく開いた内 部は濃黄色で、暗赤褐色の裂片とのコントラストが 印象的です。苞も暗赤褐色で蕾の時から美しい姿 が見られます。




イエライシャン





イエライシャン (Telosma cordata)は、中国南部~ インド・ベトナム原産、キョウチクトウ科の熱帯つる性植物です。
イエライシャンとは中国語で『夜来香』という意味で、夕暮れから夜にかけて甘く濃厚な強い香りを放ちます。香水 として利用されるほか、料理にも用いられます。
デンパークへは1999年に導入されました。





ストロファンツス・プレウシィ






ストロファンツス・プレウシィ(Strophanthus preusii)は熱帯アフリカ原産、キョウチクトウ科の常緑 低木です。属名のストロファンツスは、ギリシャ語の 「ねじれたひも」に由来し、開花時にほどけながら花弁の 先が伸長していく不思議な花のかたちをしています。 この仲間は薬用成分(ストロファンチン)を含んでおり、 強心剤として利用されます。
デンパークへは1999年に導入されました。







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ソラヌム(ナス属)の仲間たち

2024-07-17 15:00:00 | みんなの花図鑑
最近撮ったタマサンゴと 昔撮ったソラヌム属の花と実

タマサンゴ

この画像をGoogle Lens で検索すると、
 1. ホオズキ属
 2. ナランジラ
 3. ミニトマト
 4. タマサンゴ
の順に候補を挙げてきます。大きさも判らないので仕方ないですが、正解は タマサンゴです。
タマサンゴは学名を Solanum pseudocapsicum といい、ナスの仲間です。
ナス属(Solanum ソラヌム)の花はよく似ています。今日はこれを確認してみましょう。



属名の Solanum は、ラテン語のsolamen「安静」が語源で、この属に鎮痛作用を持つものがあることから。



種小名の pseudocapsicum は 「偽のトウガラシ(Capsicum annuum)」という意味です。



雄しべは5本で黄色い筒が葯で、めしべを抱くようにしています。
ナス属(ソラヌム)はみなこのようなシベの形をしています。





イヌホオズキの仲間

イヌホオズキ(在来種)の学名:Solanum nigrum
オオイヌホオズキ(外来種)の学名: Solanum nigrescens

イヌホオズキの仲間の果実(2021-11-23撮影)




ワルナスビ

これは 愛知県緑化センターのヤブサンザシの畑のワルナスビです。
ワルナスビの花は このようにイヌホオズキの花にそっくりです。(2019-7-09 撮影)


ワルナスビの果実 (2019-11-14 愛知県緑化センター)
学名:Solanum carolinense
種小名の carolinense は 「カロライナの」という意味。



ルリヤナギ 

学名: Solanum melanoxylon
melanoxylon は 「黒材、 黒木」




ジャガイモ

ワルナスビの花そっくりなジャガイモの花
学名:Solanum tuberosum
tuberosum は 「 塊茎(状)の」




ナス

雄しべの黄色い葯胴は2室×5組。中心から緑色のめしべ柱頭が出ています。よくみると柱頭も5つの頭をもっています。
学名:Solanum melongena
melongena は 「リンゴを生ずる、 ウリのなる」




ソラヌム
ソラヌム
観賞用ナス
ソラヌム
撮影日: 2017-08-22




ヒヨドリジョウゴ



学名:Solanum lyratum
種小名 lyratum は 「頭大羽裂(英. lyrate)の、竪琴状の」






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木立ベゴニア - ふたたび

2024-07-16 15:00:00 | みんなの花図鑑
雌花

安城デンパークのフローラルプレイス(大温室)にあった木立性ベゴニアです。
分類上は シュウカイドウ科のベゴニア属(シュウカイドウ属)。
こういう咲き方を園芸では シャンデリア咲き と呼んでいるようです。
デンパークのサイトの説明によると
「ベゴニア‘アメリア’( Begonia spp.)は熱帯から亜熱帯を原産とする、シュウカイドウ科の多年草です。可憐な淡いピンク色の花弁だけではなく、葉の水玉模様や赤褐色の葉裏など、葉の美しさも見どころです。」



雄花と雌花は(横から見れば)容易に区別ができます。雌花には 雄花に無い子房が花弁の下(画像では上)に付いているからです。





ただ、正面から見るとベゴニアの雄花と雌花はよく似ています。どちらのシベもこのように黄色い色をしています。





黄色い器官は柱頭(花粉を受け取る器官)です。




雄花

ベゴニアの雄花と雌花が正面から見るとよく似ている理由は 雄花の雄しべと 雌花の雌しべの柱頭が、両方とも黄色で同じような形をしているからです。
なぜこんなに似ているのでしょうか?



その理由について、以前、少し考えたことがあります。
虫媒花はふつう花粉と蜜を提供して、花粉をめしべに運んでもらいます。
ところが、ベゴニアは蜜腺を持たない花で、花粉を媒介してくれる虫たちには「花粉のみを報酬とする花(花粉花)」だったのです。



その帰結として、雄花は花粉を与えることで虫を呼ぶことができるが、雌花は花粉をもたないので、そのままでは虫を呼べません。ベゴニアは雌花に虫を呼ぶためにあれこれ対応策を考えました。その結果、めしべの柱頭を雄しべに似せた形に(擬態)することで虫たちがおしべと勘違いして柱頭に止まってもらうことを考えたのです (´∀`)
(このあたりのことは Web site of FUKUHARA, T. (Fukuoka Univ. of Education) 「6-5-1. 報酬としての花粉」を参考にしました。)






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「フィカス」といえば ♪

2024-07-15 15:16:12 | みんなの花図鑑
フィカス・アスペラ

おいしそうな実がなっています。名前が難しいですが、見ての通り、フィカス(Ficus)というのは「イチジク属」のことなんです。このフィカス・アスペラは安城デンパークの「デンパーク・コレクション」のひとつです。





フィカス・アスペラ(Ficus aspera)は、南太平洋諸島原産 クワ科の樹木で、成長すると15mにも達します。



実にも縞模様が入ります。



デンパークへは2003年に導入されました。(以上、解説板の説明より)
欄外ですが・・・
おいしそうですが、食用には適さないそうです。
Ficus aspera は学名なので、ラテン語読みして フィクス・アスペラが正しいと思います。
種小名の aspera は「表面がザラザラした」という意味のようです。







フィカス・ウンベラータ

散歩の途中の個人宅玄関先に置いてあった立派な観葉植物。
名前を フィカス・ウンベラータ(Ficus umbellata)と言います。
ウンベラータ(Umbellata)という種小名は、ラテン語の「日傘(umbella)」に由来し、日傘のような大きな葉っぱに因んでいます。




大学時代の友人から授かった我が家のウンベラータ。
毎年冬にはっぱを落としてしまいますので、細い幹の上の方にだけ大きな葉っぱが付いていますm(_ _)m



西尾市憩の農園で売られていた完成形のウンベラータです(^^ゞ





フィカス・エレクタ
イヌビワ
私がはじめて撮ったフィカス・エレクタ(2016-7月 撮影)



大きさが分からないと イチジクとしか言いようが無いですよね



見た通り (上の フィカス・ウンベラータと同じく)フィカス(イチジク)の仲間で、
学名を Ficus erecta(フィカス・エレクタ)と言います。
erecta は 「直立した」の意。




フィカス・エレクタの 和名は?
残念なことに、イチジクとは全然関係のない「イヌビワ」となっています。ビワの面影なんてどこにも無いのに (´・ω・)


おまけで、フィカス・エレクタの葉の細い品種

学名 : Ficus erecta form. sieboldii
品種名の sieboldii は 「シーボルトの」の意。




最後に、
イチジク

いわゆるイチジクは 学名を Ficus carica といいます。 caricaというのは パパイアのことらしいです。
ただし、画像は 冬のイチジク(2019-12月)で、果実は小さくて元気がないです。






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エキナセア - ハリネズミの正体

2024-07-14 15:00:00 | みんなの花図鑑

エキナセアはキク科キク亜科の花です。キク亜科というグループの頭花は 周囲の花弁状の舌状花と中心の盛り上がったシベ相当部分を担当する筒状花の両方で構成されています。(筒状花ばかりで出来ているグループがアザミ亜科、舌状花ばかりで出来ているのがタンポポ亜科です)


(上の画像の筒状花部分だけをトリミング)

エキナセア(Echinacea)というのは属名ですが、これは「ハリネズミ」を意味するギリシャ語の εχινος (エキノース)から来ているのです。
この花の中央に盛り上がった筒状花部分を見れば、だれもがハリネズミを連想するだろうことは容易に想像できます !(^^)!



ところで・・・

このハリネズミの針のような部分は 筒状花の何なんでしょうか?
通常の筒状花はおしべ、めしべ、花冠、萼片があります。
でも、ハリネズミの針はこのどれでもないようです。
とすると、このサボテンみたいな部分は筒状花の何なんでしょうか?




中央に暗褐色の雄しべ筒の頭に黄色い花粉を盛り上げた筒状花があります。(雄性期の筒状花)


そしてこちらは雄しべ筒から出てきためしべが頭を2つに割りカールの内側に柱頭を展開しているところです。
大事なことは、筒状花の要素(花冠、雄しべ筒、めしべ)のどれとも ハリネズミの針のような器官は該当しないことです。針は筒状花とは別のところからそそり立っています。







同じような画像ばかり続きますが、こちらは 花粉を持ち上げている雄しべ筒のエリアにも 柱頭を展開した雌しべの一帯にも、いずれのエリアにもそれとは別にハリネズミの針がそそり立っています。





私たちはこれまでずっと、この花が「ハリネズミ」と呼ばれるのは 筒状花の剣山のような姿からだと思っていましたが、実は別の説があったのです。
それは「花の下にある(ほう:つぼみを包んでいた葉っぱ)の先端がとがっていて、それがたくさん付いた姿」からハリネズミのようだとした説があり、図鑑などではこちらの説の方が優勢だというのです。
にわかには信じがたいですが・・・
とすると、筒状花の針の部分は苞ではないから別の器官ということになります。




その後さらに検索を進めたところ、鱗片というタームで説明されていることが分かってきました。
以下、いくつかの記事の抜粋です:

「花の中心で咲いている極小の筒状花(とうじょうか)には、尖った鱗片があります。
この筒状花が密集してできた頭状花序は、硬くトゲトゲしていて針山のような印象を受けます。」(design earth「エキナセアの特徴」)

「筒状花は暗赤褐色で,鱗片は橙赤色.」(熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース「ムラサキバレンギク」)

「属名の「エキナセア、またはエキナケア(Echinacea)」は、ギリシア語の『echinos「エキノース(ハリネズミ)」』に由来し、一つひとつの筒状花の先に、尖った鱗片が棘のようについている様子からといわれます。」


「学名のEchinaceaはechinos(ハリネズミ)より、花床に付いている鱗片が刺状であることから名づけられています。」(髙橋園芸株式会社「Vol.30 エキナケア」)

「花床には堅い橙赤色の鱗片が着き、この鱗片が筒状花より長く、先端が尖って刺状になるのも特徴です。」(エキナセア - 美瑛町(びえい)でバラづくり)

「属名は「ハリネズミ」の意で、花床にかたい刺状の鱗片があることに因む。」(gooブログ・peaの植物図鑑「岩手県立花きセンターのエキナセア/ムラサキバレンギク」)

「属名のエキナセアは ギリシア語の echinos(ハリネズミ)に由来、
 一つひとつの筒状花の先に、尖った鱗片が棘のようについている様子からといわれます。」(楽天ブログ「だい」のひとりごと「載せ遅れた花はエキナセア、モミジアオイ (10)」)








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タニワタリノキとブラシノキ - 白い雄しべ

2024-07-13 15:00:00 | みんなの花図鑑
白い花糸が特徴的な樹に咲く花を2つ。

タニワタリノキ

タニワタリノキは 日本(九州南部~沖縄)、中国、ベトナム、インドネシアなどに分布するアカネ科の常緑樹です。



「タニワタリノキ」とは面白い名前ですが、由来は「谷間の多湿地を好んで自生することからと言う」(GKZ植物事典)という説明が多いですが、理解力の無い私にはそういう説明だけではどうも由来がよく分かりません。



「名前の由来は谷沿いを渡るような感じで生育していることからだそうです。」という説明がありました。(NHK趣味の園芸 ドブたぬきの部屋さんのアルバム「タニワタリノキ」)
この説明には「タニ」と「ワタリ」が含まれていますのでより分かりやすいです。
要は「谷を渡る」ということがどういうことなのか理解できればいいようです。




Oxford Languages によると【谷渡り】とは
1. 谷から谷へ渡って行くこと。
2. うぐいすなどが、谷から谷へと渡って鳴くこと。その鳴き声。
とあります。

また、日本国語大辞典には 上記の他
木の枝などが、谷のこちらから向こうへ渡ってのびていること。谷に生えわたること。
とあります。(太字引用者)

こういう定義からすると、タニワタリノキが「谷から谷へと渡って生えていること」に由来するということなんでしょうね、きっと !(^^)!




タニワタリノキの花は、夏の花火のような球形の花序が特徴ですが、今日の関心はその球を構成するたくさんの小花についてです。



一つ一つの小花は長さ2センチ弱の筒状で、細長く飛び出すのは雌しべ(花柱)。5本ある雄しべは花筒の口部にとどまり、シベの基盤となる花托(花床)には剛毛と棍棒状の小苞がある。(庭木図鑑植木ペディア「タニワタリノキ」)
要するに、花冠は細長いラッパ状なのです。
でも、雌しべは花冠の外に長く伸びていますし、雄しべだって開口部にあります。おそらく蜜は花冠の付け根にあると思われますが、蜜を採取できるのはチョウなどの昆虫に限られている気がします。
ところが上の画像のように奥の蜜まで届く舌をもっていなさそうな昆虫が訪花しています。これは何を求めてきているのでしょう?



ブラシノキ

Google Lensで検索すると、「白いブラシノキ」とか「カリステモン・ファインリーフ」と言ってきます。




カリステモン(Callistemon)というのは「美しい雄しべ」(「kallos(美しい)+ stemon(雄しべ)」)という意味のことはご存じと思います。



つぼみのとき、雄しべは巻き取られたようにつぼみの中に納まっているようです。


雄しべの間に めしべが一本、緑色をして伸びていますが、これは巻き取られてはいないようです。




赤花のブラシノキ(カリステモン)で確認

雄しべはまだ糸巻き状態ですが、雌しべは一本だけすでに伸びています。


やがて雌しべを覆うように、たくさんのカリステモン(美しい雄しべ)が成長してきます。






ティーツリー

逆に「白いブラシノキ」で検索すると、ティーツリーのブログ記事がヒットします(´・ω・)
ティーツリーはブラシノキ属 Callistemon と同じフトモモ科ですが、メラルーカ属(コバノブラシノキ属) Melaleuca に属します。


ティーツリー と ブラシノキ (2) - フトモモ科


ティーツリーとスモークツリー





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ヤブジラミとニンジン - セリ科の花

2024-07-13 09:07:09 | みんなの花図鑑
ヤブジラミ

ヤブジラミという名前は 「やぶに生え、果実にカギ状に曲がった刺があり、シラミのように衣類にくっつくことからこの名がつけられた。」(三河の植物観察「ヤブジラミ」)
だとしても、ヤブジラミという名はひどいと思います・・・




こんな可愛い花なのに... しかも在来種なのに... 名前のおかげでだいぶ損をしています。




花弁の下に将来果実になる子房があります。
左上の花が受粉して花弁を落としているので子房が見えます。




子房の周りには棘がいっぱい出ています。棘はやがて剛毛となり「ひっつき虫」に成長します。
果実は古くから蛇床子という漢方薬として皮膚の塗り薬として使われていました。
学名を Torilis japonica といいます。
語源辞典によりますと、
Torilis fこちら を参考にどうぞ。





ニンジン

ニンジンもヤブジラミと同じくセリ科の植物です。




原産地はアフガニスタンです。
国内で栽培されているものはヨーロッパから入ってきた「西洋系」と、中国で改良された「東洋系」の2種類に分類され、西洋系が現在の日本の主流だそうです。




この写真ではよくわからないのですが、ニンジンの花には 雄しべ期と雌しべ期があるということです。




雄しべは5個あり、5個の花弁の間に5個の雄しべが伸びています。
葯が花粉を出し終わると、花の中心にある雌しべが成熟してピンクになり他の花からの花粉を待ちます。








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