地下駐車場だった空間で江戸前ハーブが育つ=
従業員とともに収穫作業をする村田さん(右)
カマを使い、丁寧に収穫されるマイクロハーブ
収穫後、すぐにパック詰めされる
「江戸前ハーブ」の第1工場。もとは町工場だったという
「マイクロハーブ」をご存じだろうか。発芽して間もない野菜の新芽のことで、3~5センチ程度と小さい。羽田空港からほど近い大田区大森本町にある「江戸前ハーブ」の第2工場では、シュンギクやオクラ、パクチーなど約20種が栽培されている。収穫されたばかりのマイクロハーブを口に運ぶと、豊かな香りと、濃い味わいが広がった。
工場は、一見普通のマンションのような建物の地下にある。元々は駐車場だったスペースで、広さは約260平方メートル。土を敷いたトレーに種をまき、光合成を促す赤紫色のLEDライトで照らし栽培している。江戸前ハーブ代表の村田好平さん(32)によると、室内栽培は水耕が主流だが「土を使うことでより風味が凝縮され、日持ちがする生命感のある野菜を育てることが出来る」という。
兵庫県出身の村田さんは、大阪大在学中にワーキングホリデーでオーストラリアを訪れ飲食店で働いた。卒業後は、大阪のレストランでシェフになったが、実力不足を痛感して退職。そんな時、マイクロハーブ栽培などを手がける広島県の農家を知った。高級レストランなどに野菜を卸す「感謝され、稼げる農業」に感動し、弟子入りした。
独立の場所として選んだのは、東京だった。「大消費地で地産地消の農業を」と考えたからだ。SNSで様々な海外の実践例を調べて「室内」「土耕」「東京」を掛け合わせた今のスタイルにたどりつき、2021年6月、起業した。
「江戸前ハーブ」の第1工場。もとは町工場だったという
同じ大田区内の約60平方メートルの工場からスタートしたが、鮮度が良く安定的に供給できるマイクロハーブは、都内のレストランなどで大人気に。昨年6月、第2工場を新設した。「東京で愛される野菜を東京で作り続けていきたい」。村田さんの目が輝いた。