うっかりユーザのパソコン奮闘記

パソコンを使っていて感じたあんなこと、こんなこと、気ままに書いていきます。

冗長

2012年02月05日 | 忘れかけていたこと

システム用語に「冗長」という奇妙な言葉がある。
むかしふうの意味では「むだに長い」だが、普段はむだに見えてもいざというときに役に立つようにしておくことを冗長構成と名づけたらしい。
変な呼び方をして冗談ではないと言いたいところだが、冗談ではなくまじめに設計すると、信頼性を高めるにはこういう部分が必要になってくる。

2月に入って早々、東京証券取引所の株式売買システムが動かなくなり、300銘柄が売買不能になった。
ぎりぎりのところで取引をしそこなった人は顔色を変えたかもしれない。
必ずいつかは故障を起こす運命にある機械が故障しただけのことだが、冗長構成によって、はいそれではこちらへ、と切り替えたところ、それが巧くいかなかったらしい。

動いているシステムに故障が起きると、そこにつながっていた部分を、もう一度代役のシステムにつなぎ替えなければならない。故障のときだからいっせいにそれが行われる。代役さんは大変で、ふうふう言いながら切り替えを受け付けていると、新しいお客さんもお構いなし押しかける。
そのときには、つなぎ替えのお客さんか、新規のお客さんかを見分ける暇はないだろう。
そこでさばききれずにバンザイということになってしまう。

冗長構成が2重では心配だからと、3重に仕組まれていれば、こういう怪我はいっそうひどくなる。

冗談もほどほどにとよく言われるが、冗長構成もちょうど良い加減にするのは難しい。
生きもののような化け物のような株式を扱うシステムでは、律義者のプログラマーがいくら理論を積み重ねても、その世界に潜むリスクに対抗することは、通り一遍のシミュレーションで片付くものではない。
想定外だの、リスクがどうだのと言っても、およそ想定できないのがリスクの本質なのだから、人間の思惑が大きく絡んだことを扱うシステムでは、どこからが冗長なのか冗長がどこまで必要なのか、見当のつけようがないのではないかという気がする。
中途半端なシステムに悩まされる人たちは、冗談ではないよと言いたいところだろう。