五島列島や平戸の近海で獲れた飛び魚(あご)を
炭火で焼いたあと天日干しにしたのが高級とされる焼きあごです。
炭火で焼いたあと天日干しにしたのが高級とされる焼きあごです。
と、前回の投稿で書きましたが
五島・平戸産か?
そうでないかは手に取るだけでわかります。

長崎産と表示の焼きあごと五島・平戸と表示の品は
全然別物です。
長崎産表示の焼きあごは
全国各地で取れた飛び魚を長崎県の加工場に集めて
ガスの火で焼いて(一部炭焼きもあるかもしれません)
焼きあごに加工したものです。
五島・平戸産表示のは五島列島から長崎平戸近海で毎年9月頃の時期に
取れた飛び魚を原料にして炭火で焼いています。
この違いが結構重要です。
五島列島には飛び魚の産卵場所があります。
回遊魚である飛び魚は一年かけて旅した後
春ごろに産卵の為五島列島に帰ってきます。
その春に生まれた稚魚は8~9月秋になると
その習性から一年の旅に出かけます。
まだ未成魚なので小型(15cm位)で体は引き締まっており
アブラはのっていません。
これが高級焼きあごと言われる由縁でもあります。
近年
漁業従事者の高齢化・後継者減少・地球温暖化問題の
影響などにより原料不足で価格は徐々に上がる傾向にありました。

五島軒開業当時は五島列島の生産元から
9kg入りを業務用として仕入れていました。
1kgが3000円位でした
商売をするうえで、
中間業者を通さず直接取引をするというのは
安く仕入れられる反面
ある危険性を秘めています。
弱小店舗では特に気を付けたい出来事に翻弄されます。
五島軒開業から3年経った9月頃
焼きあごの新物が出回るのを見込んで、
在庫を使い切った頃に注文を出したところ、
先方のから突然の通告が・・・・・
「今年は原料の飛び魚が不漁で
焼きあごが不足している為お送り出来ません」
え!何それ!
取り敢えず何キロかでも無いと困るのですが・・・
「申し訳ありません。現在出荷できる物がございません」と。。
(´;ω;`)ウゥゥ
突然ですよ。
これが生産地の対応でした。
焼きあごは1年に9月頃しか捕れないので
来年までお待ちください。
と、すご~~~~~~~い事をおっしゃる。
これが「焼きあご」という材料としての特徴でもあります。
急遽ネットで焼きあごを取り扱っている卸問屋を探して
倍くらいの値段でしたが
ようやくその場をしのぎました。
五島列島以外のいろいろな方面を探しているうちに
長崎県平戸の生産業者にたどり着きました。
値段も1キロ2500円の卸値で納めてくれるという。
まさに地獄で仏に出会ったような。
今では信じられない値段ですよね。
それからは何事もなく数年が過ぎたのですが、
平成18年ごろ 再び深刻な事態になります。
五島列島の業者と取引していた時と
全く同じ事が起きたのです。
原材料高騰に加えて
焼きあごの知名度が全国規模で上がりました。
急激に焼きあごが高騰した原因は
大手だしメーカーの原料買い占めで、
飛び魚が一旦漁港に出て焼きあごに加工される前に
漁師から直接買い付けるメーカーまで現れます。
一時ネットを含め市場から五島・平戸産が消えました。
ひどい時など1キロ1万円位の値段がついていましたね。
それまで長らく取引していただいていていた平戸の生産業者からも
突然
いくらお金を積まれても無いものは無い的な
事を言われ、まさに窮地に立たされます。
仕入れの注文を出したら
これを突然言い渡されます。
五島軒を閉める2年位前の話です。
(´;ω;`)ウゥゥ
どうしよう!どうしょう!😞 😞
ほかの材料(昆布、煮干し、シイタケなど)を
仕入れていた地元業者にその事を話すと
その食材卸業者の担当から
会社で焼きあごを仕入れられるルートが有りますよとの事。
個人の小さな店は地元の食材卸業者と付き合いも大事だと
痛感しましたね。
・その焼きあごは長崎産ではあるけど、五島や平戸産ではない。
・値段が4000円と、今までより高い。
・急に有りませんなど言わない。
こんなことを条件に業者から仕入れることになり、
何とか営業持続できました。
しかし、長崎産焼きあごは
それまで使ってきた焼きあごとはやはり違っていました。
単体でだしをとると分かるのですが
見た目も違います。
五島や平戸産は小ぶりで硬く締まっています。
2つに折るとパキッと折れる感じです。
長崎産は2つに折るとき
折れやすくバリッと折れるかんじです。

五島軒のスープは初期の頃は
焼きあごの比率が多かったのですが、
原価計算や他の材料との相性など
いろいろ試行錯誤を繰り返すうち比率は下がっていました。
しかし看板に掲げているいじょう
無くてはならない材料であるのは間違いないわけです。
では、純和風のラーメンを目指すとき
焼きあごを使うべきか?
と、今 問われれば
全くその必要はない
これが10年やってみた私なりの答えです
煮干しや節などの材料を主体にしても
美味しいラーメンは出来ますし
焼きあごを沢山使えばラーメンスープが
より美味しくなる訳でもありません。
ただ煮干しラーメンを作る場合は注意が必要ですね。
煮干しは焼きあごとは違い癖が強い素材です。
使い方によっては良くも悪くもなりえます。
焼きあごの良いところは
うまみは強いのに雑味やえぐみ等の癖がない所です。
スープを仕込んでいてもほとんど失敗することがありません。
特に五島列島産焼きあごはその商品名だけで
メニュー表示の際に高級ブランドとしての力もあります。
もうあり得ない事ですが
もし、もう一度ラーメン屋をやるとすれば
煮干しを主体にしたラーメンを研究してやるでしょう。