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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ベスト・キッド」

2010-08-29 06:29:30 | 映画の感想(は行)

 (原題:The Karate Kid)ジョン・G・アヴィルドセン監督によるオリジナル版(84年)と最も異なる点は、主人公に技を教える師匠が日本人から中国人に変わっていることだ。まさに時代の流れを反映している。80年代の世界の経済界は日本が主役の一翼を担っていた。ハリウッドとしても日本を無視するわけにはいかなかったのだろう。

 84年版ではノリユキ・パット・モリタ扮する老師の、渡米後の苦難をリアルに切々と描くという、メジャーなアメリカ映画としては珍しく“マイノリティに気を遣った”ような描写が印象的だった。対してこのリメイク版は、アメリカ国内の話ですらない。主人公の一家がアメリカを“追われて”中国まで落ち延び、慣れない環境に戸惑う中で師匠に巡り会うというストーリーなのだ。

 父親はすでに亡く、自動車会社に勤める母親は不況のデトロイトではポストが見つからないため、製造拠点の移設先である中国に転勤するしかない。そこでは主人公一家の方がマイノリティになってしまう。中国に頼るしかないアメリカの産業界を象徴するような設定ではないか(デフレから脱却出来ない近頃の日本など、最初からお呼びではないのだろう)。

 転校先の中学校ではイジメられる主人公だが、そんな気勢の上がらない境遇を救うのがクンフーの達人である師匠である。それも、ジャッキー・チェンが扮していることにより興趣は俄然盛り上がる。初期の「酔拳」などで彼が教えを乞うた老師の役を、今はジャッキー自身が演じていること自体が感慨深いが、そのアクションは久々にキレの良さを感じさせる。

 主人公少年の大ピンチに現れたジャッキーは、一切パンチや蹴りを繰り出すことなく、フットワークだけで十数人の相手をKOしてしまう。この場面は、ここ数年の彼の活劇シーンの中もベストと言えるものだ。

 筋書きはオリジナル版とほぼ同じで、ストーリーを追う楽しみはないが、やはりスポ根もののルーティンを踏襲しているためストレス無く楽しめる。さらに、主人公役のジェイデン・スミスがスクリーン映えする存在感を見せる。彼はウィル・スミスの息子だが、親の七光りを感じさせない素材だ。身体能力が84年版のラルフ・マッチオと比べて格段に高く、表情が豊かで愛嬌もある。今後の活躍が期待出来よう。

 ハラルド・ズワルトの演出は取り立てて才気走ったところはないが、手堅い仕上がり。ジェームズ・ホーナーの音楽は格調高く、ジャスティン・ビーバーによるエンドテーマ曲も良い。安心して奨められる娯楽編である。
コメント (1)
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