元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「永遠のマリア・カラス」

2010-08-22 06:22:13 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Callas Forever)2002年イタリア=フランス=イギリス合作。伝説的なオペラ歌手マリア・カラスの晩年を描く。ハッキリ言って実につまらない映画だ。だいたい、この設定を考えた奴は万死に値するとさえ思う。

 50代にして全盛時の声が出ないことを理由に引退したカラスが、若い頃の音源を利用した口パクのオペラ映画にホイホイと出演し、しかも出来上がった後で“こんなものを世に出すにはプライドが許さない”とばかりにジャンク処分を迫るなどという馬鹿げた筋書きを目の当たりにすれば、世の多くの心あるオペラファンは怒り心頭に発するであろう。

 カラスというのはこんなに愚かな女だったのか? いや、それならそれでも良い。その愚かさを全面開示して観る者を納得させれば映画として筋は通る。しかし、ここに描かれるカラスは目先のことしか考えない退屈な俗物だ。これでは映画的趣向のカケラもない。

 しかも劇中劇で描かれる「カルメン」のオペラ映画が致命的にショボく、かつてカルロス・サウラやフランチェスコ・ロージが手掛けた映画版「カルメン」とは雲泥の差。本作の監督フランコ・ゼフィレッリが昔作った「トラヴィアータ(椿姫)」よりも大幅に落ちるというのだから困ったものだ。

 とにかく、おそらくはカラスを賛美する目的で作られたであろう本作が、結果としてカラスを貶めることになったのだから、スタッフは猛省すべきであろう。主演のファニー・アルダンの熱演だけが唯一の救いである。
コメント
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