猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

女王フアナ

2021-04-10 22:23:52 | 日記
2001年のスペイン・イタリア・ポルトガル合作映画「女王フアナ」。

15世紀後半のヨーロッパ。スペインを統一したイザベラ女王の娘フアナ
(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)はハプスブルク家のフェリペ王子(ダ
ニエレ・リオッティ)に嫁ぐ。政略結婚にも関わらず2人は激しく愛し合
うが、ほどなくフアナはフェリペの度重なる浮気に悩まされるようになり、
同時に周囲の陰謀に巻き込まれていく。

不実な夫に対する激しい嫉妬から「狂女フアナ」と呼ばれたフアナ女王の
半生を描いた史実ロマン。スペインでは大ヒットしたそうだ。スペインの
イザベラ女王の娘フアナは16歳でフェリペ王子と結婚する。フアナはフェ
リペに一目惚れをし、フェリペも美しいフアナを気に入ったためしばらく
の間は熱愛の日々を過ごすが、フェリペはやがて他の女たちと浮気をする
ようになる。嫉妬の炎を燃やすフアナの行動は次第に常軌を逸していく。
そして民衆に絶大な支持を受ける女王となったフアナだが、政府の要人た
ちはフアナから王位を剥奪しそれをフェリペに与えようと画策するように
なる。
フェリペ役の俳優はそんなに美男ではないのだが、実際のフェリペはかな
りの美形だったらしい。まだ16歳のフアナにとっては初恋だったのでは
ないだろうか。フアナはフェリペに夢中になるが、彼は不誠実な男で、フ
アナは常に夫の浮気に悩まされるようになる。あまりの嫉妬深さから王宮
で「狂女」と言われるようになるが、映画を観る限りでは確かに嫉妬深い
が狂っているという程には思えない。が、実際のフアナはかなり異常だっ
たらしく、映画は少しマイルドに描かれているのかな、と思った。
フアナは夫のことで悩みながらも政治はちゃんとやっていたようで、国民
からの人気は高かった。それでも宮中では「狂女に政治は任せられない」
という意見が出始め、王位を剥奪してフェリペに与えようという陰謀が起
こる。だがフェリペは実際は王の器ではなかったらしい。やがてフェリペ
が急病のため若くして亡くなると(暗殺説もあるとのこと)、フアナはます
ます精神に異常をきたしていく。そして修道院のそばの城館に幽閉されて
しまう。
フアナは75歳で亡くなるまで40年以上幽閉されていたが、最後まで退位
を拒み、女王であり続けたという。フアナとフェリペの間には6人の子供
が生まれているので、フェリペもフアナを嫌いではなかったのかもしれな
いが、まあ、女好きだったんだろうな。フアナももう少し割り切れなかっ
たのかなあと思う。時代に翻弄された気の毒な女性である。衣装は赤を基
調としている感じでフランスとかの王宮ものとはまた違う華やかさで、美
しかった。脇役でジュリアーノ・ジェンマが出演していて、衣装のせいも
あって初めは気がつかなかったのだが、年をとってもやっぱりかっこよか
った。




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再会の夏

2021-04-06 22:23:34 | 日記
2018年のフランス・ベルギー合作映画「再会の夏」。

1919年、第1次世界大戦が終わり、平和が訪れたばかりのフランスの田舎町。
猛暑が続く留置所の外で、黒い1匹の犬が昼夜を問わず吠え続けている。その
中では戦争の英雄ジャック・モルラック(二コラ・デュヴォシェル)が国家侮辱
罪で収監され、頑なに黙秘を続けていた。彼を軍法会議にかけるか否かを決め
るため、パリからやって来た軍判事のランティエ少佐(フランソワ・クリュゼ)
は、ジャックの体験した戦争の現実を調べていくうちに、農婦にしてはあまり
に学識豊かなジャックの恋人・ヴァランティーヌ(ソフィー・ヴェルベーク)と
幼い息子の存在が浮かび上がる。

ジャン・ベッケル監督による戦争をテーマにした人間ドラマ。戦争の英雄で武
勲をあげたはずのジャックは留置所に収監され、頑なに黙秘を続けている。真
相を調べるためにやって来た軍判事のランティエ少佐は、留置所の外で吠え続
ける1匹の犬に関心を寄せる。犬はジャックの愛犬だった。何故犬は留置所か
ら離れようとしないのか。忠誠心からなのか。何故ジャックは黙秘を続けるの
か。ランティエ少佐は真実を探り始める。
戦後を舞台にした物語で、もっとミステリーっぽい映画かと思ったら違ってい
た。特に悪人は登場しないし、どちらかと言えば感動系。ジャックは第1次世
界大戦の英雄としてレジオン・ドヌール勲章を授けられたが、その後国家侮辱
罪で収監されてしまう。ジャックが何をしたのかは後半でわかるのだが、そん
なことで国家侮辱罪になるなんて戦争があった時代なのだなあと思った。今だ
ったらそんなに大変なことかな、という感じなのだが。黙秘を続けるジャック
を取り調べるために派遣されてきたランティエ少佐は、ジャックの恋人である
ヴァランティーヌの存在を知る。
戦争で犠牲になるのはいつの時代も若者や女性たちだ。ジャックも英雄扱いさ
れているが少しも誇りに思っていない。「結局上層部は俺たちを犬のように服
従させようとしているだけだ」というジャックのセリフは胸に迫るものがある。
生還できた兵士たちも戦争という体験で深く傷ついているのだ。そんな彼らに
とって勲章はどれほどの価値があるのだろう。脱走兵が銃殺刑になるシーンは
観ていて辛かったが、兵士たちが酒を飲みながら歌を歌うシーンは良かったし、
少しだけ登場してランティエ少佐と会話する若い兵士も純粋さの象徴として描
かれていて、良かった。
ただ、ジャックが黙秘していた理由が結局それ?という拍子抜け感は否めなか
った。彼の誤解というか早とちりが原因だったのに、彼は死刑さえ望んでいた
のだ。ランティエ少佐は振り回されて、お疲れ様という感じ。それにヴァラン
ティーヌが何故学識豊かなのかもよくわからなかった。そこがポイントになっ
ているのかと思ったのだが。彼女は読書家で、それが理由?それだけ?という
感じはする。映画の原題は「Le collier rouge」で「赤い首輪」という意味だ
そうだ。レジオン・ドヌール勲章のリボンは赤いのでそれを指している。原題
を考えると感慨深いものはあるし、ランティエ少佐役のフランソワ・クリュゼ
の演技も良かった。




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かごの中の瞳

2021-04-03 22:12:32 | 日記
2016年のアメリカ映画「かごの中の瞳」。

ジーナ(ブレイク・ライヴリー)は子供の頃の交通事故が原因で失明していたが、
夫のジェームズ(ジェイソン・クラーク)の献身的な支えにより、夫の赴任先の
バンコクで幸せな結婚生活を送っていた。ある時、医師の勧めで受けた角膜移
植により片目の視力を取り戻した彼女は、心から喜ぶ一方で、初めて目にした
夫の姿が夢想していた素敵な夫ではなく、地味で冴えない中年男だったという
現実に直面する。そしてこれまで眠っていた好奇心や冒険心が目覚め、流行り
のファッションで着飾り、外の世界へと飛び出していくジーナ。そんな妻にジ
ェームズは疑念と嫉妬を感じるようになる。

マーク・フォースター監督によるラブ・サスペンス。子供の頃に事故で視力を
失ったジーナだったが、夫ジェームズはジーナを献身的に支え、夫婦関係はと
ても良好だった。2人は子供を欲しいと思っており、ジーナは医師から角膜移
植手術を勧められる。片目なら見えるようになる可能性が高いと言われており、
ジーナは子供のためにもと不安を抱えながらも手術を受ける決心をする。手術
は成功し、ジーナは片目の視力を取り戻した。ジェームズに「あなたの顔が見
えるわ」と言って喜ぶジーナ。しかし退院して帰宅したジーナは、自宅の内装
なども想像していたものとは違うことに戸惑う。そんなジーナの様子にジェー
ムズは不安を覚える。
盲目の妻を支えることに喜びさえ感じていた夫が、妻の片目が見えるようにな
ったことにより、疑心暗鬼になっていく様子を描いた映画。嬉しいはずのこと
なのに、夫婦関係は次第に均衡が崩れていくのだ。ジーナは今まで着ていた地
味な服を処分し、流行のファッションに関心を持ち、髪をブロンドに染めたり
して外出することを楽しむようになる。ジェームズは特に何も言わなかったが、
本心ではそれを不満に思っている。ジーナが自分の介助なしに行動できるよう
になったことで、ジーナが自分から離れていくような不安を持っているのだ。
そしてジェームズは恐ろしい行動に出る。
この映画の怖いところは、ジーナとジェームズは決して喧嘩をしたり怒ったり
せずに、お互いの秘密に気づいていながらそれを口にしないところだ。知って
いるけど言わない、知らないふりをするというのは観ていてなかなかスリリン
グである。そして2人の行動や心情が明確に描写されておらず、多分こうなん
だなと推測するような展開が観ている側の不安を煽ってまた怖いのだ。ジェー
ムズのある行為にジーナは気づいているが、ひと芝居打つことにする。
子供がなかなかできないのでジェームズは1人で検査に行くのだが、不妊の原
因が自分にあることを知ってショックを受ける。だがそのことを彼はジーナに
は言わない。そしてジーナは浮気をしてしまい、妊娠する。どちらの子かわか
らないと思いながらも、ジェームズに「妊娠したの」と嬉しそうに報告するシ
ーンはゾッとする。ジーナはジェームズが不妊であることを知らないのだから。
結局ジェームズは初めからジーナの視力が戻らない方がいいと思っていたのだ
と思う。ジーナの世話をするのがジェームズの生き甲斐だったのだろう。2人
の飼い犬に関するエピソードもジェームズの歪んだ性格を表している。犬にま
で嫉妬するのか。ジェームズはジーナを自分の世界に閉じ込めておきたかった。
「かごの中の瞳」というタイトルはそういう意味なのだろう。なかなかおもし
ろい映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。マーク・フォースター監督作品です。(フォース
ター監督はドイツ出身です)
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