閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

5月の宇宙

2010-05-02 16:50:10 | 日々
5月の連休。
ニュースのトップが「50キロの激しい渋滞」だった。

「激しい」という言葉は、「激しい雷雨」とか
「激しい濁流」とか、そういうことに使うのではなかったか。
のろのろと進んでは止まる長い車の列が映し出される。
「激しい渋滞」があるなら、「激しい退屈」とか
「激しい手持ち無沙汰」というようなものもあるのか。
などと、ぼんやり考えるけれど、それもあまり進まず。

いつもこの季節は「草むしり週間」で、
家のまわりをうろうろしているだけで1日がすぐ過ぎる。
帽子を目深にかぶって下を向いていれば
日には焼けないだろうと思うのは間違いで、
無数の草の葉の照り返しもあなどれないのだった。

先月が寒かったので、夏野菜の植え付けはまだこれから。
ふきの伸びも遅く、摘めるほどにはなっていない。
いつも行かない場所まで行ったら山椒の芽が出ていた。
1枚つまんで香りをたのしみ、あとは採らずに帰ってくる。
いちごの花が咲いている。
レモンバームは元気。オレガノも元気。よしよし。

マヌエラさんが「おいしいよ!」と言うので、
しどけを食べてみた。
しどけは、山の沢近くの半日陰に育つ山菜で、
本名はモミジガサという。(上の画像の葉っぱがそれです)
さっと茹でて、水にとり、刻んでおひたしにする。
しなしなと柔らかく、軽いぬめりがあり、
あしたばと春菊の中間のような風味。
あ、これは、なかなか、いけるかも。
「ビール飲みたくなるねー」とMが言う。

ここに住み始めて2~3年のうちは、山菜事典片手に、
家の周囲に自生する植物で食べられるものは
ひととおり試食してみたのだった。
しどけは、すぐ近くにあり、採るのも調理も簡単なのに、
どうしてこれまで手が出なかったのか、不思議。
書物で得られる知識には限界がある。
たまたまきょうマヌエラさんがきて、
目の前で摘んで「はいドウゾー」とくれなかったら、
しどけは素通りで今年も過ぎてしまうところだった。

「あくもくせもなく美味しい」と本には書いてあっても、
大半の野草は「食べられる」程度にとどまり、
美味しい、わざわざ食べたい、と思うものは少ない。
「あくもくせもない」は、じつは「味もそっけもない」と
紙一重であったりもする。
食材としてレギュラー入りしているのは、
ふきのとう、ふき、たけのこ、あしたば、
ジャムにする桑の実と、きいちご類くらい。
しどけも、それに加えていいかもしれない。
春に一度か二度は必ず食べたくなるだろう。


年内に出版できそうな本があり、文章の最終の詰めにかかる。
ずいぶん長いあいだ、ちょっとずつ書いたり消したり書いたり
冷凍したり解凍したりしてきたもので、
ばらばらのピースをひとつにまとめるための
鍵がみつかったのが嬉しい。
全体をてのひらですうっとなでては、
微妙なゆがみやこまかい瑕の修整を繰り返す。
一晩ねかせて、またあっちから眺めこっちから眺め、
一字足してみたり、引いてみたり、削ったり、磨いたり。
こういう最終段階の作業は本当に楽しい。

そういうわけで、連休中はほとんど籠城中…なのですが、
ああぅ。いま「籠城中」が「老女宇宙」と変換された。
音夢鈴さぁん、うちのパソ子も賢くないですっ(涙)
コメント
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