その記憶は、チエちゃん自身の体験を覚えているというよりも、繰り返し説明を聞いた写真の記憶と言ったほうが正しいのでしょう。
セピアの中のチエちゃんは晴れ着を着て、髪には大きなピンクのリボンを挿しています。(白黒なのに、どうしてピンクって分かるんだろう?)
おばあちゃんによると、
「チエには七五三の祝いをやってあげなかったから、
たかひろのお宮参りの時、チエにも着物を着せたのさ。
最初は、チエにたかひろを抱っこさせて写真を撮ろうってことだったんだけどね、赤ちゃんを落っことしたら大変だろ?」
ああ、それで、チエちゃんの隣で、おじいちゃんが赤ちゃんを抱いているのだと思いました。
そして、もう一枚の写真には、外出着姿のおばあちゃんと、毛糸の帽子をかぶり千歳飴の袋を持った先の写真より成長したチエちゃんがいます。
これは、確か松島へ行ったときのもので、ちょうど11月頃だったのでしょう、
この時もおばあちゃんは、
「チエには七五三の祝いをやってあげなくて、千歳飴を買ってあげなかったからね。食べたことないだろう?」
そう言って、千歳飴を買ってくれたのでした。
一度も千歳飴を食べたことのなかったチエちゃんは、大きな袋に入ったたいそう難しい名前の付いた飴なのだから、さぞかし美味しい飴なのだろうと思い、開けてみたところ、何のことはない
遠藤商店にも売っているぶっかき飴の長~いバージョンだったことに、ひどくがっかりしたのでした。
それにしても、おばあちゃんはチエちゃんに七五三の祝いをしてあげなかったことが、余程気にかかっていたようですね。